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−−− 第1章 −−− |
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「うああ、ああ、ふうう…っ、はっ!!はあ、はあ、はあ…。また、あの夢…」 自分のベッドの上で飛び起きたほたるは、全身にびっしょりと汗をかき、青ざめた顔を両手で覆った。 あの夢…。彼女にとって悪夢以外の何ものでもないその夢は、ほたる自身を何者かが残忍なまでに嬲り陵辱し続ける、いわゆる淫らな夢であった。 男性経験は確かに少ないが、欲求不満というわけでもないのに…。そう思いながら布団を抜けると汗で気持ち悪くなった寝巻きを脱いで姿見の前に立った。 下着1枚きりで立つとその身体はまるで小学生か中学生のようだ。 実際には今年で18歳になるというのに、ほたるの身体は幼少時代の病気のために成長が遅れ、正しい年齢と合致しないのだ。 美しい黒髪をおかっぱにしているのも幼く見えてしまう要因かもしれない。 そんな身体にほたる自身がコンプレックスを持っていないということはないが、最近の男はロリコン趣味だからモテるよ、と言っていた友人の言葉にほのかな優越感も持っていた。 ブルッ! わずかに開いた窓の隙間から入ってきた夜風が、汗をかいた肌を撫でていく。 夏風邪をひいちゃう、そう思ったほたるは、下着姿のままシャワーを浴びるために部屋を出ていった。 汗で重くなった寝巻きは洗濯機に放り込み、シャワーを浴び終えたほたるは新たな寝巻きを身にまとうと、台所で水分の補給にいそしんだ。 いったい何キロの水分を汗として排出したのか分からないが、3杯目のジュースを一気に飲み干したほたるは4杯目を注ごうとしたものの、それをやめて部屋に戻っていった。 「ふうーっ、さっぱりした」 時計を見るとまだ夜中の3時。もう一眠りして、朝に目が覚めるときは、こんな風にさっぱりした気持ちで覚めたい…そう思いながらほたるは再び床に就いた。 ・ ・ ・ 「ほたるぅ…いい子で寝ているかい?」 そうつぶやきながらほたるの部屋に現れたのはほたるの父親、土萌教授だった。 「お前は私の最高傑作だ。今夜も私の実験に付き合ってくれるね?」 寝ているほたるがそれを聞いているはずもなく、当然返事をするわけもない。 しかし土萌教授は勝手に実験の準備を始めた。 マッドサイエンティスト。世間では土萌教授のことをそう呼んでいる。 一体何の研究をしているのやら、時折正体不明のものを作っては喜ぶ、一種の変わり者だ。 そして時には人体実験と称する行為を娘のほたるに行っている。 今回もその人体実験をするつもりで土萌教授は心地よい寝息を立てているほたるにヘッドフォンのようなものを取り付けた。 ヘッドフォンの長いケーブルはポータブルと言うには少し大きい装置に伸びている。 その装置から手元に伸びているマイクを土萌教授は自分の口に近づけた。 「これから後催眠暗示の実験をするよ、ほたる」 そう言いながら、土萌教授はほたるの寝巻きのボタンを外して右胸を露出させた。 小ぶりながらきれいなおわん形をしているその右胸にガムテープよりも粘着性の高い医療用テープで南京錠を付けた。 ちょうど、乳首に開けた穴に南京錠のアームを通して鍵をかけたような感じになる。 南京錠を引っ張ったくらいでは簡単にははがれないことを確認して土萌教授はほたるの寝巻きを元に戻した。 「毎晩お前を嬲っていく男たちが、それでも拒絶しつづけるお前に業をにやしたよ。すやすやと眠っているお前の美しいおっぱいにいかつい南京錠をまるでピアスでも通すかのように付けてしまったんだ。だけどお前はクスリで熟睡していて気付かなかった。お前は朝起きたら、右のおっぱいをえぐるように付けられた南京錠に気付くだろう。でも鍵がなくて外すことができないんだ」 土萌教授は装置のモニターに表示される波形を見ながら喋りつづけた。 この装置はいわゆる催眠装置。これを使うことによって、催眠術を知らないものでも、他人に催眠術を掛けることができるのだ。 これまでの実験ではほたるが様ようなシチュエーションで屈強な男たちに輪姦されているという普通ならありえないことを仮想的に体験させることができた。 あくまでも仮想なので本人は目覚めた後は夢の出来事だと思っているだろう。 しかし今回は後催眠暗示と称して、胸に突き刺された南京錠が現実として登場する。 無論、実の娘を本当に傷つけるわけにはいかない。だからそこを後催眠暗示で実際にはテープで付けられているだけのそれを突き刺されていると思わせ続けるつもりなのだ。 これが成功すればこの装置のそのステップは完成と言うことになる。 土萌教授は成功することを夢見てさらに暗示を続けた。 「胸に穴を開けて付けられている南京錠はショックだろう。だが学校は休んじゃいけない。何でもいい、理由をつけて必ず行くんだ。じゃあ、これからまた男たちに嬲られるよ。今回は黒人マッチョマンだ。外国人の持つコックは大きい。ほたるの幼い身体で耐えきれるかな?」 すると、ほたるは身体をもぞもぞと動かし、苦しそうにうめき出した。 「うう、くああ、いや、いや…」 幼い外見とは裏腹に、悶える姿には十分過ぎるほど女としての艶がある。 土萌教授が暗示の内容をそう言うものにしたのは、この姿を見るためでもあった。 「ほたる。美しいよ、ほたる。まるで母さんに生き写しだよ」 娘の身体は隅々まで知っている。しかし手を出すようなことはせず、その姿を今は亡き妻と重ね合わせて毎晩のおかずにしているのだ。 「黒人マッチョマンがほたるのおっぱいをゴムボールのように握りつぶしているよ。黒い指の間で白い乳房が盛り上がっているんだ、とても痛いだろう。だけど力が強すぎてほたるには払いのけることができないんだ。お尻も別の黒人マッチョマンが握りつぶしているよ。大きな黒い手がほたるの小さくて白いお尻をあっさりと覆い尽くしているんだ」 土萌教授はどこから出したのか、ビデオカメラを取り出して悶える様を撮り始めた。 「ほら、広げられたお尻の間に黒人マッチョマンが顔をうずめたよ。お尻の穴を舐めてるよ。こんどは3人目の黒人マッチョマンだ。ほたるの股間に顔をうずめて可愛いスリットを舐めているよ」 ほたるはうめきながら、悶えながら涙を流し始めた。 実際にはない架空の痛みに泣いているのか、拒絶感から泣いているのかは土萌教授にも分からないが、その涙は土萌教授にとっての興奮材料かつ調査対象でしかなかった。 涙と言うものはそのときの感情によって成分が違う。それを細かく調べれば、そのときの心理分析までもできてしまうのだ。 土萌教授は早速その涙を紙に染み込ませて試験管に入れた。 「痛くてイヤなのに身体は感じてきているよ。だんだん濡れてきただろう。もう少し経てば股間はびしょ濡れだ。だが黒人マッチョマンはそれを待たずに十分に濡れきっていないスリットにコックをあてがってしまったよ。お尻を舐めていた黒人マッチョマンもお尻の穴にあてがった。胸を握っていた黒人マッチョマンは必死で閉じようとするお前の口にあてがったよ」 実際にほたるは口をへの字にして懸命に閉じている。 「3本のコックが、3つの穴をこじ開けようと力強く動き出したよ。その力はとても大きくて、お前の力では到底押さえきれないよ。ほら、だんだん先端が入ってきたよ。ほら、だんだんだんだん…」 「ぎゃあああーっ」 口とスリットと肛門を男性器によってこじ開けられ、同時に押し込められた感覚を仮想的に体験させられたほたるは、それでもその後も気絶することすらなく土萌教授の言葉に沿って延々朝まで夢の中で輪姦され続けた。 ・ ・ ・ 「はあ、ふわ、くうう、うく…はっ!!はあ、はあ、はあ、はあ…」 翌朝。ささやかな思いは叶わず、ほたるはまたしても汗だくになって飛び起きた。 (もうサイアク…) 寝起きが悪いと気分が滅入ってしまうのは誰しも同じだろう。ほたるも例に違わず、このまま学校を休もうかとまで考えたが、気を取り直して布団から抜け出た。 そのとき…。 「イタッ…なに?」 右胸に違和感があり、まるで引っ張られるような痛みがあったのだ。 慌てて胸を押さえると、何か固いものが胸の先にくっ付いているのが分かった。 胸と一緒にその固いものを押さえながらボタンを外して覗き込んでみると、黄土色に鈍く光るそれは南京錠だった。 普通の南京錠とは少し違うが、形は間違いなく南京錠のそれだ。 一般的な南京錠は四角い本体と半円を描く5ミリ径くらいの金属棒で作られているが、そのアームの太さは2ミリ径ほどなのだ。 そしてそのアームがどう見ても乳首の根元を、少し乳房をえぐる感じで突き抜けて、当たり前のようにロックされている。 やっとBカップに届いたばかりの形の良い乳房があまりにも無惨で痛々しい姿になってしまっている。 「なに…これ…?」 こんなものが胸に刺さっていて痛くないはずはないのに、麻酔でも掛けられているかのように痛みがない。 そもそもこんなものを付けた覚えがないのだ。夕べの…そう、3時頃にうなされて目が覚めたときはこんなものは付いていなかった。 ほんの3〜4時間の間に何かあったとしか考えられないが、たとえ熟睡していても胸にこんなものをつけられたら気がつくはずだ。 「いたっ!」 恐怖にかられ、それを何とか外そうとしたが、胸がちぎれるような痛みが発生するだけで取れそうもない。 南京錠をそうっと持ち上げ、ひっくり返してみることにした。南京錠なら下に鍵穴があるはずだ。 刺激を与えないように乳首を軸にひっくり返すと、南京錠のアームの曲線部が乳首の奥を上から下へ移動していくのがはっきりと分かる。 そのおぞましい感覚にほたるの全身から汗が噴き出した。 どうにかひっくり返すと思った通りに鍵穴が見える。残念ながら鍵はないし、錠を開けるピッキングのテクニックもない。 「なんでこんな物が…」 その時、目覚ましが鳴り出し、学校があることを思い出させられた。 (学校…どうしよう…) 出来る限り休みたくないのだが、こんなものを付けて学校に行くなど、あまりにも考えられない。 迷ったが、行くならば今から仕度しなければ間に合わないと判断したほたるは南京錠を押さえながら寝巻きを脱ぎ、それが上手くカップにおさまるようにブラジャーを着けた。 右のカップだけが少しいびつに歪むがブラジャーで固定してしまえば揺れたり引っ張られたりしないので普通に生活できそうだ。 ほたるは日課となっている朝のシャワーの代わりに濡れタオルで全身を拭いて制服に着替えると軽く朝食を取って学路についた。 ブラジャーで押さえ込む手段は成功だったようで、そのまま何事もなく3時間目を終了した。 4時間目は体育だ。 体操着に着替えるためには下着姿にならなければいけない。南京錠がカップからはみ出たりしてないだろうか、誰かにバレたりしないだろうかと不安になりながらほたるは制服を脱ぎ始めた。 「まったく、4時間目なんて1番お腹が空く時間に体育なんてやめて欲しいよねぇ、ほたるちゃん」 クラスメイトのうさこだ。 2人は大の仲良しで、実はレズなんじゃないかとまで噂されている。どんなに公正なくじ引きで席替えをしても必ず隣同士の席になることでも有名だった。 それほど仲良しなのに、うさこの呼びかけにほたるは返事をしなかった。 少し以外に感じたうさこは、そのボーっとするほたるの横顔を見て、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。 「ほーたーるちゃんっ」 むにっ!! 「きゃっ!?」 ほたるの背後に回ったうさこが両手をほたるの脇の下から回して胸をわしづかみにしたのだ。 「や、やだ、うさちゃん…」 ほたるは堪らず身を屈めるが、うさこは手を離そうとせずむにむにとほたるの胸を揉んだ。 「えっ?」 そのとき、うさこが右手に変な感触を覚え、手を止めた。 とたんにほたるが気付かれたことを知り、うさこの手を慌てて払いのける。 「なに、今の?ほたるちゃん」 ほたるは顔を真っ赤にしてうつむいた。 「な、何でもないの、何でも…」 その言葉に説得力はないが、普通ではないほたるの様子にうさこはそれ以上の詮索はやめることにした。 「何でもないならいいんだ。でも何かあったら相談してね、ほたるちゃん!さ、早く着替えよ!」 うさこの優しさに感謝しつつ、ほたるは無事に着替えてその後の授業をこなすことができた。 そのままどうにか無事に放課後を迎えたほたるは、うさこの誘いを断って早々に家に戻った。 なぜか、異様に眠いのだ。夕べは半端な時間に目が覚めてしまったからそのせいかと思いながら部屋に入ったほたるはスカートをとりあえず脱いでそのままベッドに突っ伏してしまった。 間もなくして寝息が聞こえてくる。 そんなに疲れていたのだろうか、ほたるが目を覚ましたのは翌朝。やはりうなされての目覚めだった。 荒い息を繰り返しながらほたるはそうっと右ではなく左の胸に手を伸ばした。 夢の中でほたるは左胸にも南京錠を付けられたのだ。 その感覚は記憶のない右胸とは違い、実体験したかのようにはっきりと残っている。 まず何者かが身動きの取れないほたるの左乳首を引っ張った。 もう片方の手にホッチキスのような器具を持っていて、その器具で乳首の根元を挟み込んだのだ。 挟まれ、その何者かが笑いながら手に力を入れた瞬間、左乳首に激痛が走った。 身体をのけぞらせて痛みを訴えるほたる。 器具が離されるとそこには2ミリ径のチューブの通った穴が出来上がっていた。 ピアス穴を空けるための器具だったのだ。 泣き叫ぶほたるを複数人の何者かが笑い、さらに別の何者かが、まるでピアスを付けるかのように左乳首に穿ったその穴に南京錠のアームを通してロックしてしまった。 そんな鮮明な記憶を思い返しながら左胸に当てた手には、明らかな異物感があった。 慌てて着たままだった制服を脱いでブラジャーをめくると、そこには左右対称になった南京錠がぶら下がっていた。 「そ、そんな…」 一体どうして…。夢が現実になったような不思議な感覚に襲われる。 不思議なのはそれだけではない。夢の中ではあれほど痛かったのに、今は全く痛くないのだ。 右胸同様、動かすと痛いが、そのまま放っておけば違和感があるだけなのだ。 謎の事態はほたるにとって芳しくないが、胸ならばブラジャーで押さえればとりあえず学校に行けることは実証済み。 そう判断したほたるは、今朝もシャワーを諦め、体を濡れタオルで拭くと、頭だけはと洗面台で洗い始めた。 裸の上半身を倒しながら洗髪するので、南京錠が胸の先からぶら下がり、腕の動きに合わせてぶらぶらと揺れてしまう。 しかも時折、南京錠の本体が洗面台の縁に当たって胸にその振動を返してくるのだ。 どんなに気を付けていても目を瞑っているせいで何度となくその振動を受けてしまう。そのたびにほたるはビクリと震えてしまう。 そんな振動を必死に堪えて洗髪を済ませ、時間ぎりぎりで家を出ると、少し小走りに学校へ向かった。 「あ、おはよう。ほたるちゃん」 「おはよう、うさちゃん」 ごく普通の朝の挨拶。しかしうさこの視線はほたるの胸に向けられていた。 その視線に気付き、ほたるは身をよじりながら席についた。 「やだ、うさちゃん。じろじろ見ないで」 「あはっ、ごめんごめん。今日も何かつけてるのかな、と思って」 今日も、なんてモノじゃない。今日はもっと付けているんだ、とほたるはうつむいて考え込んでしまった。 優しいがどこか抜けているうさこはそんなほたるを見てまたもイタズラっぽい笑みを浮かべた。 再びほたるの背後に回ると、今度はほたるの肩口から下ろした両手でほたるの胸をわしづかみにしたのだ。 「きゃっ」 「沈んでちゃダメだよって、アレ?」 またしても変な感触があった、しかも両手に。 わしづかみにしたまま動きが止まってしまったうさこの手をどかそうとしたときうさこがつぶやいた。 「ほたるちゃん、やっぱり変だよ。何で相談してくれないの?私はほたるちゃんの友達じゃないの?」 そう言ってうさこは涙目になってしまった。 人の痛みを敏感に感じ取るうさこは、その変な感触を通してほたるの心を感じてしまったのだろう。 そんなうさこをなだめつつも、こんなことは相談できないとほたるは余計に自分の殻に閉じこもってしまうのだった。 家に帰ったほたるは、うさこのためにも今夜は寝ないで夜中に自分に何が起きているかを見届けなければいけないと心に固く誓った。 単純に考えても、夜中に誰かがやってきて何らかの方法で起きなくなった自分にひどいことをしているとしか思えないのだ。 ならば、1晩中起きていて誰かが来るのを待てばいい。 ほたるは椅子に座って、その誰かが来るのをじっと待つことにした。 しかし…。 土萌教授が明け方近い夜中にほたるの部屋に入ったとき、ほたるはすやすやと小さな寝息を立てていた。 ・ ・ ・ 「ほたるぅ…いい子で寝ているかい?」 見るとほたるは机に突っ伏して寝ている。 「おやおや。ほたるには精神的疲労が大きかったかな?南京錠をつけられたときの記憶があるとやはり疲労感が大きくなるようだね」 1人でぶつぶつと言いながら、土萌教授はほたるの身体を抱き上げてベッドに寝かせた。 「今日は仕上げだ。さらに3つも付けてあげるよ。記憶はきついようだから植え付けないけどね」 喋りながら装置の準備を済ませた土萌教授はほたるのスカートをまくってパンティをずり下ろした。 「おおお…。お前の女性器は相変わらず美しいよ」 薄い陰毛、余りはみ出していないヒダと呼ばれる小陰唇、色素の沈着などこれっぽっちも見られないほのかにピンクがかった肌。 とても18歳の非処女ものとは思えない。 「3つ付けてあげると言ったよね。だけどおっぱいにはもうつけられない。だからお前のこのきれいな女性器に付けてあげるよ」 ほたるの足を広げ、腰の下に枕を置いて股間を突き出すような格好にさせる。 土萌教授はその足の間に入って南京錠3つと医療用テープをベッドの上に置いた。 「ぴったりと閉じているね。中は…やっぱりきれいだよ、ほたる。こんな鮮やかな赤は見たことがないよ。おや…ホクロ…こんなところまでお前は母さんに似ているんだね。嬉しいよ」 ヒダを広げ、外に引き出すように引っ張ると、声こそはないがほたるは眉を寄せて嫌悪感を表現する。 夢の中では何度も犯されたであろうそこは、処女ではなくても処女のようにきれいだ。 土萌教授はしばらくそこを見入っていたが、やるべきことを思い出して南京錠を1つ手に取った。 「さあ、ほたる。総仕上げだよ」 ・ ・ ・ 「こ、ここは…」 ここはほたるの夢の中。 ほたる自身はこれが夢だとは思っていないが、上も下も、右も左もない不思議な空間に漂う自分の姿をまるで第三者からの視点のようにはっきりと捉えている。 「気持ちいい…」 まるで羊水の中にいるような、優しさで包まれてる安心感がほたるの体を抱いている。 ここにいれば、ここにさえい続ければ、恐怖も不安もない、そんな気がしてくる。 しかし、次の瞬間。空間に漂っていたはずのほたるの身体はいつのまにかに出来上がった地面の上に立っていた。 それにあわせて、安心感が消えうせる。いや、消えうせただけではない。急激に不安感でいっぱいになったのだ。 真っ白だった空間が急に真っ暗になる。暗闇の中で不安に立ち尽くす、その空間でたった1個の存在であるほたる。 その不安が的中するかのように場面が急に切り替わり、一糸まとわぬほたるは人の往来が激しいスクランブル交差点のど真ん中に放り出された。 「え?え?えええ!?」 胸を両手でおおいつつ、周りを見るとちょうど信号が変わったところなのか四方八方からほたるめがけて人の波が迫ってくる。 老若男女、様々な人の視線がほたるの身体に突き刺さる。 「なに、あの子!?」 「スゲッ、裸じゃん!」 「おかしいんじゃない?」 そんな声がほたるの耳にも聞こえてくる。 奇異なものを見るかのような強烈な視線が迫ってくる。 明らかにおかしいほたるを避けて通るものかと思いきや、スクランブル交差点の人波はそれほどやわではなかった。 気が付かずにぶつかる者、避けようにも避けきれずぶつかる者。謝る者はまだマシだが、中には確信犯的にぶつかっていく者もいる。 ぶつかりざまにお尻や胸、大事なところにまで手を伸ばすあからさまな痴漢までいる。 「い、いやあーっ!」 しかし交差点の真ん中に裸でいたら痴漢にあいました、と言っても同情してくれる人は皆無であろう。 その場にい合わせた横断中の人々も、さげすんだ目を投げかける者はあれど助けようと言う者は皆無であった。 中には何往復もして触っていったり、その場に強引に立ち止まって信号が変わるぎりぎりまで指を突っ込むと言うツワモノまでいる。 信号が変わり、やっと痴漢の手から開放されると、今度は車がほたるを恐怖に陥れた。 交差点のど真ん中にいるほたるにぶつかることはないが、そのギリギリを走り抜けていく車は恐怖以外の何者でもない。 一歩も動けないままへたりこんでいると、自動車用の信号が全て赤になり、歩行者用の信号が青に切り替わった。 途端に妙にそろった足並みが聞こえてくる。 さっきの痴漢の恐怖を思いだし、胸を押さえていた両手のうち片方を下に伸ばして周りを見ると、さっきとは明らかに人の雰囲気が代わっているではないか。 70年代の漫画やアニメに出てくる、ゴリラをモチーフにした番長…ちょうどそんな感じのいかつい男たちが揃いも揃って数十人。 ゾンビのように手を前に出して明らかに全裸のほたるめがけて迫ってくる。 「きゃ−っ!!」 スクランブル交差点の横断歩道は、本来横切るために作られているわけだが、いかつい男たちは横断しきることなくほたるを取り囲んだ。 誰かがほたるの腕を持ったのをきっかけに無数の手がほたるのここそこに手を伸ばした。 宙に浮いたほたるの身体には無数の手が絡み付いていて、その白い肌をたとえ隙間でも見ることができない。 手、腕、太もも、すね、足はもちろん、耳たぶをつまむ手、耳や鼻に指を入れる手、唇をつまむ手、舌をつまむ手まである。 ボディに至っては、胸を掴む手、乳首をつまむ手、お腹や脇、背中に手を当てているだけの手からヘソに指を入れている指やら、スリットや肛門にまで指を入れている手まである。 「あがっ、あがっ!」 鼻をふさがれ、舌を押さえられ、何本もの指が口内に入っているせいで言葉を発することができない。 一体何人の手がほたるに触れているのだろうか。そのうち何本の指がほたるの全身の穴に入り込んでいるのだろうか。 無数の手にいいようにされて感じるどころではなくおぞましいだけなのに、機械的にスリットが濡れていく。 そのうち、いかつい男たちの1人がほたるの身体に乗り、すでに指でいっぱいになっているはずのスリットへ自身のイチモツを強引に押し込んだ。 「あがあおぉぉーっ!!あがっ、あがっ!!」 首も満足に振ることができないまま入れ替わり立ち代り犯されていく。 この地獄は一体いつまで続くのだろう…息も絶え絶え、目もうつろな状態でほたるがぼんやりと考えたとき、遠くで電子音が定期的に鳴り響いた。 ・ ・ ・ 目覚し時計に起こされたほたるはいつのまにかに寝てしまったことに気付いた。 慌てて起きあがると、室内着のままの自分の格好を見てその室内着を脱いで胸を見る。南京錠を2つつけられた状態から変化はない。 ほっと一安心して立ちあがった瞬間、パンティが突然ずり落ちた感覚があった。 中腰になったまま凍りついたほたるは、ゆっくりとスカートをめくってみた。 確かにパンティは少しずり落ちている。落ちた原因は股間の辺りに何かが入っているせいらしくパンティの股間の部分が明らかにいびつな形になっている。 まさか、そんな…そう思いながらゆっくりとパンティを下ろしてみた。 かちゃかちゃと金属音を立てながら現れた異物は…南京錠だった。 ただ、胸の先についているものとはすこし違う。 アームの太さは2ミリ径のままだが、その長さが10センチ近くもあるのだ。 しかもそれが3つ。1つはスリットから溢れているヒダの片方に。1つはもう片方のヒダに。さいごの1つは2つのヒダをつなぐように。 パンチ器で穿ったのであろう4つの穴に3つの南京錠のアームが通されているのだ。 先ほどの金属音はそれらがぶつかり合う音だったわけだ。 南京錠はそこそこの重さがあり、3つの南京錠はヒダを下に引っ張るようにぶら下がっている。 パンティがずり下がったのはこの重さのせいだろう。 じっと立っている分にはぶら下がっていても耐えられるが、歩くときには押さえておかないとぶらぶらと揺れるたびにヒダが千切れそうに痛い。 パンティで押さえ込もうにも、重みでパンティがずり落ちてしまって全く押さえにならない。 これでは学校に行けない…。そう思ったときほたるの脳裏にべそをかいたうさこの姿が浮かんだ。 もし学校に行かなかったらあの子は絶対に泣く。泣かさないためには行かなければならない。だけどどうやったら…。 その時、ほたるはボディスーツの存在を思い出した。身体をしっかり押さえ込むボディスーツなら南京錠も押さえ込んでくれるのではないか? ボディスーツは数年前に買ったものがあるはずだとタンスを開ける。 幸か不幸か、さして成長していないので着られない事はない。 見つけ出したそれを身に着けてみると少しどころかかなりきつい。まるでラバースーツのようにほたるの華奢な身体を締め上げる。 が、何とか歩くことはできそうだ。 探し物をしていたせいで、シャワーを浴びる時間などないと、制服をまとい、部屋を飛び出す。もっとも、時間があったとしても浴びることはできそうもないが。 さすがにボディラインを整えてくれるボディスーツだけあって、走っても南京錠が動く様子はない。 靴をはき、玄関のドアを開け、そのまま駆け出そうとしたとき、そこにいた誰かにぶつかってしまった。 「きゃっ!」 「いったぁー」 「ご、ごめんなさい、大丈夫?」 誰かはうさこだった。うさこは昨日の様子がおかしかったほたるを気にして、わざわざ迎えにきたのだった。 「よかったぁ。ひょっとしたら学校休むんじゃないかなって思ったんだ」 うさこは満面の笑みを浮かべる。 その笑顔にかげりを落としたくないからこそ休めない、ほたるは心の中でそうつぶやいた。 「さ、行きましょう」 時間的には軽くランニング程度で半分も走ればあとは十分に間に合うという程度だが、ボディスーツのおかげで南京錠を気にしないで動ける嬉しさからほたるは結構な速さで走った。 しかし…それがいけなかった。ただでさえボディスーツは小さかった。激しい運動は避けるべきだったのだ。 ブチンッ!! 下のほうからそんな音がして、それまでしっかりと押さえつけられていた3つの南京錠がほたるのヒダを下へ引っ張り出したのだ。 ボディスーツは使いやすくするためにトイレで困らないよう股下部にボタンがついている。 そのボタンが、キツさに耐えきれずに外れてしまったのだ。 「あうっ!!」 「どうしたの、ほたるちゃん?」 突然立ち止まったほたるにうさこが聞く。 「な、なんでもないの」 顔では平静を装っていたが股間の激痛を堪えるのに必死だ。 そうっと歩き出すが、1歩出すたびに南京錠はかちゃかちゃとぶつかり合い、ヒダにひねりを加えてくる。 股間に手を置いて押さえたいが、小学生ならまだしも高校生にもなって人前でそんなことはできない。 しばらくはよろよろと歩いていたが、とうとう耐えきれなくなり、カバンでスカートの前を覆いつつ、股間に手をあててそれらを押さえだした。 こんな人通りの激しい往来で股間を押さえている自分があまりにも情けない。 そんな時、それまでずっと喋っていたうさこがぴたりと口を閉じた。 見ると、視線を落としてギョッとしている。 視線の先が自分の股間だと気がついてほたるは、気付かれたものと慌てた。 「こ、これは、その…」 「や、やだなぁ。そうならそうと言ってよ。そこを曲がったところの公園におトイレあるから寄っていこ。まだ時間あるし。ね」 ほたるが股間を押さえていることに気付いたうさこは、ほたるが尿意を我慢しているんだと思ったようだ。 だがそれはほたるにとっては救いでもあった。 こんなものを押さえるために股間を押さえていると知られるより、尿意を我慢していると思われたほうが何倍も気が楽だ。 それに、トイレに入ればボディスーツのボタンを留めることだってできる。 「じゃ、じゃあすぐ済ますから」 トイレの前まで付き合ってくれたうさこに作り笑顔で手を振ってほたるは個室に入った。 急いでスカートをまくると、やっぱりボタンが外れている。 さっきボタンが外れてからトイレに入るまで、ずっとミニスカートなのにノーパン状態だったと気が付き、ほたるは顔を真っ赤にした。 気を取りなおし、ついでだからオシッコしていこう、そう思ってほたるは便器にまたがったが、はたと困ってしまった。 このままではオシッコができない。このまま出したら、ヒダにくっ付いている南京錠に引っ掛けることになってしまう。 そのことに気付いたほたるは、スカートを太ももの間にはさんで落ちないようにしてから両手を股間の下に回し、震える指先で南京錠とヒダを一緒に持った。 痛くならないように気を付けつつゆっくりとひだを広げ、便器めがけてオシッコを出し始める。 股間に手を添えてオシッコをするなんて経験のなかったほたるは、手がものすごく汚れたような感覚に陥ってしまった。 しかし手を洗うにはいったん個室を出なければならない。 個室を出たらボディスーツのボタンを留められないし、そのためにまた個室に戻るのもヘンだ。 迷った挙句、その汚いと感じている手のままでボディスーツを引っ張った。 「んっ、んっ、どうして…届かない」 それはそうだろう。ただでさえキツイのだから、身体を屈めていては届くはずがないのだ。 結局ほたるは制服を脱いでボディスーツを半分脱ぎ、ボタンを留めてから改めて着ると言う手間をこなしてなんとか着ることが出来た。 個室から出ると、今さらだが手洗い場で執拗に手を洗う。 「ごめんね、お待たせ。行こっか」 「うん!」 一時はうさこの笑顔に救われたほたるだったが、精神的疲労が余りに大きかったのか、もともと弱い身体は3時限目の終わりまでは耐えきれず、とうとう医務室に運ばれることになった。 |
....つづく |
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