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−−−  51日目(8/4)  −−−
積算距離:5485.9km
最高速度:34.3km/h
走行距離:60.87km/day

 蒸し暑いわ、蚊は凄いわで1〜2時間おきに起こされました。
 デニム地のGパン越しに刺してくる蚊って言うのはちょっと凄いですが、そんなのに出会いたくはなかった。
 とどめは朝5時に元気な野球オジサン連中に起こされてしまったこと。
 目の前で練習するもんだから寝られやしない。諦めて移動して久々のインターネット。一週間以上…10日ほどアクセスしていませんでした。長くても1周間に一度はアクセスするだろうと考えていたのですが、2つの問題が絡んでいてなかなかアクセスできません。
 1つはアクセスポイント。やはり弱小プロバイダでは全国にアクセスポイントがあるとうたっていても大手にはかないません。せめて隣接区域からのアクセスにしたいところですが私が加入しているプロバイダはやっぱり弱小なんですね。頑張ってほしいものです。
 もう1つは増えすぎた荷物。パソコンは重いので重量配分として必然的に下の方に入れますが、最初の頃はスペースが一杯あったリュックも今はパンパン。下の方の荷物は出すに出せません。下手に出すとしまうときが大変になってしまうんです。綺麗に入れないと背中の当たり具合が悪くて痛みの原因になりますから。
 というわけで無事にアクセスすると大したメールはなし。よかったよかった。
 無事に用を果たし、早速朝風呂へ。さすがにこういうところで一番風呂なんてのは無理ですが、気持ち良さは変わりません。
 この風呂の中で私は人違いされました。なんでも、駅前交番で警官に呼び止められて騒いでいた輩がいたとか。その輩に私が似てたらしく、間違えた人は私に向かって大丈夫だったのかと連呼していたのですが最初は方言がきつくて分かりませんでした。うーん、やっぱり日本は広い。
 風呂から上がると気分がすっきり。実は夜中に蚊に起こされたとき、風邪かと思われる不調感があったのですが、風呂でさっぱりしたら気分も体調もさっぱりとしました。相変わらず私は現金な身体してます。
 武雄から佐賀へは32km。2時間で着けると判断した私はゆっくりと出発することにしました。何しろ佐賀市街は見るところが本当に少ないんです。
 郊外に出れば遺跡あり、牧場ありで結構点在しているんですが、そっちに行ってしまうと今度は時間的にきつくなってしまうというなんとも半端な街です。

 ということでセオリー通りに常設展示はタダで入れる博物館へ。同様に常設展示のみタダで見られる美術館は残念ながら休み。それでも博物館のみで結構楽しめました。タダと言うのでチャチなものそ考えていたのですが、思ったよりもじっくりと見られます。また、じっくり見たい人のために無料のロッカーがあってなかなか便利。
 博物館の中に昆虫の標本があり、とんぼのものを見たときはさすがに苦笑いしました。ここ数日、というか旅の間ずっととんぼと正面衝突してたんですね。これがまた痛い。オニヤンマあたりがおでこにコーンッと当たると真面目に痛みで減速します。
 そうかぁ…とんぼの目玉は確かに見れば見るほど固そう(苦笑)。
 博物館は在り来たりな歴史から漁業の道具までいろいろとあり、結構な時間を潰せました。
 その博物館をあとにしてガイドに載っている、カレーを食べるならここ!というカレー屋へ。しかし開店時間がずれていて入れません。仕方ないので夕方に来るかと移動再開。
 続いて丸ぼうろ本店。行って見ると場所は分かるんですが店舗としては存在していないのか店が見当たりません。残念ながら本場の丸ぼうろは諦めました。違うところでは食べられたし。

 そこから東へ少し走ったところにある歴史民族館。入った瞬間に、ここは合ってるのか!?と不安になるほど別世界になります。
 銀行を改装したとのことなんですが素晴らしい外装もさる事ながら、中身の素晴らしさも負けてません。
 更に歴史資料館はいくつかの建物と共同体になっていて、その中に駄菓子屋もありました。ま、一時期の駄菓子屋ブームであちこちに乱立しているのを見ているので敢えては入りませんでしたが、雰囲気は出ています。
 それで見るところはざっと見たので、あとは寝床を探しながらの観光。何故か佐賀には歩くだけの観光コースがいくつかあります。
 寝床を見つけたら今度は風呂探し。やっと見つけた銭湯はボイラー故障で休み。もう一ヶ所、銭湯の入り口とは思えないところがあるにはあったのですが、どうも雰囲気がイヤでやめてしまいました。汗はかいているけど一日くらいはなんとでもなりますしね。
 と言うことで今度こそは時間を合わせてカレー屋へ。
 入ってみると、客はいるのですが、店主と奥さんは内装の手直しをしてました。いや、別に悪いと言うわけではなく、返ってそれがアットホームな感じがして私はそれでなんとなく安心しました。
 実は予約すればフランスフルコースも行けると言う店なのでちょっと不安だったんですね。小汚いリュック、GパンにTシャツで入って良いものかと。
 そんな私にまず声をかけてくれたのはダンナさんのほうでした。
 荷物を見て旅行者だと見て取ったダンナさんが私に2〜3聞いてきたんですね。
 そこで私は自転車で回っていることを告げました。それに対して大きく興味を示したのは奥さんです。
 他のお客さんの対応の合間を縫って私の旅談議に耳を傾けてくれます。
 話すことで更に気に入ってくれた奥さんは、今ちょうど開いている部屋があるから泊まっていったらどうかと提案してくれました。
 後から思えば、こういう都市部では私のほうから辞退するべきだったと、この後のやり取りで酷く後悔したのですが、このときの私は、泊まるつもりであった武雄温泉のYHで泊まれなかった事もあり、その嬉しい提案を受けることにしてしまいました。
「どれが美味しいですか?」
 ガイドブックにはビーフカレー、エビカレーが書かれています。が、辛口が好きなら辛口が良いよと教えてもらい、私は辛口を頼みました。
「サラダは?そういう旅をしてると、野菜不足になるでしょ」
 その通り。でも貯金はあるものの、今後どこでどれだけかかるかが分からないから派手に使えないので困憊はパスします、と奥さんに告げました。
ここはご飯のお代わりは出来ます。
 が、奥さんはカレーのお代りを特別に出してくれました。しかもおまけでサラダも。そしてコーヒーにお茶受けまで。
 聞けば、私と年の近いお子さんがいるとかで、お子さんと私のイメージが重なったことが気に入ってくれた一番の理由でしょう。
 ここまで気に入っていただけたのですが、最初に貸そうかと言ってくれた部屋に付いて、少々…いえかなり大きな問題が発生してしまいました。
 詳しくは書きませんが事情があって、今その部屋で何かあったら親戚一同に顔向けが出来ない、と言うことです。
 その事情の有無に係わらず、ダンナさんの対応は正しいと思います。今回ばかりは明らかに私が甘えすぎてました。
 にも係わらず、奥さんは自分がダンナさんと相談せずに提案してしまったからぬか喜びをさせてしまった、といらぬ責任を感じてしまったようです。
「泊まる話は駄目になっちゃったけど、せめてうちでシャワーでも浴びて行かない?」
 しかし、いつの間にかに甘くなってた自分の考え方を恥じた私は、頭を冷やしたいと言う思いが先だってお断りしてしまいました。
 そんな奥さんが私に渡してくださったのは一枚の封筒。中には明らかにお金が入っているようです。
 が、それは受け取れない、とお断りしたのですが、
「募金するつもりだったけど、あなたに渡した方が有効に使ってくれそうだから」
 なんと暖かい言葉でしょう。思わず素直に受け取ってしまいました。
「それで、精のつく−−ウナギでも食べて頑張って」
 そしてお礼を言ってお別れ。その後、まだ開いていたスーパーで朝食を調達して向かった寝床は博物館前の広場。
 本当はそこから西へ少し行ったところにある公園が屋根付きのベンチがあり、水場のあったので良かったのですが、先客が一人おられたのでやめて博物館前にしました。
 雨は降らないらしいので星を見たさに敢えて屋根のないところを選んで就寝準備。
 いや、その前に封筒の中身の確認です。渡されたときの透けた感じで千円札ではないと分かっていましたが、開けてびっくり大枚1枚入ってました。
 こんなにしていただけるほど大した男ではない、と思った私は返しに行こうかとも考えましたが、奥さんのやさしい言葉が脳裏に浮かび、ここで返してしまったら奥さんの思いを潰してしまいかねない判断した私は、大事に使わさせていただきますと、大枚を財布に入れるのでした。
 この大枚が私の今後の食事を大きく変えたことは言うまでもありません。
....つづく
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