廊坊櫻華包装有限公司(独資)
総経理 池田ひと美
香港の王大姐
「もう一押しすればマンション側を打ち負かすことができる」という判断の下で北京市政府信訪部の接待室を私と王大姐は毎日訪問した。王大姐は自分のマンションに取り付けられてあった水道の蛇口をパイプを外してそれを持参し見せたり、ある時は自分が東北から香港へ出て苦労した事、そして築いた財産で「陽光広場」を購入したのにひどい目にあっているのだと大声で泣き崩れたり、訪問度に話題を変え相手を自分の話に引き込み同情をかった。私の方は羅馬花園購入者十数人と「マンションの使用面積と建築の品質問題」で訴訟を起こしていたが裁判に必要な資料を房管局が保管しているにも関わらずこれを公開しない故資料を公開するよう訴えた。王大姐から「あんたの口から出る言葉は使用面積とか建築の品質のことばかりだね。市政府と言えども話を聞く相手は個人なんだからまず彼ら個々人を味方につけるという事を念頭においた発言でないとここへ来る意味がないではないか」とお叱りを受けた。王大姐は自分は無防備な哀れな被害者だと訴えつつ実際はちゃっかりと我々が集めた二百人の署名を利用し、「陽光広場」のマンション側に圧力を掛けていた。水漏れがひどい彼女のユニットの代わりにマンション側は家具、電化製品付きのユニットを提供したばかりか食事も提供した。洗濯代までマンション側に負担させた。彼女は春節は香港に帰れないと訴えていたがマンション側が北京―香港の往復チケット代を負担し彼女を香港に帰した。
勝利の感触
私が市政府の信訪部に日参しだした頃、住民委員会の主席だったL女史が頻繁に電話を掛けてきた。「友人があなたのユニットを買いたいと言うが売る気はあるか。売る気があれば自分も一緒に売るつもりだ」と誘ってきた。「価格は悪くないが支払いは大丈夫か、買い手であるあなたの友人に会わせて欲しい」と彼女に言うとファックスされてきた売買契約書のコピーを彼女は翌日私に手渡した。「相手は会社だから大丈夫だと思う。契約書の内容をよく読んでおいて欲しい。問題なければ私もサインする」と彼女は言った。しかしながら買い手が何処の誰か分からない相手と契約など結べないので彼女に相手と面談したい旨再三頼んだが彼女はアポイントをとってはくれなかった。私は渡された契約書を手にとると契約書のコピーの上の端に薄くファックス元のナンバーが目に入った。そのナンバーの局番は我が家と同じなので「買い手は羅馬花園の近所だな」と思い試しに直接電話連絡を取ることにした。驚く事なかれ、つながった電話の相手はなんと羅馬花園のディベロッパーの事務所であった。