留学生必見!中国サバイバル指南

第一回 留学生座談会(1)

   現在、中国に留学している多くの日本人の第一目標は、中国語の習得です。しかし第一目標が実現した後、中国語を使ってどんな仕事をしたらいいのか、どう仕事を探したらいいのかわからず、戸惑っている人が多いとの声が届いています。
   そこでこのコーナーでは、夢を抱いて留学している留学生、中国で事業を起こし成功している日本人を紹介し、中国で成功するヒントを提供します。
   第一回の今回は、立場の違う三名の留学生にお集まり頂き、留学、就職に対する考えを伺いました。

未来は自分で切り開く!将来の宝島、中国に針路を取れ!

今しかできない、だからやる

かわら 皆さんは、企業派遣留学、会社を退社しての自費留学、大学を休学しての自費留学と、それぞれ違った立場で中国にいらしたわけですが、なぜ中国留学なのですか?

前園 学生の頃は中国への意識はさほど強くありませんでした。しかし、中国関係の取り引きに関わっているうちに、日本経済における中国の大きさを感じたからです。社内の留学制度に立候補し、入社五年目の昨年から一年間、中国語を勉強しました。ただ、例えばフランス語を学びたいと言っても、現状では、フランス語でビジネスができるアフリカでの商売はあまりありませんから、留学はできなかったでしょう。中国は会社も力を入れている地域ですから、希望がかなったわけです。

かわら と、いうことは、大学では中国語は勉強したことがなかったのですか?

かわら版主催第1回留学生座談会が、7月9日駱駝亭で開かれた

前園 ありません。第二外国語は……ドイツ語だったかな? 英語は仕事でも使っていますが、第二外国語はそんなものでしょう(笑い)。

山本 私は前園さんとは違い、高校の頃から「中国語を学びたい」という気持ちが心の片隅にありました。短大で知り合った母語が中国語の友達と、遊びながら勉強を始めたのが中国語との出会いです。でもその後、CADのオペレータとして、社会人生活をスタートさせてからは、仕事をこなすことで精一杯。中国語とも離れていました。
   社会人二年目になった頃、やっと精神的な余裕が出てきたので、働きながら中国語のカルチャースクールに通い始めました。高校の恩師が、「これからは中国」と言った言葉が、何年も心のどこかに引っかかっていたからです。でも、この時はまだ中国に来ようと決めていたわけではありません。CADのオペレータに限界を感じ、早く方向転換したかったので、いざという時に役に立つ「何か」が勉強できればと考え、中国語を始めただけでした。会社を辞めたのも、ある貿易会社から内定をもらったからで、留学のためではありませんでした。
   しかし、退社はしたものの、内定先で不祥事が起きたため進路は白紙に。どうしようかと迷っていたところ、カルチャースクールの先生から留学を勧められ、思い切って留学をすることに決めました。中国には長い間興味を持っていましたが、留学に踏み切れたのは、タイミングが良かったからかもしれません。また欧米留学に比べて割安なので、自分が貯めた予算で実現できるという経済的な理由も大きかったですね。

遠藤 私には、中国と取り引きをしている兄がいて、兄を目標に留学を決めました。「中国語でなければいけない」という強い気持ちがあったわけではありませんが、「中国は伸びる」という確信があったので、中国語を習得することにしました。兄から、「会社は語学を習得している人を重要視する」と何度も聞かされているので、私は何が何でも習得して日本に帰るという気持ちが強いですね。大学生として、他にもやりたいことはたくさんありますが、社会人になって、私を一人の戦力として見てもらえなければ、仕事への興味を失ってしまいます。組織の中で少しでも自分をアピールするためには、それなりに努力が必要で、人にはないモノを身につけなければダメだと思っています。

かわら 企業は採用では語学力をどのくらい評価するのでしょうか。

前園 これは私の個人的な考えですが、企業は、語学力がある人がほしいのではなく、語学を勉強させれば習得してくるような、「やらせればできる人材」がほしいのではないでしょうか。入社時に語学力があれば、時間や手間が省けますから、当然自己アピールの材料としてプラスにはなりますね。
   国際間の取り引きで英語が重要なのは言うまでもありませんが、中国語の位置づけも重要です。一般的に言って、商社が商売をやりやすい地域は、発展途上国の中でも、経済が上昇し始め、投資が活発になってきたところです。具体的に言えば、中国、東南アジア、南米。東南アジアでは、英語での取り引きが基本ですから、最も必要とされている言語は、英語以外なら中国語とスペイン語です。

中国に来た、だから学べた

かわら 中国留学のきっかけは皆さん違いますが、それぞれの目標を実現するために中国で自分の将来をつかもうと考えているようですね。では、留学への不安はなかったのでしょうか。

遠藤 不安より希望の方がずっと大きかったですね。大学を休学すれば、日本での勉強は、みんなより一年遅れますよね。でも、将来必要なモノを身につけるためなら、現時点での遅れは関係ないのではないでしょうか。それに、たとえ人より遅れても、その遅れを取り戻せる自信が何となくあるんです。学生の時に人と違った何かを身につけておかないと、将来逆に大変な思いをするはずですから、留学はメリットの方が大きいはずです。

前園 聡さん
日商岩井(株)社員。入社6年目。企業派遣の留学生として、98年7月から99年7月まで北京師範大学にて中国語を学ぶ。同年8月から上海事務所配属。日本での中国語学習経験なし。

前園 私も留学への不安はほとんどありませんでした。あえて言えば、二十代半ばで新しい言葉を始めることへの不安でしょうか。しかし、迷って中国留学を先伸ばしにしていては、一生中国には来れなくなってしまうと考えました。
   私は、「中国との取り引きは増え続ける」と見て中国留学を決めました。しかし、少数ですが中には政治体質を理由に「中国は伸びない」と見る人もいます。改革開放以前に戻ってしまうのではないか、と。そのような方にとっては、一年間職場から離れ、ビジネス経験を積まない私は、外国で遊んでいるように見えたかもしれません。しかし私にとっては、語学習得以外にも日本では積めない貴重な体験ができたので、今後の仕事に必ずプラスになるはずです。

かわら 商社では、英語を使った業務も多いと聞いていますが、中国語を勉強すると、混乱するのでは?

遠藤 昌之さん
日本の大学を休学し、99年2月から1年の予定で中央民族大学に語学留学。日本の大学での専門は地理学。大学の第二外国語で中国語を学んだ経験あり。

前園 ええ、中国語を始めてからダメになりました(笑い)。ビジネス文書などは英語で作成することが多いですが、忘れてしまった部分は多いですね。二つの外国語を使う難しさかもしれません。

かわら 山本さんは、一度就職した会社を退社して留学していますが、遠藤さん、前園さんとは違った不安があるのではないですか。

山本 み鈴さん
転職のため以前の会社を退社。しかし内定していた会社で不祥事が発生、転職を断念し、長年温めてきた留学に目標転換。98年9月〜99年7月まで中央戯劇学院、99年9月から北京語言文化大学にて中国語を学ぶ。日本では、1年間週1回カルチャースクールに通い、基礎を学んだ。

山本 そうですね。出発前は希望に溢れていましたが、今は次の仕事が決まっていない状態ですから、仕事をせずに長く学生をしていると不安になり抵抗がありますね。仕事をしていてもしていなくても将来への不安は絶えませんが、今の一番大きな不安はやはり就職です。
   実は、今年に入ってから就職活動をしていて、中国で仕事が見つかれば、九月から学校には通わず仕事をしながら中国語を磨く予定でした。しかし、中国で仕事を探すことは予想以上に難しかった。新卒の時のように、説明会があって、面接を受けて……といった段階があるわけではなく、自分で自分を売り込まなければいけないわけですから。

かわら 日本で仕事を探すより大変なのでしょうか? 中国での就職活動について、もう少し具体的にお聞かせ下さい。(次号へ続く)

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