高級マンション購入顛末記21

廊坊櫻華包装有限公司(独資)
総経理  池田ひと美

裏切り

   L女史は当初私と共に積極的に行動した委員会の主席だった。お互い助け合ってきた仲であったし、一人が去れば他の一人が羅馬花園から攻撃される危険があるので彼女と一緒に家を売る事を私は承諾した。彼女は自分はもうマンションの売買契約を結んだ、相手は自分の友人だから間違いない、この機を逃がしたらもう売れない等といって私を促した。「いつ売買契約書にサインするのか」と聞いてくるので「相手が個人でなくちゃんとした会社である事、支払いは一括払いという条件であれば、相手と会った時点でその場で契約を結んでもいい」と答えた。すると×月×日朝十時に相手が自分の家にくるから準備をしておいてくれと言ってきた。その日十時に彼女の家にいくと案の定彼女はいない。留守をしていたおじいさんに聞くと「たぶんデベロッパーのところじゃないか、最近よく行くから」と言うのでその足で羅馬花園のデベロッパーのオフィスへいった。応接間を開けると彼女と副総経理が話をしていた。彼女は私をみると「ちょっと私の家で待っていて」と私を敬遠したが、副総経理は「丁度良いところに来た。まあまあそう言わずにどうぞ中に入ってかけてくれ。」と席を勧め、私に「あんたの部屋の値段だが××ドルでどうかな」といきなり話を切り出した。慌てた彼女は「これは私と池田の問題だ。」と話を妨げようとしたので、「副総経理、あなたが私の部屋を××ドルで引き取ると言うのであれば私はあんたに渡す。」とデベロッパーに返事をした。L女史は「あんたは私の友人に売るといったではないか。私のメンツはどうなる。」と私を非難したが、私は「売買はより良い値段を出した方と決めるのが常識。」といってそのまま経理と話をすすめた。L女史は私とデベロッパーの間に入ってピンはねするつもりでいたのだ。

焼身自殺

   一方王大姐も陽光広場のデベロッパーとの交渉を再び始めたがすぐ暗礁に乗り上げた。その原因の一つは彼女が部屋の価格を釣り上げたからであった。私の方があっさり合意に達したので王大姐は非常に焦ったに違いない。数日後、彼女から電話がきて「陽光のデベロッパーは私と交渉しないといってきた、私は焼身自殺してやる」と言うのである。私が血相をかえて飛んでいくと、彼女の棟の門の前にはパトカーやら、救急車が止まっていて人だかりがしていた。その間をかき分けていくと外国人の新聞記者達と公安局の人間が押し問答していた。出入り口で王大姐が倒れていた。彼女は薬を飲んで支えられ立ち上がると目の前にいた陽光広場のデベロッパーの経理たちを罵倒しはじめた。「お前たちの前で死んでやる」と言うやいなや大理石の壁に向かって頭を突っ込んでいった。私たちは彼女の体を力いっぱい制した。騒ぎが広がる中、副市長や房管局の役人たちも出てきて、デベロッパー側に話し合いの再開を約束させその場は一応繕われた。

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