北京雑感

「建国五十周年」

「北京かわら版」編集顧問 櫻井澄夫

   10月1日、中華人民共和国は、1949年のこの国の建国以来、50周年を迎えた。

   私事で恐縮だが、私は前の年の1948年の2月の生まれだから、この国より一年先輩ということになる。日本ではいわゆるベビーブーム真っ盛りの年である。

   何人もの叔父が国外で戦死し、二人が中国と、中国からシベリア経由で帰ってきたのもそのころである。それでは私の家はというと、よくわからない。今度日本に帰った時、死んだ父の日記を広げ調べてみよう。中国史を大学で教えていた父は、昭和19年の東京大空襲のさなか、何を思ったのか日記を(「弾下録」と名づけ)つけはじめ、ノート百数十冊の日記を、死んだ日の日付まで書いて、この世を去った。

   一方、50というのは単なる数字上の区切りともいえる。しかしこのような機会に私たちの身近な歴史を振り返り、50年の意味を問い直すことができるのも、中国に居住する者ならではの特権であり、ある種の醍醐味ともいえるだろう。

   残念ながら、中国に縁のあった叔父や父から、中国のことは何も聞くことができなかった。しかし私にもこのところ、さまざまな中国との新しい縁が生まれている。

   今ごろになって、彼ら世代が何を考え、どこを歩き、何をしたのか、とても気になる。50周年の休み期間中、インターネットで、そのような本探しに明け暮れた。

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