頑張れ!北京少年野球団

By 菅納ひろむ

朝も自転車に子を載せて走っていると、 パトカーに先導された車列が私を追い越して行った。よく空港からのVIPが通る道なので、またどこかの国の元首かと見やると、実は大型バス7〜8台に分乗したわが国の高校の修学旅行生一行なのであった。「おうおう、人民が自転車に載って頑張っているなあ」とばかりに高いバスの車窓から10代の日本の若者が我らを見下ろしている図である。
   もちろん、別に公安が自主的に高校生をVIP扱いしているわけではなく、学校側がスムーズな観光のために、旅行社を通じて金を払ってパトカーを雇っているのだろう。
   これ、何かおかしいと思いませんか。日本ではただの高校生たちなのに、北京に着いたとたん、パトカーの先導で特権的に立ち振る舞う立場に置かれてしまうこの旅行。きっと中国への修学旅行を決めるにあたっては、「国際感覚を養う」とか「隣国中国への理解を深める」なんて言うお題目が並べられたのだろうが、こんな風に旅行して、本当にそんなことが実現できるのだろうか。いくら渋滞しようと、混乱しようと、それが中国の実状なら、ありのままを体験し、理解して帰るのでなければ意味がないではないか。そんなに、すっきりしたスマートな旅行が良いのなら、他の場所を選べば良いではないか。「この国では俺達って偉いんだ」なんて思うヤツが出てこないとも限らない。沿道の中国人の反応も好意的であろう筈がない。

   と、ひとしきり怒り終わったところで、本題のさわやかな話題に入ろう。今年の4月から北京日本人学校に待望の野球サークルが誕生、小学部4年生から中学部2年生までの約60人が参加して始まった。女の子も3人いて頑張っている。サークルは毎週日曜日の午前中に日本人学校のグラウンドで活動している。4年生の長男がこれに参加したため、私も送迎役で毎週ついて行っているのだが、人出不足から、いつの間にかボランティアのコーチをやらされるようになった。他にも日本人会野球同好会の有志や留学生が指導にあたってくださっている。
   所詮は日本人同士のことじゃないか、と当初はあまり積極的に関与するつもりはなかったのだが、子供達の名前や性格を覚え、その上達ぶりを毎週見ているとだんだん面白くなってきた。こんな私を「先生!」なんて呼んでくれる子がいたりして、そりゃもう、可愛くて仕方ない。
   初めの頃は紅白試合で五十点くらい点が入るなど、無茶苦茶なレベルだったのだが、半年の練習を経て、ずいぶん締まった試合ができるようになった。ろくに他人のプレーを見ないで騒いでいた子供達が、いつしか自軍の選手に声援を送るようになった。子供の進歩は本当に早い。
   それにしても、北京日本人学校の子供たちは、みんな個性的で、仲が良く、とても感じがよい。上級生が下級生をとても可愛がっている。下級生も良い意味で上級生に甘えている。おそらく、今や日本の小学校ではあまり見られない状況ではないだろうか。
   最初は休日のコーチ役は億劫だったけど、今や日曜の野球は私の楽しみの一つになってしまった。
   年内の活動は、11月末の豊台野球場での記念紅白戦で終了したが、春からまた日本人学校で再開する予定なので、ぜひ一度のぞきに来て下さい。元気のよい子供達のプレーを見ていると若返りますよ。

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