北京雑感1994年7月号

続・「外国人価格」を考える
〜電話局とFESCOの料金〜

編集長 根箭芳紀

   11号では、現在なお残っている外国人に対する二重価格、即ち“国籍を根拠とする価格差別”を取り上げたので、今回は外国企業に対する「外貨建て価格」について考えてみる。

   昨年末の外貨管理の改革に関する発表の後、これまで外貨兌換券で支払を受けていたところが、一斉に50%値上げを行なったことは記憶に新しい。これが従来にも増して“外国人に対する価格差別”を生み出した原因であるが、その際「電話局」と「外国企業服務公司」(FESCO)は、契約している外国企業宛ての値上げ通告文の中に、“将来人民元の対外レートが変動した場合は料金の調整を行う”と明記している。

   しかし電話局にしても外企にしても原材料を外国から輸入している訳では無いから、人民元レートの変動によってコストが変わるはずがない。一方、人民元レートの減価傾向は今後も続くと誰しもが予測できる状況であるから、彼らの「根拠」はつまるところ“外貨送金を支払の財源としている外国企業にとっては、外貨建てで計算して金額が同じなら、その分値上しても払えるはずだ”との独断的楽観論に基づいているのであろう。

   何かにつけて他人の思惑を気にし過ぎる我々日本人からすると、誠にあっぱれとも言える自己主張であるが、これでは本来外国人に帰すべき為替メリットが、ここ中国では何時まで待っても享受できないことになるので、早急に何とかしてもらいたいものである。

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   さらに電話局について考えると、そもそも電話料金は本来公共料金であり、従って料金が誰に対しても一律であることが国際的にも普通である(この点は航空運賃についえも言える)。ところが実際には、電話局が捕捉出来る外国企業や外国人に対しては、それが合弁会社であっても50%アップの料金を適応しているので、余談になるが、その結果オフィスから電話したら高い電話料だが、ロビーの公衆電話からカードでかけたら安い料金ですむ、といった奇妙な現象も発生している。

   ところで、“国籍を根拠とする価格差別”の問題を考える場合、中国における納税義務をどこまで負っているかも、併せて考える必要がある。即ち、個人所得税を払わない旅行者と支払義務の有る駐在員、法人所得税を納税しない駐在企業と納税義務を負っている現地法人があるが、これら駐在員や現地法人は内国民待遇として、二重価格の対象から外すべきだと思う。特に駐在員は高額所得者として、中国の所得税収入に貢献しているのであるから、せめてその国のサービス面では一定の優遇を期待しても当然だと思うが、いかがであろうか。

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