Ken's Song





ジャズで演奏される名曲のコーナー
トップページに連載中!




Kenの独断と偏見の、曲のカンタンな解説と、おすすめの演奏を紹介します。

スタンダード・ソングは、本当に面白い。歌は、その時代の人間や世の中の様子を表している。あるいはラブソングでは普遍的な人間の愛すべきバカさ加減もとても真実にうたわれている。

CDタイトルなどの御質問やご意見、またとりあげてほしい曲などありましたら、お気軽にお寄せ下さい。






SONG MENU


「April In Paris」(パリの4月)
「All Of Me」
「As Time Goes By」(時がすぎても)
「Autumn In New York」(ニューヨークの秋)
「Autumn Leaves」(枯葉)
「Body And Soul」(身も心も)
「The Days Of Wine And Roses」(酒とバラの日々)
「ESTATE」
「Fallin' In Love With Love」(恋に恋して)
「The Girl From Ipanema」(イパネマの娘)
「I'll Remember April」(4月の思い出)
「Misty」(ミスティ)
「My Funny Valentine」
「On Green Dolphin Street」
「September In The Rain」(9月の雨)
「September Song」
「Smile」(スマイル)
「The Shadow Of Your Smile」(いそしぎ)
「Spring Is Here」
「Star Dust」(スターダスト)
「Summertime」(サマータイム)
「The Summer Knows」(思い出の夏)
「Take The "A" Train」(A列車で行こう)
「What's New?」
「Wave」(波)
「When I Fall In Love」
「When the Saints Go Marchin' In」(聖者の行進)
「You Must Believe In Spring」


雨の歌


年の瀬(クリスマス)songs

「Amazing Grace」
「Blue Christmas」
「The Christmas Song」
「Have Yourself A Merry Little Christmas」
「Here Comes Santa Claus」
「Last Christmas」
「Santa Claus Is Coming To Town」
「Silent Night」
「Silver Bells」
「You Are All I Want For Cristmas」
「White Christmas」
「Winter Wonderland」
2000年クリスマスソング人気投票結果









2001年10月





「Smile」
(スマイル)


チャップリンが、映画「モダンタイムス」のために自分で書いたといわれる。
チャップリンは音楽の専門家ではないが、自分がヴァイオリンを弾いて誰かが譜面にするという作曲法であったらしく、他にも「Eternally」などの名曲がある。どれも夢見るような甘いメロディだ。

この曲の歌詞は実にストレートで、内容は「苦しいときは笑って」というだけといえる歌なのだが、なぜかぐっとくる。ひねりなくあくまでやさしく真摯に語りかけることに徹したパワーがある。
「泣いたって何のトクもしない、自分ががんばって笑いさえすれば、まだ生きるって捨てたもんじゃないってわかるさ」と心が痛いひとに語りかけるのだ。

ヴォーカルは数多いが、ひとを包み込む説得力をつけるには人間的な実力がいりそうな曲だな(笑)。ナット・キング・コールと娘のナタリー・コールを比べるとわかる。でも、自分の人生に向かって励ますように歌うスタイルも多く、これも悪くない。
僕がピアノ弾いてストリングス編曲した宮田あやこさんの「スマイル」も聴いてね(^^ゞ

インストでは、40年もの昔にケニー・ドーハム(トランペット)がミディアム4ビートでやったのが、すごい画期的。この曲をスロー以外でやるなんて誰も思いつかない、そんな曲だから初めてやったひとは尊敬してしまう。
最近ではマッコイ・タイナー(ピアノ)も強力にスウィングしている。
デクスター・ゴードン(テナーサックス)の”スマイル”は、トツトツと歌い続けていて泣ける。










2001年9月





「The Days Of Wine And Roses」
(酒とバラの日々)


タイトルを見て、”あこがれの生活”なんて思っちゃ大まちがい。
この曲は「ムーンリバー(”ティファニーで朝食を”)」などを作曲した映画音楽の雄ヘンリー・マンシーニが同名の映画のために書いた主題歌。
この映画を見たことがある友人がいたので教えてもらった。とても愛し合ってバラ色の日々を送っていた夫婦のストーリーで、酒好きの夫の気持ちをわかろうとして飲み始めた奥さんのほうもアルコール中毒患者になって灰色の日々が始まってしまうという恐ろしい映画なのだそうだ(ひとごとではない、と言っていた(^^ゞ)。中毒とのたたかいは、夫は更生するが妻は敗れ、夫婦は破滅するようだ。。
「酒とバラの日々は、子供の遊びのようにかんたんに閉じようとしているドアに向かって走っていく。”Nevermore”と書かれたドアに」

超スタンダードと呼んでいい曲だ。ヴォーカルもインストルメンタルも数多い。
カーメン・マクレーとトニー・ベネットはどちらもジャズの匂いプンプンの奥深い歌をきかせている。
ピアノの名演が多く、オスカー・ピーターソンははつらつとスウィング、ミッシェル・ペトルチアーニの入魂のスローバラード、またボサノバのリズムでもよく演奏される。しかし愛奏曲としていたビル・エヴァンスの最期直前の演奏は聴いていてつらくなるほど迫真の名演だった、天国へ向かって自分の力をふりしぼって駆け上がっていくようにみえる。









2001年8月





「The Shadow Of Your Smile」
(いそしぎ)


「いそしぎ」というタイトルが日本ではあまりにも有名だが、昔「いそしぎ」って何だ?と辞書で調べたことがある。「いそしぐ」の名詞形ではなかった(^^ゞ!辞書には載っていない。
「あなたの微笑みの影」がなぜ「いそしぎ」なのか。。それは映画のタイトルであった。英語で「The Sandpiper」という映画(3流映画の誉れ?高い)の主題歌。それは、海辺にいる鳥(鴫=シギ)のこと。

恋したひとへの慕情をうたった歌だが、ヴァースの部分で傷ついた「いそしぎ」を抱いたあなたのやさしさを忘れないとだけ出てくる。コーラス本編では「あなたの微笑みの影」がこれからの私の夜明けを照らしてくれる。春や恋の喜びを、思い出すとき、いつもあなたの微笑みの影=おもかげも思い出す、と歌ってる。なぜだかこの曲は現在の恋人に対して歌ってるように聞こえるのは自分だけだろうか(少なくともまだ好き、ずーっと好きなのだ)。だとしたら、おもかげを歌うところが、ちょっとさびしい。

メロディが抜群だ(ジョニー・マンデル)。最初はトニー・ベネットの歌うみたいに大きなバラード曲だったようだが、アストラッド・ジルベルトがボサノヴァのリズムで歌ったのがすばらしく、ボサノヴァで演奏されることが多くなった。
アン・バートンの歌うスローバラードは独自の世界ですばらしい。異色では4ビートで果敢に歌うルー・ロウルズが印象的。
インストルメンタルでは、ソニー・スティット(アルトサックス)のお気に入りで大きくスウィングしてるのがいい。









2001年7月





「The Girl From Ipanema」
(イパネマの娘)


ボサノヴァの代表的な名曲。
”イパネマ”は、ブラジルのリゾート地らしい。そこの海辺からやってきたサンバを踊るように歩く娘に、惚れちゃったうた。ボサノヴァの曲には地名が出てくる題名が多い気がする。

スタン・ゲッツ(テナーサックス)と一緒に組んだジョアン・ジルベルトのアルバムが大ヒットした。作曲はアントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)。

'60年代、ブラジルの新しい歌ボサノヴァがいかに世界に旋風を巻き起こしたかは、「ジャズピアノの父」と呼ばれるアール・ハインズが、ほぼリアルタイムでこの曲を吹き込んでいることでもわかる。頭で考えると全然イメージじゃない。でも立派なジャズになっていて大らかで楽しい。アメリカのジャズマンはいい曲なら何でも演奏する。素晴らしいブラジルの曲をとても気に入って、それをたくさんの人が自分流に演奏したのだ(そういうことを嫌った人もいただろうし、そういうジャズ批評もあった)。メロディやリズムが新鮮でもあったのだろう。
この曲のサビは、どんどん転調してとてもむずかしいよ。サビ以外はとてもシンプル、でもメロディ(歌詞)をリズムにのせるのは、なかなかレベル高いかも。

ピアノのオスカー・ピーターソンもボサノヴァを気に入っていた人だが、静寂の中の爆発という感じですばらしい。
ジャズ・ヴォーカルでは、エラ・フィッツジェラルドがジャズのアドリブをジャズマンの奏するボサノヴァのリズムにのって乗りまくっている(歌詞はイパネマから来た”少年”となっている)。ジョビンに捧げたアルバムも残している。
逆に現地ではジャズに影響を受けてサンバやボサノヴァをピアノトリオなどで演奏したグループもたくさんあるらしい。ブラジルのThe Zimbo Trioの「イパネマの娘」などは、ジャズへの敬意に満ちている気がする。アメリカジャズマンより激しく演奏している(国際交流の姿かくあるべきみたいなやさしさや異国へのあこがれ)。









2001年6月





「All Of Me」

ジャズのスタンダードソングの超有名曲。
それほど簡単な曲ではないと思うが、ジャズヴォーカルを始めた人が必ずといっていいほど何番目かに覚える曲のようだ(2拍3連符などがでてきて歌詞をのせるのは案外むずかしいところがある)。
たいていスウィングするリズムで演奏する。出だしが力強く、ジャズらしさがあらわれているのかな。

「私の一部(心)を奪ったあなた。どうして私のすべてを奪ってくれないの?!」と片思いを強烈にぶちまける。はっきり物言うパワフルな女性が歌うとぴったりの歌詞だが(ダイナ・ワシントンとかチャカ・カーンとか)、気持ち出し控えめに歌うとまたいい(ビリー・ホリデイ)。男性ではフランク・シナトラが一番人気。

演奏では特に最近はあまりやらない。むずかしい曲だと思うし「この曲はヴォーカリストにおまかせしよう」と思われがちな曲の一つだ。
定番のレスター・ヤング(テナーサックス)の演奏は、控えめ系で悲しそう。
リー・コニッツ(アルトサックス)のお気に入り曲だったみたいだ、さりげなくてとてもいい。ジャンゴ・ラインハルト(ギター)のメロディが時代の雰囲気にはまってる。









2001年5月





「As Time Goes By」
(時がすぎても)


この題名の邦訳で一番多いのが「時のすぎゆくままに」というものだが、日本人の誤訳の代表選手として話題にのぼる。
「時代がすぎていっても、人間の恋心は不変だ」という歌。
曲は、戦争中に封切られた映画「カサブランカ」で一躍有名になった。イングリッド・バーグマンが「Play it Sam.(As Time Goes Byを弾いて)」というシーンはあまりにも有名ですね。

ヴァース(曲の導入部)の歌詞にアインシュタインが出てくるが、この時代'30〜'40年代は科学の進歩やめざましい世界情勢に人々の心が疲れやすくなりはじめて、そんな急ぎゆく時代への皮肉とも感じられる歌だ。今でも同じだね。
相対性理論や戦争の行方は心配の種だけれど、「男には女が、女には男が必要なのはむかしからこれからも変わらずわかりきったこと。時が流れてどんな時代になっても世界はいつも恋人達を歓迎してる。」

ビリー・ホリデイの'40年代の録音は、リアルタイムな時代の雰囲気がばっちり感じ取れる。カーメン・マクレーの歌が説得力たっぷりですばらしい。
歌詞が強力なせいか、インストルメンタルは意外に少ない。
映画「ラウンド・ミッドナイト」で、デクスター・ゴードン(テナー・サックス)が演奏しているのがすばらしかった。
ピアノでは、マル・ウォルドロンが、息をさせないようなスローテンポで演っているのがすごかった。テディ・ウィルソンの十八番。









2001年4月





「April In Paris」
(パリの4月)


フランスのシャンソンでアメリカを歌ったものは少ないのに、アメリカのスタンダードソングにはパリがよくでてくる。ふしぎだ。そしてたいていワクワクするものの象徴として扱われている。「あなたが私を愛していたときは、街はいつもどこでもパリだった」ってなもん(「When Joannna Loved Me」より)。

「ニューヨークの秋」という名曲を書いたヴァーノン・デュークはその地球の裏側の春の風景を、見事にメロディにした(できたのはこっちが先)。
すばらしいメロディ!でも難曲だ(^^;
「ほんとの春を知らなかった自分がパリに行って、それを知った」という春の賛歌だ。でも、それゆえに心が乱れたみたいで、パリの街にむかって「どうしてくれる、私のこの(恋)心」というオチというか、問いかけで終わる。

カウント・ベイシー楽団のオハコとしてあまりにも有名。その名演奏に敬意を表したデューク・エリントンやサド・ジョーンズ楽団の演奏も立派だ。
ピアノなら、セロニアス・モンクとバド・パウエル、そして圧倒的なエロル・ガーナーの愛奏曲。オーケストラのような雄大さがある。
他楽器では、チャーリー・パーカー(アルト・サックス)が一押し。
ヴォーカルは多くない。エラ・フィッツジェラルドと神様ルイ・アームストロングのデュエットが一泣き。若きサラ・ヴォーンとクリフォード・ブラウン(トランペット)の共演もすばらしい。









2001年2月





「You Must Believe In Spring」

映画音楽などで活躍している香気あふれる作曲家、はじけるジャズピアニスト、ミッシェル・ルグラン作。
切なくすばらしい曲だが、ふと気づくとメロディはたった8小節のモチーフしかない。それを4回くりかえすだけなのだが、聴いていると魔術にかかったようにもりあがっていく。後半とちゅうからいきなり半音の転調をする。

「今は(あなたの心が)雪の下深く眠っていても、冬の後には必ず春が来る。
 3、4、5月と雪が解けて小川が流れ出す春と、愛は絶対に信じること。」

ミッシェル・ルグランのコンサートを見たとき、メロディをベースで演奏していた。なかなか合う。歌い上げても、じっくり抑えて演奏しても合う。
ピアノのビル・エヴァンスの晩年の演奏が一押し。人気の高い同名アルバムがある。これはトリオ演奏だが、トニー・ベネット(ヴォーカル)とデュオで吹き込んだものも、泣ける。
ジョニー・グリフィン(テナー・サックス)がじわっと歌い上げている。
ヴォーカルは音程の飛び方が楽器的でむずかしそうだが、テクニシャンが取り上げるようになった。シーラ・ジョーダンはハービー・シュワルツのベース1本で歌い、クラシックのジェシー・ノーマンは御大ミッシェル・ルグランと最近吹き込み、僕はチャリートと一緒に演奏したのが忘れられません。









2001年1月





「Take The "A" Train」
(A列車で行こう)


僕が高校のとき、音楽の教科書で唯一載ってたジャズマンはデューク・エリントン、そしてこの鑑賞曲「A列車で行こう」だ。
ジャズをアメリカの1つの芸術として押し上げる大きな原動力のひとりだった、ピアニスト「公爵」エリントン、の偉大なバンドのテーマ曲だった。作曲は、デューク・エリントンの片腕として楽団の作曲・編曲を担当していたピアニスト、ビリー・ストレイホン。
今でも、街行く人への「JAZZといえば思い浮かぶ曲は?」アンケートに、いつも必ず3位以内をキープしているほど、ポピュラーでかつ「ジャズらしい」曲らしい。
「A列車」とは、ハーレムヘ行きのニューヨークの地下鉄8番線のことをこう呼ぶらしいのだが、日本人観光客は1人で乗らない方がいいらしい(^^ゞ。
「ハーレムのシュガーヒルにいくなら、Aトレインで行かなきゃだめよ。来た来た、さあ乗るぞ」って詞がついてる。

エリントン楽団の演奏用の曲のせいか、インストルメンタルが多い。
エリントン楽団は何度も何度も録音している。僕のお気に入りは、ドラムのルイ・ベルソンが共演したもの。テンポも変わって、最後までわくわく。
コンボ演奏なら、クリフォード・ブラウン&マックス・ローチが一押し。アレンジもいい。
ヴォーカルのベティ・ローシェは、エリントン専属シンガーだったが、やはり一番印象深い(前述ルイ・ベルソン共演盤でも歌っているし、自己のアルバムもある)。聴いてると、旅行してる気分だ。









2000年12月





Pub FANTASISTA
2000年クリスマスソング人気投票結果

第1位がジョン・レノン(&ヨーコ)とは「ファンタジスタ」らしさが出ているかもしれません。クリスマスソングのCDは売れるのか(笑)、最近どんどん新しい曲が生まれているようだ。アーティストも作りたがるジャンルだ。今年、ドリカムの「Winter Song」が1位になってるラジオ番組を2つ聴いた(ここにはない(^^ゞ)。日本生まれのクリスマスソングを聴いているんだな。洋楽を聴いたことがない日本のロックミュージシャンも出てきている時代なのだ。

1

H
appy Christmas(War is over)

2
Have Yourself A Merry Little Christmas

3

The Christmas Song White Christmas

4

Silver Bells

5



6

Blue ChristmasChristmas time forever(S.A.S)
I'll Be Home For Christmas
Let It SnowLet IT Snow Let It Snow



第7

C
hrismas Time In Blue()
Last ChristmasWHAM
No More Blue Christmas
'
O Holly NIGHT
Silent Night
T
he First Noel



8

Hey!Santa (Carnie&Wendy Wilson)
Jingle Bell(ventures)
MERRY CHRISTMAS DARLIN
When A Child Is Born








2000年11月





「Misty」

あまりに有名なこのスタンダード・ソングは、最初はピアノ曲だった。
不世出の個性派ピアニスト、エロール・ガーナー1954年の作。飛行機の中から外を見てるうちにメロディが浮かんだらしい。有線放送のBGMでもよくかかるのに、なぜかジャズマンはそれほど取り上げない。
メロディがあまりに美しく、後年ジョニー・バークが詞をつけ、サラ・ヴォーンがヒットさせた。
恋する自分の不安を、霧の中にいるようだと歌う。

演奏で、一押しはやはりエロール・ガーナーの自演。ものすごいテンポだ(スロー)
。気持ちが入ってる。つづいて取り上げたピアニストは少ない。オスカー・ピーターソンとレイ・ブライアントが独自の弾き方をしてるところがいい。どちらもムードを大切にして抑えた感じ。アメリカがこの曲にに対して持っている感じはよくわからないが、日本で超名曲とされるようにヨーロッパのミュージシャンもよく取り上げる曲のひとつだ。
変わったところでは、トランペット金感度NO.1の”ハンニバル”マーヴィン・ピーターソンの意表をつくような選曲が心に残る。中身は何のてらいもなく、実直そのもの。硬派なのにやさしい演奏になる見本は、スタン・ゲッツとハービー・ハンコックの共演。

サラ・ヴォーンのコンサートでは必ずアンコールにリクエストがきたオハコで、日本に来ると「ミスチー、ミスチー」と言って、日本人の「ミスティー」好きを茶化してたものだ。が、なかなかの難曲で、ヴォーカルの名演はあまり多くないように思う。音域の広さと、なかなか崩せない細かい歌詞ゆえか。弱みを見せたがらぬジャズミュージシャンの性か(自分を「木の上で困っている子猫」だと歌わなければならない)。最近ではディー・ディー・ブリッジ・ウォーターやママTのような、歌詞とは逆に歌い上げちゃう感じが主流になっている感がある。バラードで歌うのが難しいことへの反動にも見える。が、演奏ではやはりスローバラードが圧倒的に多い。








2000年10月





「On Green Dolrhin Street」
(グリーン・ドルフィン・ストリート)

ジャズ初心者のころ、この曲を聴いて「何だか不思議な気分になってワクワクした」記憶がある。歌モノであるのだが、インストルメンタルで好まれて演奏される。ジャズピアノをはじめた人にも「かっこいい、弾いてみたい」と思わせるこの曲は、出だしから、とても神秘的で都会的だ。この曲には「ジャズっぽさ」のヒントがあるかもしれない。最初の8小節に、ちょっとひと味違うぞ、と思わせる何かがある。とても印象的なこの部分は、恋人との出会いを歌っているところだ。最後に、恋人とは別れたけれど、思い出したときは出会いの舞台装置「グリーン・ドルフィン・ストリート」の土にくちづけしたくなるという。

初めて聴いたのは、エリック・ドルフィーのバスクラリネットの演奏で、今でもとてもお気に入り。この数年前にマイルス・ディヴィス(トランペット)の名演がある。ぞくぞくするようなテンポで、ジョン・コルトレーンのソロになだれ込むところが、たまりません。
ピアノの名演も多い。バド・パウエル、ウィントン・ケリーがいい。チック・コリアの演奏も、はじけ飛んでいてすごい。
ヴォーカルのひとは、なぜかあまり演らないが、この曲の正体を感じるのにヴォーカルはなかなかいい。トニー・ベネットの生真面目な演奏がいちばんこの曲を表しているような気がする。若きナンシー・ウィルソンが、ジョージ・シアリング4のバックで歌ったものは、通りをクルマで流してるッぽい(?)古きよき都会の情景が浮かぶサウンド。シェイラ・ジョーダンはベース一本をバックに、掛け合いながら歌っていて、これも聴きもの。








2000年9月





「Star Dust」
(スターダスト)


「星屑(ほしくず)」。スタンダードソングの代名詞といってもいいくらいの名曲。
作曲者ホーギー・カーマイケルは、「我が心のジョージア」や「ニアネス・オブ・ユー」なんかも作曲している大御所。この1曲で一生食えたとかいう話も。。
昨日の恋のはかなさを、「星屑」にたとえるなんてすごい。この曲ができる以前に「星屑」なんて言葉や感覚はあったのだろうか。想い出は誰にでもたくさんあるってことが「Dust(ダスト>ダスキンはここから(^^ゞ)」という言葉によく出ている。
ちなみに、昼間空が青く見えるのは、大気中に無数のチリやほこりがあるからだよ。
聴いていると、「屑」がいきなり宝石箱のひと粒のごとくかけがえのない想い出になって輝く。想い出とはチリのようだけれど人生にとってなんと大切なことか。
日本の'60年代の名番組「シャボン玉ホリデー」の主題歌としてあまりにも有名になり、日本人でも音楽ファンならずとも知っている。

ジャズで心に残る演奏は、スウィング時代ならコールマン・ホーキンス(テナーサックス)、ジャズギターの開祖チャーリー・クリスチャン(ベニー・グッドマン楽団)。でも、一番心に残るのは、ライオネル・ハンプトン(ビブラフォン)の同名アルバムかもしれない。ウィリー・スミス(アルトサックス)、メジャー・ホリー(ベース)らも最高のパフォーマンスで、ユーモアたっぷりのあまりに人間的な音を奏でている。
モダンに入ってあまり取り上げられなくなったが、ジョン・コルトレーンは真正面から真面目な演奏を残している。クリフォード・ブラウンのほうが名演奏、その流れをくむウィントン・マルサリスもすばらしい。
作曲者カーマイケルの鼻にかかった弾き語りも、何度も録音されているが、いずれもさらっとしたノリ気味の演奏だ。テンポは速い。曲ができたのは'20年代。'40年代に入ってアーティー・ショウ(クラリネット)がスローテンポでやっているのが、はじまりか。気持が伝わってきていい。
ヴォーカルはナット・キング・コールがあまりに有名。








2000年8月





「The Summer Knows」
(思い出の夏)


戦争中の避暑地での少年の恋を描いた映画「思い出の夏」の切ない主題曲(見てない(^^ゞ)。
マイナー(暗)とメジャー(明)が途中5度の細かい転調をはさんで交互に絡み合い、夏の太陽と雨雲を思わせる。
'60年代より活躍しはじめたミッシェル・ルグランの書くメロディは本当に美しい。
「これからの人生」「シェルブールの雨傘」「You Must Believe In Spring」など、崖のふちを歩いていくように音をつないでいって、切なく見事だ。

ルグラン(ピアニストでもある)と仲良しのフィル・ウッズ(アルトサックス)のフューチャリングがおすすめ。ピアノなら、ぐっと入り込むビル・エヴァンス。あまりに美しい音色のアート・ファーマーのフリューゲルホーンも心に残る。アート・ペッパー(アルトサックス)の「傷心の夏」と副題をつけたくなるような名演奏もあった。どれもすばらしい。
ボーカルでは、ルグラン楽団がバックをつとめたサラ・ヴォーンが定番。








2000年7月





「Wave」
(波)


夏といえばボサノヴァ、とかよく言いますが、これは何なのかな。最近はサルサやら、キューバの音楽とか、ラテン系も。きっと、暑い国のイメージなのでしょう。でも確かにボサノヴァは、夏にフィットしてる感じがする。決して重くならないリズムは、青空と涼風を感じさせ、昼間からトロピカルカクテルを連想する、、、のはオレだけか(^^ゞ。
さて、ボサノヴァの神様アントニオ・カルロス・ジョビンの作ったたくさんの名曲の中でもとてもポピュラーなこの歌は、ジャズ界でもすっかりスタンダード化したA級の曲。1967年作とはスタンダードとしては本当に新しい。
波に託して、「一番大切なものは愛」と恋するひとに語りかける。しゃれてる。

ジョビンの自演が、淡々としていてクールだ。ギターがリズムを切ないコードで刻み、ピアノは節約型の大きな音符で静かに弾く、ボサノヴァの典型だ。暑苦しくならないのがコツ?
ジャズではミルト・ジャクソン=レイ・ブラウンコンビが、とてもジャズっぽくおもしろい。ピアノのマッコイ・タイナーもいつも通り熱演、暑い夏です。
ヴォーカルものも多いが、音域の広さや音程の難しさで難曲だと思う。
サラ・ヴォーンがボサのリズムをやめて、スローバラードでやってるのはすばらしい。
アニタ・オデイは、あまりに上手すぎ。本場ブラジルの人は絶対そうしないだろうがリズミックなアプローチはジャズのやり方である。
本場のジョアン・ジルベルトは、ジョビンと違いとても明るい表情だ。元気が出る。








2000年6月





「Body And Soul」
(身も心も)


スタンダード名曲中の名曲、とても切ない歌である。
1930年生まれ、スウィング時代から現在まであらゆるスタイルのミュージシャンに取り上げられ続けている。
歌詞はめずらしくとてもストレートで、思いの届かなくなった恋人に歌いかけているみたいだが、とても意思のこもった感じのする歌だ。
各コーラスの最後に
「I'm all for you body and soul
(私は全部あなたのもの)」
とくる。最後は
「I'm yours for just taking
(あとはただあなたが決めるだけ)」
「I'd gladly surrender
(喜んで降参する、だ)」
と強烈に自分を投げ出していて、「あなたに命捧げます」という風の日本の演歌の名曲と何ら変わりがない。
メロディは最初の何てことない2小節が、とても切ない。長調なのに、歌詞とからみあって切なさが続く不思議な曲だ。

コールマン・ホーキンスのテナーサックスは、いつもたたみかけるような音の洪水で泣ける。ベニー・グッドマンのクラリネットもとても美しい。
ピアノなら、淡々としたテディ・ウィルソン。バド・パウエルのソロが入魂。セロニアス・モンクも打楽器的で印象的。

ヴォーカルはたくさんある。不思議だが細かいところが違う歌詞が非常に多くある。
晩年のビリー・ホリデイが迫りくる。強者カーメン・マクレーの弾き語りが、ちらりとこぼれる可愛さを出していて感動する。








2000年5月





「Spring Is Here」

日本の唱歌「春が来た」はシンプルで、春の到来の喜びにあふれた名曲ですが、こちらは黄金のコンビ!リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートのスタンダードソング。
そういえば「夏は来ぬ」って曲もあるし、日本は四季の移り変わりをはっきり感動できる幸せな国だと思う。俳句には季語が要るなんて、常夏の国じゃ苦労するだろうな(笑)。

出だしはディミニッシュコードを使ったメロディで、とても美しい。不思議な雰囲気だ。日本の春とは違うかんじだ。それからメロディも劇的に盛り上がったあとにホッと春が来たところで解決する。ドラマチックでよく出来ているなと思う。
曲の内容は、「春が来たのに、恋人がいないオレはちっとも盛り上がれない!」という、ちょっといじけた悲しい歌である。そのせいか、一人ごちた解釈の演奏が多い。

何といっても、ビル・エヴァンスの演奏がすばらしい。内に向かって入りこんでいくバラードの典型で引きこまれる。エヴァンスが亡くなった時、同じピアノのリッチー・バイラークが追悼アルバムでこの曲をワルツで録音していて興味深い。4ビートやボサノバでもどんなリズムでも演奏できる曲である。
管楽器の演奏ではジョン・コルトレーンのがあるが、そういえばあまりやってない。
ボーカルの人にももっと演ってほしい曲だが、こちらもあまり聴かない。クリス・コナー(「バードランドの子守唄」)のは有名かな。アーネスティン・アンダーソンのマイペースな歌が印象に残っている。








2000年4月





「I'll Remember April(4月の思い出)」

4月は、日本では年度はじめなのでスタート!っていうイメージの月ですね。
入学、進級、人事異動?また、雪の北海道ではいろんな戸外活動が始まるシーズンでもあります。

「4月のすばらしいあなたとの思い出があるから、秋になっても私は大丈夫」という、なかなか頼もしい元気の出る唄。題名は直訳すると「きっと4月を思い出すよ(そして頑張れる)」だな。日本じゃ、去年の思い出を胸にヨーイ・ドン!の4月ってことになるのかもしれない。

曲の構成がやや風変わりで(ABA形式48小節)、インストルメンタルでもよく演奏される。セッションでも定番の曲だが、たいてい速いテンポでやる。
ピアノでは神がかりの演奏をしたバド・パウエルの初期に決定的名演がある。パウエルとその一味である、クロード・ウィリアムソンやハンプトン・ホーズは同じ解釈だが、面白いのはソニー・クラークのしんみりとしたバラード演奏(ソロ)で、この曲の美しさを見事に引き出している。
近年では、ミシェル・ペトルチアーニやジョン・ヒックス、ジョン・ルイスとハンク・ジョーンズのピアノデュオなんてのもあり、枚挙にいとまがない。
歌では、アップテンポで転調に転調を重ね観客を飲み込んでいくサラ・ボーンを思い出す。








2000年3月





「When the Saints Go Marchin' In(聖者の行進)」

日本人でも、誰でもハミングできるトラディッショナル・スタンダード。
ジャズの発祥のころ、葬式で墓地への往き帰りには音楽を演奏したそうだ(それが初期ジャズマンの重要なシゴトだったので、持ち運び不可能な楽器たとえばピアノなんてものは、なかったんだ)。往きは悲しげな死を悼むような曲を演奏するが、帰りは生きている皆を励ますってことなのか、ドハデで楽しい曲をやったらしい
。「聖者の行進」は、帰りのお決まり曲だった。
Saintを辞書で調べると、「聖人」の他に「死者」の意味があった。もともとそういう意味の神聖な歌だったのだろう。ドンチャンやるべき曲じゃないのに、わざとそうしているというようなことが、黒人のジャズにはよくある。でも本当の意味は、当人には痛いほどかみくだかれていて、そしてそれを陽気にやるのだ。
日本人の外国流ドンチャン真似事には、音楽に限らず皮相的なのが多いな。

神様サッチモ(ルイ・アームストロング)の歌とトランペットが、一躍この曲をスタンダードにした。何度も録音しているが、としをとるほどに神聖さを増してゆっくりかみしめるように演奏しているのが興味深い。映画「五つの銅貨」での名演も忘れられない。
初期のニューオリンズジャズらしさが一番あらわれているのは、ジョージ・ルイス(クラリネット、バンドリーダー)の演奏かな。
最近では、テレンス・ブランチャード(トランペット)の同名アルバムがある。

ゴスペルの女神様、マヘリア・ジャクソンが歌っているらしいのだが、残念ながらまだ聴いたことがない。聴くまえからゾクゾクするね。








2000年2月 





「My Funny Valentine」

スタンダード中のスタンダードといえるくらい、ジャズファン以外にもとても知られた曲。
女が男に歌う歌のようだ。
サビまでは「あんたの見てくれは笑っちゃう、写真向きでもない。でも、私にとってはお気に入りの芸術品よ。」と半分けなされる。主演男優がオレみたいな男だったら、大真面目で歌う歌なんだろうか(?)。「悪いが訂正してほしい箇所がある」と言いたくなるな。
でも、サビあとに「私を好きなら、髪の毛一本でも変えないで。私の好きなあなたのままでいて」とくる。
ふーむ、スタンダード・ソングには、なぜかこういうひねり技が多い。イカしてるなー、と思うものが多いけど、この曲に関してはやっぱり訂正してほしいところがある、、、(^^ゞ主演男優だったらね)。

時代の長きにわたって名演は数多い、演奏側にも人気の高い曲かな。
男性歌手もよく歌う。フランク・シナトラとチェット・ベイカーが双璧の人気。女性ではサラ・ヴォーンのライブ版がいい。
演奏では、ソニー・スティット、マイルス・デイビス、ビル・エバンスとジム・ホールのデュオ、などがすばらしい。
ひそかなお気に入りは、モーガナ・キングがこの曲の中に「You Are So Beautiful」を1コーラスはさんでメドレーにしているやつ。なんというやさしさ!My Funny Valentineに戻ってからも、執拗に「〜So Beautiful」のフレーズを入れてフォロー(?)している。








2000年1月





「What's New?」

「新着コンテンツは?」という意味じゃない(笑)。
久しぶりに会った人に、「どうしてる?」「元気にやってる?」という半ば挨拶のひとつらしい。
この曲は、かつての恋人に歌うのでなかなか切なく、8小節の頭毎に三度出てくる「What's New〜」を、軽く表現するのはむずかしい。メロディが、そこのところで力いっぱい上がってるから、いやでも盛り上がるしくみになってるし、だれでもフラレタひとに会うとちょっと力むでしょ?
オチは、「あなたは知らないでしょうが、私は変わってないの、、、I still love you so…」
ガーン、はやく新しい人生を!

よく「お変わりなくて?」などという訳をみる。
そういえば、シャンソンの名曲に「再会」というのがある。まさに「What's New」のフランス版みたいだ。自分に向けて歌われるとしたら、、絶対イヤ(^^ゞ。「What's New〜」と歌われる前に走り去るだろう(他の歌にしてほしい)。ちなみに、サビあとは「What's New〜」でなく、「アデュ〜(さよなら)」という。
申し訳ないが(?)なぜか女性の歌ばかりだ、、、。
定番のへレン・メリル。マリーンのおはこ。リンダ・ロンシュタット好き。あとは御存知、宮田あやこ
ダントツ好きなのは、クリフォード・ブラウンのストリングスと一緒の演奏だな。








1999年12月





年末スペシャル!
「すすきの」で12月に数多く演奏される
↓↓ 定番ソングランキング ↓↓


第1位 「White Christmas」
はい、抜群の知名度!ビング・クロスビーを超えるのは?

第2位 「The Christmas Song」
ミュージシャンに人気高い。ナット・コールが有名ですが、 むせび泣く Tenor Sax デクスター・ゴードンのお気に入り曲。

第3位 「Silent Night」
教科書にものってる「きよしこの夜」。 でもみんな23、24日くらいにならないとあまり演りたがらない。

第4位 「Amazing Grace」
年の瀬の歌といういわけではないけど、最近よく演られる。 クリスマス→賛美歌→ゴスペルってこと?

第5位 「クリスマス・イヴ」
山下達郎さん。「雨は夜更けすぎに雪に変わるだろう」 北海道じゃピンと来ないにもかかわらず、ここがスキ。

第6位 「Blue Christmas」
「あなたなしのクリスマス」とても悲しいのに、なぜこんなに メロディがあったかいのか。
>淋しいのにバカ騒ぎしてるアナタ!

第7位 「Santa Claus Is Coming To Town」
「ベラマッチャ〜」街中のいたるところで、流れてます。 オススメは超スローで演ってるラムゼイ・ルイス。きれいな曲だ。

第8位 「Last Christmas」
「ケアレス・ウィスパー」でおなじみ、ワムのこの曲も定番化した。
コード4つの4小節が最後まで延々くりかえし。 なのになぜこんなに広がるんだろう。


他にも、
「赤鼻のトナカイ」
「サンタがママにキッスした」

とか
「Winter Wonderland」
「Here Comes Santa Claus」
「Have Yourself A Merry Little Christmas(スキ)
とか演りますね。いい曲があったら教えてください!


Ken's Favorite

第1位 Silver Bells」
僕が一番好きなのはこれです。

第?位 「You Are All I Want For Cristmas」
なんたって題名がせつなくすばらしい(?)。ピアノの ボビィ・ティモンズが演っています。













1999年11月





「Fallin' In Love With Love」

Fallシリーズ第2弾、「恋に恋して」。
恋に恋するってどういうことだろうか。
歌詞を読むと、それは 「make believe」「playing the fool」だと言ってる(最後は目覚めると いうオチがついている)。
恋してる自分が嬉しくて相手が見えないってコト か。恋に酔う、、これはあたりまえのような気がするが。真剣に「バカを やる」なんてできたのは、何年前でしょうか。現役?エライ! 友達の相談役になって「あいつは恋してるからやっかいだ」とグチをこぼす 人は、友達を心配しながら羨ましい気持ちになってたりする。そんな意味 では、祝福したくなる。恋してる人には、ふだん見えないものが見えるら しいよ!
原曲は恋の気分を表してるようなワルツだが、ジャズではスウィ ングテンポでやる。

日本では人気のヘレン・メリル(with クリフォード・ ブラウン)があまりに有名だが、アーマッド・ジャマル、キース・ジャ レットなどのピアノの名演もあります。



「When I Fall In Love」

秋のことをアメリカでは「Fall」といいます。
これは文字通り「落葉」から来てるらしいけど、なぜか恋することを 「恋に落ちる」といいますね。恋する者の不安やコントロールの効か なさが表れてれる、、、もしや初めてこの言葉を使った人は、秋に Fall In Love した人かもしれない。
名曲です!ヴィクター・ヤング作曲。 「私が恋をする時は、永遠に続く恋をする、または絶対恋に落ちないか のどっちか」 ときっぱり!ほれぼれするね。

ポピュラー系の人もよく歌う。 リンダ・ロンシュタットがさきがけか。オリジナルメロディは平坦なリズム なので、喋るように歌わないとつまらない。ジャズでは、マイルス・ デイヴィス、ビル・エヴァンスの名演が心に残る。
ギターのジム・ホールが、夫婦でデュエットしているのがあった。何とド素人の奥さんが歌っているのだ。下手でもあったまるよ。








1999年10月





「Autumn In New York」

ニューヨークの秋は何故こんなに人を惹きつけるのか!と歌う。
作曲者の ヴァーノン・デュークはこの曲と対のように、「パリの4月」というこれ また超名曲を作ってる。
フランク・シナトラがヒットさせたそうですが、 最近ではメル・トーメのNYの歌ばかりのアルバムがヒットした。
結構難曲で、強いモチーフはあってもありきたりのリフレインはありません。 MJQのインストルメンタルが定番です(「ジャンゴ」)。
個人的には、トランペットのケニー・ドーハム(「Kenny Dorham at Cafe Bohemia」)の演奏が、本人の哀愁のMC紹介入りで、泣ける。








1999年9月





「September Song」

スタンダードソングでは、5月(MAY)は、恋の季節、すばらしい季節の象 徴にされる。
「5月に惚れたあの娘が、こちらを向くまで長くずっと待っ ていた。夏が終わり、9月になって日も短くなってきた。そろそろ君と一 緒に過ごしたいんだよ、11月になっちゃうよ〜」という歌詞のうた。
9月〜11月のことを「precious time」といってるあたり、「この素晴らし い9月だからこそ」という意味がこめられてるんじゃないかな?
メロディ は抜群にいい。メジャーの曲なのに、マイナーから入る。サビは、だまっ て歌っても切なく、しかし静かに盛り上がります。

男の歌であるが、若き 日のサラ・ヴォーンの名唱がある。男性歌手ではナット・キング・コールが 有名です。



「September In The Rain」

「9月の雨」。正確には「雨の9月」だな。
やさしい雨というイメージが浮 かぶメロディ。作者は9月に素敵な恋をしたんだろう。
サビ以外は、何て ことない歌詞だ。サビは「雨だれの奏でる音が、あなたの囁いたひとつひ とつの愛の言葉に切なくリフレインするみたいだ」としゃれてる (あってるかな。英語の詩を完璧に訳すのは不可能です。 よければ原詩をそのままカンジルことをおすすめします)。 そしてオチは「春が来たって、私はまだ9月のままよ、雨の9月のまま」と なる(ありがちな(^^ゞ)。
そう、スタンダードソングの詩にはオチがつ けられてるものが多いです。そういう歌は、「このあとどうなるの?」と ミステリー小説読んでるみたいな気分になって面白い。
この曲は、歌詞も 簡単でメロディも実に素直で美しく初心者向けといえます。でもこういう 曲は歌っていくにつれ、だんだん難しくなってくる〜ヘ(^^ヘ)))

 一押しはやっぱりサラ・ヴォーンかな(「at Mr.Kelly's」)。 ジョー・スタフォードも美しい。
ピアニスト、ジョージ・シアリングのテーマソング(大ヒットした)。



「Autumn Leaves」

 御存知、フランスの名曲「枯葉」。
 '40年代後半の曲だそうだが、ジャズではもっと遅くポピュラーになっ た。何と言っても'58年のキャノンボール・アダレイ(どう聴いてもマイ ルスがリーダーだ)の名演で有名に。

ジャズ・ヴォーカルたくさんある んだろうが、英語詞でイブ・モンタンを凌駕するほどの名演奏はないみたい だ。甘ったるいのが多い。
歌は平面的になりやすそうで難しそうだ。 ただ'80年代にサラ・ヴォーンが全編スキャットのみでアップテンポで 歌った「枯葉」は凄まじかった(パブロレコード)。ナマ聴きました。 チャーリー・パーカを聴いてるようでした(^^ゞ。  
ピアノの名演は多い。劇的なエロール・ガーナー(涙、涙)が一押し 、2拍3連のビル・エヴァンス、ウィントン・ケリーも泣かせます。 ボビィ・ティモンズのヴィレッジ・ヴァンガード盤もすばらしい。 キース・ジャレットのスタンダーズ・ライヴも必聴。








1999年8月





「ESTATE」

北海道は、いよいよ「夏の終わり」という雰囲気になってきました。
ブラジルの隠れた名曲「ESTATE」は、「夏は四季の中でも一番あなた のことを思い出す季節」という、今にぴったりの切ない曲です。 ポルトガル語で「エスタ〜テ〜」と読みます。意味はずばり「SUMMER」。

シャーリー・ホーンの歌が、超スローで泣かせますが、本場もんのボサノヴァなら やっぱり、ジョアン・ジルベルト。「夏の終わりの男の後姿」ってかんじですばらしい。 ジャズならミシェル・ペトルチアーニが入魂のピアノを聴かせています。。

いつもは駆け足で過ぎてく夏。 今年は眠れないほど蒸し暑い夜もあった。よかった!



「Summertime」

あまりに有名なガーシュウィンのこの名曲は、オペラ「ポギーとべス」の冒頭で歌われる子守唄。夏のことをうたった歌というわけではありません。 貧乏そうな黒人街で、まったく脇役の乳母が子供をあやしながら歌う。「おまえの父さんは金あるし母さんは美人、泣くこたぁ何もないのに♪」。その逆説の原風景が夏のまぶしさの中で、さらに切なさを増すのです。
2番はやさしい、「大きな羽ひろげておまえが飛び立つまで、父さんと母さんはいつもそばにいて、守ってくれるよ♪」

名演はあげたらきりがない。有名なジャニス・ジョップリンを聴くと、ビリー・ホリデイを思い出すが、これのサックス版が僕の中にはあってアルバート・アイラーを聴くと、同じようにシドニー・ベシェを思い出してしまう。奇しくも’30年代と’60年代の演奏だ。どれも壮絶な名演奏で、これが「サマータイムの4壁」かな。
都会的なマイルス・デイビス(wuth ギル・エバンス)、包み込むようなエラ&ルイ、、お気に入りはオスカー・ピーターソンがクラヴィコードという古い楽器を弾いて、ギターのジョー・パスとデュオで吹きこんだ「Porgy & Bess」。







To Be Continued・・・・・

(とりあげてほしい曲などありましたらお知らせください)



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