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アテネ五輪代表メンバー考(1)

 アテネ五輪代表メンバーが発表された。選出されたメンバーは下記の15人(数字は背番号)。

投手:上野由岐子(#17)、坂井寛子(#21)、坂本直子(#34)、高山樹里(#18)
捕手:乾絵美(#23)、山路典子(#25)
内野手:伊藤良恵(#19)、宇津木麗華(#28)、佐藤理恵(#5)、内藤恵美(#4)、三科真澄(#3)
外野手:岩渕有美(#7)、斎藤春香(#26)、佐藤由希(#15)、山田恵里(#11)

 前回のシドニー大会時も思ったが、選手枠が高校野球なみの15人とは、余りに少な過ぎやしないだろうか。投手を4人選出すれば、残る野手11人のうち9人がスタメンとして、交代要員は2人しかいなくなる。これでは選手交代での監督の手腕も発揮しようがない。投手4人、他のポジションに2人ずつの、計20人を枠とするのが妥当な線ではないか。もちろん、少数精鋭で臨むチームがあっても構わない。

 前置きが長くなったが、今回は宇津木妙子代表監督のチーム構想を推察し、その方針に鑑みて、今回のメンバーが、その構想を実現するのにふさわしいものであるかを考察したい。
 代表発表の記者会見で、宇津木監督は、「足を使った選択に切り替えた。」と述べている。思えばシドニー五輪のメンバーで、俊足といえる選手は田本博子くらいだった。多くの団体球技で、日本代表チームは、「スピードがある」との評価を外国から受けることが多いが、シドニー当時の女子ソフトボールチームには当てはまらなかった。例えば、内野守備に問題を抱えるアメリカ相手には、スピードあふれる攻撃でかき回すのが有効だが、当時の日本はそれができるチームではなかった。
 その意味では、宇津木監督の方針には賛同できる。連携プレーの精度を高め、コンビネーションを熟成させるためにも、できればもう少し早い段階で切り替えてほしかったとは思うが。

 では、今回選ばれたメンバーは、その方針を実現することができるか。主に野手について考察してみる。

 方針転換が最も顕著に表れたのは、外野手であろう。斎藤春香を除けば、シドニーのメンバーは1人もいない。岩渕有美が前回の世界選手権に出場しているが、山田恵里、佐藤由希は世界大会初出場である(佐藤由は世界ジュニアの経験はあるが)。3人とも国内最速級の俊足を誇り、この3人の守る外野は広大な守備範囲を形成できる。ジャパンカップのときのように、1番山田、2番佐藤由、9番岩渕というオーダーを組めば、9,1,2番でかき回すこともできる。
 ならば、斎藤がメンバーに残っているのはなぜなのか。足は速くないし、ここ数年は守備に就いたこともない。勝負強い長距離打者も必要だろうが、それなら馬渕智子、田中幹子、新井直美などのリーグ本塁打王経験者も候補にあがる。スピード重視なら、比較的足もあって小技も使える馬渕のほうが適役だろう。馬渕も守備にやや不安があるが、DPで起用すればいい。いざとなったら守備もできるぶんだけ、斎藤より使い勝手がいいはずだ。

 内野手の選出で最も話題を呼んだのは、安藤美佐子の落選だろう。しかし筆者は、この人選を英断と見ている。
 確かに安藤の守備は、今でも日本のトップクラスである。捕球してから送球への、流れるような動作の速さと美しさは、他の選手にマネのできないものである。しかし安藤のそのような技術も、「打球が守備範囲内に飛んだ場合」という条件がつく。最近の安藤は守備範囲が狭くなり、ゴロで左右を抜かれる場面が目立つようになった。
 三科真澄の守備力は安藤と較べても遜色ないものだし、足も安藤よりある(安藤も決して鈍足ではないが)。正ショートは三科で問題ないだろう。

 捕手、投手についての見解は、次回で述べたいと思う。

(2004.05.19)

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