アテネ五輪代表メンバー考(2) 捕手については、不動の地位を築いている山路典子の選出は当然。しかし第2捕手には、有力だった吉田真由美が外れ、乾絵美が選ばれている。 乾といえば、昨年に代表候補に選ばれた際に、代表レベルの選手ではないとして、その選出を批判したことがある。その当時に較べれば、キャッチング技術も向上し、盗塁阻止率も上がって、守備に安定感が増した。送りバントを確実に決める技術も身につけたようだ。今、代表「候補」に選ばれたとしても異存はない。 しかしそれでも筆者は、乾より吉田を推す。理由は乾の「長打力はあるが鈍足」という攻撃面での特徴が、山路と似通っているからだ。それでいて、個々の技術のスケールは、山路より明らかに劣る。 だが吉田には、山路や乾よりはという意味でだが、俊足という武器がある。例えば山路がヒットで出塁したら、吉田を代走に送ることもできる。状況によっては、次の回からそのままマスクをかぶって、山路を休ませるという手もある。世界での経験こそ乏しいが、戸田中での3年以上の正捕手としての実績があるし、坂井寛子との相性もいい。 いくらスピード重視とはいえ、捕手まで足で選ぶ必要はないという声もあるだろう。しかし同じポジションに同じタイプの選手しかいないのでは、戦術の幅が狭くなってしまう。突出した実力の2選手がいれば別だが、そうでなければタイプの違う選手を用意して、戦術の選択肢を増やすべきだろう。 増淵の落選は致し方ない。シドニーでは日本快進撃の原動力となったが、その後の日本リーグでは目立った成績を収めていない。1部リーグでの通算防御率1.31は、上野の0.47、坂井の0.61、高山の0.66に比べるとかなり劣る。また悪いことに、オーバーハンドでの送球が不安定という、ソフトボールの投手にありがちな弱点を、増淵もまた抱えている。 ジュニアレベルの実績しかない坂本の選出は、異例の抜擢と言っていい。日本リーグでも開幕投手として起用されたものの、途中降板に追い込まれた。以後はもっぱら、指名打者または三塁手として出場している。投手としての能力なら、前述の増淵をはじめ、坂本より実績のある投手はいくらでもいる。それでもなぜ坂本なのか。 前回の冒頭でも述べたが、五輪の選手枠は15人と極めて少ない。したがって、一人で複数のポジションをこなせる、坂本のような選手は貴重な戦力だ。打てる投手といえば山口綾子(トヨタ自動車)もいるが、他にできるポジションが、層の厚い外野というのがネックになる。 だから選出の意図は理解できるのだが、坂本がそれに応えられる力量があるのかどうか。筆者は時期尚早だと思っている。坂本の個々の技術は、マルチ選手として大目に見ても、まだ代表レベルではない。「坂本のような選手」は必要だが、今の「坂本本人」は五輪の戦力として計算できない。 筆者は、投手は3人にして、野手をもう一人補強したほうがいいと考えている。アテネの暑い気候は気になるが、上野、坂井は自チームでも連投に慣れている。また5日目にギリシャという明らかな格下と対戦するので、そこで一息つくこともできる。 このように、言いたいことはいろいろあるが、とにかく金メダルを目指す15人は決まった。万人を納得させる選考などある訳はない。大会が開幕すれば、個々のメンバーへの思い入れは捨てて、日本代表「チーム」を応援していくつもりだ。 (2004.05.30) |