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アテネ敗因の検証(1)

 アトランタで4位となったチームを受け継ぎ、世界選手権・富士宮大会で3位、シドニー五輪、世界選手権・サスカトゥーン大会で2位となった宇津木ジャパン。アジア初制覇も成し遂げ、残る目標は、アテネ五輪でアメリカを倒しての金メダル獲得しかなかった。前回のシドニーとは異なり、当初から優勝候補との呼び声も高かった。
 しかし結果は、アメリカどころかオーストラリア、カナダにも敗れ、前回を下回る3位。内容に至っては、力強さも安定感も感じられない、優勝を目指すチームには程遠いものだった。
 2年前まではアメリカと世界の2強を形成していた全日本が、短期間のうちに何故こうも脆弱なチームになってしまったのか。

機動力ソフトへの転向

 周知の通り、今回の日本は、俊足の選手を選出して、機動力を駆使した攻撃を目指した。そのため、五輪経験のない岩渕有美、佐藤由希、山田恵里らの若手を主力として抜擢。この3人を8,9,1番に並べ、内野守備に弱点を抱えるアメリカをかき回すことを期待された。「俊足トリオ」として、マスコミの注目度も高かった。
 思えば、シドニーのメンバーで、足が速かったのは田本博子くらい。2年後の世界選手権でも、田本が岩渕に代わっただけだった。

技術・戦術の不足

 その「俊足トリオ」の、今大会での成績はどうだったか。
 山田は期待に応えた。大会序盤こそ不振だったが、後半に入って調子を上げ、最終的に打率.414と、全選手中2位の成績を挙げた。
 しかし岩渕、佐藤由は、それぞれ.208、.143と低迷。2人が塁に出て山田が帰すという、日本の目論見は実現できなかった。
 2人とも、打席で試みた打法は、すべてバントまたはスラップ。思い切って叩こうという姿勢は最後まで見られなかった。確かに彼女らの俊足を生かす打法ではあるが、守る側にすれば強打の可能性がないため、安心して前進守備を敷くことができる。実際、堅守のオーストラリア(エラー数は全チーム中で最少の3個)戦ではまったく通用せず、2試合で日本は自力で1点も奪えなかった。
 結局、俊足を3人並べたはいいが、どうやって塁に出るのかという技術・戦術を整備するには至らなかったということか。

 技術面で参考になるのは、米国の1番・ワトリーのプレーである。長打力はないが俊足という点で、山田より岩渕、佐藤由に近いが、塁に出るための技術は多彩である。スラップでも打球を単純に転がすのではなく、フワリとした打球で前進した野手の頭越えを狙うこともある(岩渕もイタリア戦で一度成功させたが)。逆に真下に叩きつけてバウンドを高くし、その間に一塁に達してしまうプレーもできる。

 また戦術面でいえば、岩渕、佐藤由のどちらかを2番に置いたほうが良かった。山田が塁上にいれば、相手バッテリーも走者を警戒するため、続く2番打者も攻めやすくなる。そして好調の伊藤良恵、山路典子につなげることも可能だった。

バントの多用

 バント三昧だったのは、岩渕、佐藤由に限らなかった。今大会の日本は、無死で走者が出たら、迷わず送りバントを試みた。これは、山路、宇津木麗華、斎藤春香といった主軸に対しても同じだった。守る側にとっては、走者を背負った状況で、一発長打を警戒すべき打者が、アウトカウントを確実に1つ増やしてくれるのだから、心理的に楽だっただろう。

 最も滑稽だったのは、オーストラリアとの3位決定戦での4回裏。山路を一塁に置いて、続く宇津木が送りバント。大会序盤は4番を務めていた選手にバントを命じるのも不可解なうえに、走者はチームで最も足の遅い山路。宇津木のバント自体は良かったが、山路の足ではいかんともしがたく、悠々二塁封殺。先制点の芽を自ら潰した。

(2004.08.29)

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