まずはこの番組の毎回共通のフォーマット部分をチェックしてみよう。これだけ個性的なのは新しいものを作っていきたいという監督ならびにスタッフの意識の表れだと思うが、それでいて嫌味も感じず統一感があるのはさすがである。 |
---|
オープニング |
---|
1話の最初のタイトルを見てOPがないとわかった時に、「あっ、これはうまいな」と感じた。この作品の原作は序盤で両想いとなる。しかしそれで作品は完結せず、むしろそこからが本題というかのように本編は続く。また両想いになるまでは二人だけの話だがそこからは登場人物も多い。当然作品としてはその辺も描くのであり、両想いなラブラブな部分と多くの人物をOPに出さなくてはならないわけで、その2点により序盤でOPを流さないのは正解だと思ったのである。そして4話の最後の両想いになるのだから、当然5話からOPが流されるのだと推察した。が、残念ながら5話でもOPはなかったのである。
結局6話よりOPは放送された。ご注意のテロップの後に前奏も無しにいきなり始まるというものである。 最初は歌のタイミングに合わせ、原作のカットに着色したものを表示していく。最後に雪野を中心にして全員集合したカットが引いていきタイトルとなる。この全員集合のカットは「何事にもめげない。常に元気よく」というこの番組を象徴しているようで清々しく、気に入っている。 そこからは、学校で、日常の中で、まだお互いを知らない雪野と有馬のカットが続く。少女漫画らしい線画と、実写の風景などを使用していわゆるアニメのOP調ではないが、この二人が確かに存在し、学校に行き生活しているということが伝わってくる。 そして雪野の十面相。素の彼女は表情と感情がともに豊かであることを示し、そして彼女は顔をあげる。このサビ直前の「タンタンタンタン」に合わせて雪野が顔を上げ、足を踏み出し、宙に舞い、カットが分かれるところは、その一歩を踏み出す勇気とその感覚を伝え、非常によいものとなっている。最後に12分割されたカットでは、出だしの全員集合のカットの12人全員が出揃い、雪野だけでなく皆が飛び立つこのOPのコンセプトといえるだろう。 そしてサビからは、月野&花野、ペロペロ、父&母、浅葉、つばさ、椿、亜弥&りかの順に大空をバックに現われる。つばさはミッフィーちゃんのような口になったり、椿はラッキーマンさながらのアクションを見せたりと、一人一人の個性のわかる動作をし奥へと流れていく。かなり奥にいって小さくなっても見えるのは面白く、デジタルのよさが出ているところだろう。 とりはもちろん雪野&有馬の二人が背中合わせで登場し、小指と小指の指きりでつながれたまま上昇していく。「二人なら、どこまでもいける」というメッセージをそのまま映像化したようで、清々しさとともにある種の爽快感さえある。 (まとめ) 庵野監督、並びにガイナックスがフルデジタルでOPを作るとは思わなかったので少々とまどったのだが、左右対照の雪野や、縮小されていくキャラなど、デジタルの利点をしっかりと使っているのはさすが。加えて『クレヨン王国』に代表される東映動画のように、あからさまに背景にキャラを「のせている」という感じがせずに、キャラと背景がたえず自然に合わさっているのも評価していいだろう。 デジタルであるということを差し引いても、既存のアニメのOPとは異なるタイプのものである。動きで見せるOPではなく、止め絵やちょっとした動きの「カットでみせる」OPといえる。それでも「少女漫画」「学校」「高校生」「飛翔」といったキーワード的なことは、しっかりと伝わってくる内容ではないだろうか。また、前半は動きが少ないからこそ、サビと最後の二人が上昇していくシーンが生きているように思う。 |
|
基本的にテレ東の6時半からの番組には番組予告がある。ご多分にもれずこの「カレカノ」も6時からの「カニパン」が終わった後に予告があるのだが、声優4人による実写(雪野、有馬、月野、花野担当の4人)。雪野役の榎本さんの「この後は彼氏彼女の事情!」に続けて「この後すぐ!」と4人揃えて叫ぶといった内容である。 実写ということで1話の直前に見た時は意表をつかれたが、この後のEDや次回予告でもわかるように、この作品のアニメの世界に固執しない、没頭しない姿勢は、ここからすでにスタートしているのである。 |
ポケモン事件以来、テレ東では必ず入れなくてはならない注意書き。本編の頭にテロップが流れ、うっとうしい場合もあったが、このカレカノではいきなり最初にテロップのみを見せることによってそれを回避しており、本編にかぶせたくないという制作側のこだわりがうかがえる。(『怪傑蒸気探偵団』でも同じような手法がとられているが、テロップのセンスはこちらが優る) このテロップは数秒ではじけ、代わりに音楽とともにタイトルがあらわれる。この音楽は夢のある可憐な曲で、この作品の出だしにふさわしい曲といえる。OPがない時の処理はこうであったが、OPが流されるようになるとテロップの段階で曲が流れるようになり、この曲は使われ続けることになり嬉しい。 | ||
2話より始まったこの前回までのあらすじ。こういったアバンタイトル的なものがあるのは昨今のアニメでは珍しく、一般層を意識しているようで好感が持てる。本編で雪野を支え、番組の息抜き的存在である月野と花野が本当に楽しそうに前回までの話を要約してくれる。 ここで大事なのは、この二人の語りを盛り上げるBGMである。何度か聞いただけで耳についてしまうこの音楽は実は旧『鉄人28号』(白黒作品)で使われていたものなのだ。(あらすじで流れた他、戦闘シーンでは歌にもなっていたメロディーだとか。近年の『FX』でも使われたいたとの事だが未確認である)なかなかマニアックな選曲であるが、知らない人にはこの作品のために作られたと思えるほどのマッチングであり、この曲を選んだセンスはさすがというほかない。 |
アイキャッチであるがAパートの終わりは番組のロゴが一面に並べられたものが、シャッターが開くかのように見えるものである。エヴァの時のように効果音はなしであり、番組の緊張感を維持するのに貢献しつつ、一区切りをつける内容となっている。 Bパートも同じような感じであるが、サブタイトルではACTだった表記を日本語の第〜幕とし、なんといっても別タイトルともいえる四字熟語が表示されるのが特徴である。エヴァの英文サブタイトルのように別の角度からや裏の意味を持たせるということではなく、その回のメインの事柄をかなりストレートに表わすものとなっている。四字熟語というのも学園もののこの作品にはマッチしており、言葉遊びを提供しながらも少女漫画の作風を乱すことはない。 | ||
エンディングはラブ&ポップさながらに無人の校舎の中を疾走する映像に乗せて、名曲「夢の中へ」が流れるというものであった。しかも毎度映像は違う。しかし実写のみという掟破りのものながら、不思議と違和感がない。無人の校舎はやはり学園時代を、当時の気分を思い起こさせるものなのだろうが、これがもし単なる校舎内の写真では面白くはない。校舎内を疾走する流れる映像だからこそ、その場の感覚を伝えるものとなっているのだろう。1、2話では最後に行き止まりに当たるのでそれが気になったのだが、3話では窓から外へ出る映像であり、4話では完全に屋外の映像と、番組の進行状況に照らし合わせているようで心憎い。(4話以降は特に場所を限定しないようだ。) もちろん「夢の中へ」を主役の雪野演ずる榎本さんが歌っているのも、実写と本人を合わせているという意味で効果を感じられる。4話で両想いになった直後に有馬役の鈴木さんとデュエットになるのも、この番組の恥ずかしい部分をストレートに描こうという姿勢を前面に出したアイデアの勝利といえるだろう。 |
エンディングに引き続き、次回予告も実写である。月野役の渡邊由紀さんと花野役の山本麻里安さんのお喋りという内容で、あらすじと同じくこの二人は本編に登場しながらもこの番組のインフォメーション的役割を任されている。(ほとんどストーリーに関与しないのもその理由であろう)結果的にかもしれないが、あらすじを含め「お姉ちゃんの運命やいかに!」が決まり文句になりつつある。 ここでEDと次回予告が実写である理由を考えてみたい。私が思うに虚構のアニメの世界、しかもかなり作為的な少女漫画の世界をアニメのままで閉じたくない。つまり「カレカノ」というアニメ番組で描くことを、その作品の中で完結させず、視聴者にも通じる部分を感じて欲しいからではないだろうか。(ちなみにEDが実写でなんとなく現実に意識が戻る感覚になるのは『ブレン』と似ている気もする)また、特に次回予告は一般へのアピールもいいだろうし、若者向けの作品作りを感じる。 |