ACT 5.0
日々の迷宮

原画

薄谷栄之 細木隆浩 西尾彰子 高津幸央
皆広一美 富樫博子 清島ゆう子 遠藤省二
坂田幸恵 林 隆文 布施木和伸

98年10月30日放送

脚  本:庵野秀明 作画監督:平岡正幸

絵コンテ:横田 和 演  出:笠井賢一
     

四字熟語のコーナー

せんけいばんきょく
千荊万棘

非常に多くの困難があること。困難なことのたとえ。「千」「万」は数が多いことを示す語、
荊」「棘」はともにいばらのことで、とげのある草木の総称。いばらが非常に多い意から。

会いたい。そばにいたい。

 めでたくカップルになった二人である。最初の有馬との「一緒にお弁当を食べよう」という回想では、前回までの彼女はどこへやら、かなりメロメロで甘えんぼ的になっていた。が、それ以上の進展もなくそれどころか体育祭の準備で全然会えないという状況からスタート。前半、宮沢自身は有馬探しに夢中で大人しめだが、その変わり準備であくせくする一般生徒達がコミカルにオーバーに描かれた。今までほとんど一般生徒がからんでこなかったが、こういうことで「学校だなぁ」という雰囲気を感じる。

 作画の関係もあるのだろうが、前回までのお姉さん的なきりっとした表情の雪野ではない。今回はギャグ的な等身で描かれることが多い。

 一とおりの修羅場が終わった後、「死んでしまうがね」と雪野がふらふらになっているところから、音楽も止み、人の声もしなくなって「放課後遅くの学校に一人」という雰囲気が十分伝わってくる。彼女は誰もいない教室の机に一人寝そべりうたた寝をする。もの足りない彼女はそのまま有馬の夢を見た。起きてぽかんとしたところから「たった二ヵ月でこんなに気持ちが変わるなんて」と涙を流すところは今回の大事なところであり、一人でいたことで大事な大切なことに気がついた、という描写となっている。ただ今までと違うのは、同じピアノ曲がかかりながらも、線画の少女漫画のような絵を使わなかったこと。アニメ絵でのみの表現だったことだ。今まで見てきた身としてなんとなくここの「有馬が愛しい」という気持ちが今一つなのはそのせいだろうか。「会いたい。一緒にいたい」とシルエットのみで涙ぐむシーンは、原作のままといえばそうだが的確な表現で、このセリフの感情の込め方もよかった。

 そして人ごみの中、ついに互いを見つけた二人。ここでこの回初めて線画の表現が使われる。けれどすぐに雪野はイヌ化してしまい、緊張感よりもほのぼののとした感覚がただよう。

 屋上に行った二人。雪野は心の風景の「ありま〜」と、本当に舞い上がっている。その方が教室での泣いたシーンと対照的になるものだ。

 有馬も会えなくて寂しかったわけだが、その時の描写があるわけではないので、ここの表情とセリフの言い回しから察するしかない。あまり切実めいたものは感じないが、恋に不器用な彼ゆえかもしれない。それゆえ久々に会えたことで思いがはじけて、雪野の頬にキスをしてしまったのかもしれない。

 キスの後の「ずっとずっと一緒にいたいね。君と」の際にかかる曲は非常に解放感のあるもので、両思いになった最初の回を占めるにふさわしい曲といえよう。

ずっとずっと、一緒にいたいね。君と

 


ACT 5.5
彼の野望

四字熟語のコーナー

こしたんたん
虎視耽耽

虎が鋭い目で獲物をねらっているさま。「耽耽」はにらむさま。成り行きを見守り、隙があれば相手につけ入ろうと、油断なくようすをうかがうさま。また、好機が来たら逃がさずにつかまえようと待ち構えている様子。

自分こそ有馬とつりあってるか考えれば?

 初の一話につき二本の構成。サブタイトルの話数に小数点が付いているのはこういうことだったのだ。

 女好きの美男子、浅葉秀明の登場の回である。彼はF組だが、彼の方から有馬に接近したのだろうか。

 正確には5.0からということになるだろうが、雪野の個人的な恋愛感情からの視点で描くことはもうないので、雪野はギャグタッチで非常に喜怒哀楽を激しく見せる。

 浅葉に声をかけた雪野は逆に「たいしたことないじゃん」と言われ関係は決裂に。1話以来、久々に彼女は自分にとって邪魔な人間に強烈な敵意を持つところを見せる。(ただ、有馬に「私って顔」と尋ねた後「かわいいよ」と応えるのはいく分早すぎる気がしたのだが)

 雪野と浅葉の小競り合いは、軽いコミカルであると同時に、二人が同レベルであることもよくわかる作りであった。人の物を勝手に飲み食いするとは凄いが、全て原作通りである。

 「ぴあ」らしきものを見ながら「一緒に映画を見にいかないか」と雪野を誘う有馬。おつきあいを始めたとはいえまだその程度の中であり、本当に準々に仲良くなっていく様を見せていく作品である。「初デート」と喜ぶ雪野も初々しい。

 喜ぶ雪野の前に浅葉が現れて、彼が女性好きなこと、「浅葉メリーランド」のために有馬を利用しようとしてることを語った。元々非現実的なアニメっぽい設定の彼であり、アニメでやることに不自然はないが、今までの雪野の恋心のような説得力はさすがにない。

 そして彼は雪野が優等生ぶって他人をだましていることを指摘した。雪野は「それはいつも胸にあったことだから」と言い返せなかった。あれだけ自分本位な彼女だが、優等生の仮面を被っていることに後ろめたさはあったのだ。「有馬とつりあってるか考えれば?」のセリフよりもその方がショックだったのだろう。

 すぐに有馬は浅葉の元へ行って彼に問いただした。このあたりの「僕とメリットなしでいてくれる〜」発言のシーンは原作通りなのだが、じっくり見せずにてきぱきと会話が進んだため、有馬の言葉の重み、それにはっとなる浅葉の心理が今一つ出なかったのではないだろうか。もちろんセリフを追っていけば感情はわかるのだけれども。

 初デートで一人待つ彼女。回りの人間が輪郭に一色のみで描かれているため、待ちぼうけの彼女がより目立つ。

 そこへ浅葉が現れ「すっぽかされたんだろ」発言に雪野がわめきだす。「夢の中へ」のアレンジも流れ始め、さっきまでの待ちぼうけの静けさとは対照的だ。

 有馬が到着し、落とそうとするパフォーマンスで彼は雪野へのわだかまりを無くしてみせた。なんとなくいい奴だと見せた後、その後の三人で弁当を食べるシーンでは、いつのまにか有馬に好意を見せる人間になっていた。

とにもかくにも新たな友達である。

俺、あんたのこと嫌いじゃないぜ

 

 

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