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追崎史敏 末富慎治 山口賢一 宮崎なぎさ | |
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98年11月20日放送 脚 本:庵野秀明 作画監督:平松禎史 絵コンテ:平松禎史 演 出:佐伯昭志 |
安らかでゆったりとして静かなこと。悟りの境地を得たように無欲で心騒ぐことなくゆったりと静かなさま。「安閑」「恬静」ともに、安らかで静かなさま。 |
のっけから雪野の目覚め、宮沢宅であり、妹達を起こすシーンなどいつものノリである。冒頭に有馬とのデートの回想があったが、これがよく見るとラブラブで面白い。写真ではなく、シーンで見たかったものだ。
彼女は有馬宅に出かける。「今日うち誰もいないから」という有馬のセリフを思い出して恥ずかしがるとこなど、彼女はテレ屋でかつ恋愛のことになると子供っぽい。そしてそういった見せ方になっている。有馬宅についた時もそれは同様だった。
浅葉がいなくなって二人きりになってからも、雪野はぎこちなくいつものパワフルさがない。彼女のナレーションにあるように、キスもまだあれから一度きりだそうだ。その辺は逆にいつもと変わりのない有馬の方に原因があるのだろう。
「かまってほしいの?」と有馬に聞かれ、こくんとうなずく雪野は二人きりになってから初めてちゃんとした等身の彼女だった。そんな彼女の首をしめ、くすぐり、かまってやる有馬だが、まずはそういう事だった。
「私の方が手のうちさらしているわ」という雪野。冷静な有馬が物足りないのか「きっと有馬はそれほど私のこと好きじゃないのよ」と自分から甘えて挑発してみせた。途端、「そんなことないからな」と自分から真剣になる有馬。6話で二人きりの時にかかったピアノ曲が流れ、これは二人の曲として定着してきた。
せまってくる雪野、壁にあてられた手に重なって浮かびあがる雪野など、有馬が彼女にせまっていることを伝える久々に緊張感のあるシーンであった。
いざキスという時は、今まで少女漫画のような線画は全て止め絵だったものを、なんとそれを積み重ねて動かしてのキスシーンとなっていた。ふつうのアニメのキスシーンと違ってはるかに精神的な意味でのふれあいを感じられるものとなっている。終わって離れる時にすぐに普通のアニメに戻るのも逆に線画のキスシーンを引き立たせるものとなっていた。
(しかし、セカンドキスという表現はかっこよすぎて何か間抜け)
有馬宅から帰宅の際には、ちゃんとした等身の雪野がシリアスに描かれ、今日あったことがプライベートなこととして振り返れるものになっていた。「恋が重さを増していく」というフレーズこそが、彼女の日常として語りたかったのだろう。
最後の余談「その後の宮沢雪野」は本当におまけであり、これがあることでこの話は宮沢家に住む彼女のお話として終えることとなる。
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美人の顔と桃の花。かつて美人と出会った場所に行っても、今はもう会えないという場合にいう言葉。また、内心で思いながら会うことのできない女性をいう。 |
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話数の小数点は1話より前の話をやるというこういう使い方もあった。今回は入学直後の有馬が雪野を意識するようになるのを描いたエピソードで、全編桜が舞う非常に美しい話である。原作では6話の次にくる話だが、同じくキスの次の話としてかここでの発表となる。6.0が半パートでできるか、8.0が一話分の話かという問題もあるが、二度のキスを体験し十分仲がよくなった上で、この話が来た方がいいと思われる。
桜並木に寝そべり、桜の額縁の囲まれた有馬からこの話は始まる。
入学直後であるが、すでになんとなくであるが有馬は宮沢を意識していた。化学室での会話の合間に宮沢を見る視点は、まさに男性の異性に対するそれである。今さら言うのはなんだが、「男性の純情やせつない気持ち」を描くのは少女漫画の方が分があり、それをしっかりと表現してきたこの番組は特に評価したい。
珍しく有馬がクラスの男子と会話するシーンが多いが、彼等は顔は描かれながらも一色塗りで作品中にでしゃばることはない。あくまでも見せたいのは有馬なのだ。
その彼はクラスメイトや先輩達と仲良くやりながらも、どこかもの足り無さを感じていた。優等生として振るまい、心からの友達を作ってこなかったのだ。「お前本当に楽しいのかよ」の後の「って」が文字のみでセリフがなかったのが効果的であった。
そんな有馬であるが女性からの告白は多かった。原作の漫画は読むしかないが、セリフとして「好き…」といった告白を聞かせられると説得力がある。「耳に届かない」という意味での最後のノイズはお見事。
誰も心に届かないということで、先程使われた有馬の日常シーンを撮影台ごと撮影するという演出がなされた。「作り物」という彼の疑問と認識を伝える斬新な処理だ。彼の手から桜の花びらがこぼれる映像と電線の切れた電柱も彼の心理を物語っている。
その彼は宮沢と二人きりで話すチャンスがあった。そこで改めて彼女の魅力に気付き衝撃をうける。強烈に興味を持つようになり、線画の彼女をバックに「彼女知りたい│」と追いかけるイメージシーンは実に恋に目覚めた男性らしいといえる。
その後有馬は「放課後桜並木で」というラブレターをもらった。前と同じ絵であるが前はモノクロに対しカラーとなった。
美しい桜並木。そこで彼が見たのは宮沢雪野だった。この出会いのシーンは非常に美しいものとなっており、「嬉しい!」という彼の心理もがぜん納得のいくものだった。セリフ回しも非常によい。
だがそれは勘違いだった。あきれて笑いだす彼に変化の兆しが見えるというものだろう。全て桜を背景に「彼女をつかまえたい。振り向いて欲しい。あのまっすぐな目をした女の子に」というシーンは恋する男性の感覚に満ちており、彼の視点からの映像表現として非常によいものに思う。
そして彼の周りをかたどっていた桜は舞って消える。この話の要所にある、桜のイメージシーンは別段意味のあるものでなく、あくまでイメージだとコンテを描いた佐伯氏は雑誌で語っている。そうであるのだろうが、全体を桜の雰囲気で包みこみ、印象としての役割を担っていると思う。何か意味を感じた人はそれはそれでいい。
最後にその後の宮沢との出会いを語り、占めで「いいと思うよ、うん」というセリフは原作にないものであるが、これがこの話の占めとして秀逸なものとなっている。特に「うん」のニュアンスは「これしかない!」という仕上がりである。
この話を見た後に、1話を見ると有馬の心理がまたよくわかる。結局彼は宮沢に自分から告白したわけだし、断わられてもCDを貸しにいったりとなんとか雪野に近づきたかったのだ。