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中山由美 末富真治 芳垣祐介 今野 幸 | |
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98年12月11日放送 脚 本:庵野秀明 作画監督:今石洋之 絵コンテ:伊藤尚住 演 出:安藤健 |
香や玉をいつくしむ。 |
この回はのっけの有馬が目覚めるシーンもそうだが、動くところは枚数を多くして非常になめらかに動くようになっている。逆に動かない所はとことん制止画で、なめらかな動きと止め絵だけの極端な作画の回である。おそらくはわざとであり、一種の実験なのだろう。
序盤、芝姫が雪野の胸にうずくまって有馬にあてつけるところから、非常に作画に頼ったギャグを久々に見せてくれる。ガイナックス内部制作による回だからだ。その直後の二人が一学期の出来事を振り返るくだりは、それを表現した絵が非常に面白い。原作では文章のみだったのに対し、こんな表現もありなのかと感心するとともに笑ってしまう。(「宮沢はあっさりぶち壊し、僕自身さえ知らなかった本当の僕を見つけ」のあたりが特に)
初めての友達もでき、すっかり舞い上がっている雪野であるが、有馬がインターハイに出るため当分会えないことを告げられるとさすがにショックであった。序盤の頃のようにピアノ曲とともに丁寧に見せるということもしないが、やはりその程度のショックだということだろう。ただ、クラス中の女子から無視されてもへこたれなかった彼女が、有馬に数週間会えないだけで落ち込むというのは認識した方がいいかもしれない。雪野にとって有馬はそれ程大きな存在になっていたということだ。
資料室で雑務を行う彼女に有馬はいつもと違う寂しさを見たようだった。そして彼女の姿をなめるように見ていく映像があってから、有馬は「宮沢を抱きしめたい」と申し出た。その時のやりとりはここまでの雰囲気と同じだったが、いざ抱きしめる時になると二人のピアノ曲が流れ、モノクロと線画の映像となる。ときおり挿入されるなめらかに揺れるカーテンが、この場の優しい雰囲気を引き立てている。
終わってみるといつもの雪野に戻り「かんどう」と興奮する。「帰ってきたらいっぱいしてあげる」という有馬に力んで「うん」と応えるのも当初からは考えられない進歩ぶりである。
さてこれで終わりかと思いきや、この後は浅葉ショーとなる。これでもかと書き込まれた浅葉の動きと体は、完全にお遊びとサービスによるものである。「雪野に悪い虫はつかないように」とは有馬思いの彼だが、珍しく反抗的なのは、やはり夏休みということでうかれているからだろうか。
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同じ気性のものは互いに自然に求め合い、寄り集まるようになるということ。 |
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よそいきの髪を結った雪野が登場し、椿達四人との待ち合わせで始まる。あの井沢真秀を雪野が連れてきて、椿に殴られたりするが、その際など結構お遊び的やパロディ的な動きが多い。恋愛面を重視するでもなく、完全なバラエティーの回をガイナックス内部だけで作るとこうなるといういい例の回といえる。とにもかくにも真秀の肩を叩いて「友情!」と雪野が叫んだように、友情に関しての話である。
そして亜弥のたばこをやめさせたり、かわいい芝姫に抱きついたりと、序盤からとにかく雪野のテンションは高い。
カラオケでの「妖怪人間ベム」や芝姫をからかうだしにした「トトロ」など他作品を扱い、ガイナックスらしいパロディとも思えるがこれ全て原作にある通りである。ただ、本当にトトロを描いていた人に原画を頼んだりするなど、やる時は徹底しているのがガイナックスらしいといえる。
そんな和気あいあいのムードは喫茶店でも続き、芝姫への嫌がらせと切れる芝姫により、ようやく雪野は四人の相関関係が見えてきた。
ここでようやく高いテンションとギャグタッチが終わり、椿達とじっくり会話をするシーンとなる。椿と芝姫、りかと亜弥の慣れ染めが語られ、どちらもどこかギャグめいてはいるが、その中に「他人に心を開かない芝姫」、「自分本位なことを自覚してるが直せない亜弥」と、どこか一人の人間の本質めいたことがあるので、まんざら作り事という感じではない。またこれらの回想の随所にアニメならではのおかしい表現も見られた。
亜弥が小説を執筆していることを知り、雪野は素直に驚いた。亜弥は皆何か特技を持っていることをいうが、これにも雪野は「私なんて勉強しか」と尊敬するのだった。
有馬と出会ったことで恋を知り、優等生をやめることにした。では、その後に彼女が何を目標にするのか何も触れられずにきたが、友情を知り、そして「自分に何もないことを改めて再確認する」回でもあった。
三人と別れてからの、ジャージ姿で机に座る雪野の斜め前を、ボールを持った椿達が進むイメージカットは、コメディー的でありながら彼女の置いていかれたという劣等感を表わす秀逸なものといえる。真秀もよくわかっているようで、「ひとを測るモノサシは勉強だけじゃないってことに気がついた」「それにあんたは一人じゃない」のセリフは非常にいいものであり、友達がいなかった者同士の心が通じたシーンとなっている。先ほどと対照的に、「友達がいる…」というセリフとともに出る、雪野のいなくなった机のイメージカットもまたこの一連のシーンを納得させるものであった。
最後に今まで喋らなかった腹いせのように、芝姫が自分の家庭の事情を当たり散らす。「泊めて」という芝姫に、真秀も誘う雪野と、なんで私がという真秀が入り乱れての困惑した状態のまま、次回へと続くこととなる。