第4話

輝きの瞬間

原画

増永計介 馬越嘉彦 和田伸一 内田 考

志村 泉 松阪定俊 和田高明 広江克己

99年4月25日放送 (TV埼玉、千葉TV)

脚  本:山口 宏 作画監督:千羽由利子

絵コンテ:高本宣弘 演  出:深沢幸司

(アイキャッチBGM)

Aパート直後 

 Bパート直前

あかり

 

 あたしも全力でがんばります!

・アバンタイトル

 校門で精力的に「よろしくお願いします」とチラシを配る葵。それは「格闘技同好会」への勧誘であるが、2学期の頭にそうした勧誘活動をするのも不自然ではある。が、これはゲームのストーリーの名残なので、葵はつい最近空手をやめてエクストリームに転向したと解釈しておこう。

・Aパート

 葵の情熱におされた形で彼女に付き合うこととなる浩之。Aパートはこの二人の練習シーンでほぼ占められ、葵の意気込みが語られる。
そんな二人の前に坂下先輩(以下好恵)と綾香の二人が現れたところで終了。

・Bパート

 葵は元々、好恵の下で共に空手をやっていたのだが、総合体術であるエクストリームに魅せられて格闘技同好会を作ろうとした。好恵のエクストリームを認めない発言から、葵と好恵が勝負をすることに。この好恵の発言には、葵が自分の元を去ったことに対する、嫉妬のようなものが含まれているかもしれない。

 試合をすることになった葵を、あかりと志保も手助けして応援することになり、この試合を同好会の宣伝として利用しようと持ちかける。ここの二人の宣伝活動と練習シーンは、曲だけが流れる中シーンを見せていく手法で、時間経過を感じさせてよい。
 だが、当の葵は「好恵には勝てない」と意気消沈していた。そんな彼女を浩之は「葵ちゃんらしく戦う。それが一番大事だと思うぜ」と励ます。単にベストを尽くせではなく、葵の意気込みを見せればいいということだろう。それだけ浩之は彼女の情熱を買ったということだ。そして、試合直前にも震える葵を同様のセリフで励ましてやるのだった。

 いよいよ試合となる。練習の成果を見せようとか果敢に攻めていく葵。その姿に好恵は驚くが、それは葵の力量が上がったことに対してだけではない。ここまで真剣に向かってくる、それほどエクストリームを認めてほしい、つまり本気でやりたいと思っているのか。また、先輩である自分にまともに向かってこれるほど、あの葵の意思が強くなったのか。好恵はきっとこういったことを感じたであろう。
 だからといって好恵は手を抜くこともなく、結局彼女が実力の違いを見せて勝つことになる。葵はくやしがるでもなく、素直に力量の差を認め、先輩相手に全力を出しきれたことに満足して、自分の成長を実感できた。けれども好恵はエクストリームをやめろというでもなく、「がんばれよ」と葵を認めてやるのだった。それは観客も同様で、葵に、格闘技に興味を持ってくれたようだ。
あかりの「頑張ってる人の気持ちは、必ず伝わるんだ」というセリフそのままのラストである。

・総評

 1話以来のキャラデザの千羽さん作監の回であり、文句のつけようがない作画である。また格闘技に関する話のためそういうシーンがあるが、前半の練習シーンそして最後の試合と、格闘の動きという難しいものを、何らごまかすこともなく正々堂々とありのままに描いた作画は見事としかいいようがない。

 まったく同じというわけではないが、基本的にゲーム版の流れに沿ったストーリーである。葵というメインとなるゲストキャラだけでなく、坂下先輩、綾香といったわき役も登場するが、たった一話の中でそれぞれの人物像や関係が理解できるものであった。その点は、特に評価したい。

 前回の3話と同じく、浩之がゲストの女の子を好奇心の延長で面倒見てやるという構図は一緒であるが、浩之の関与の度合も、あかりの手助けも、より明確で判りやすいものであった。最後に二人で葵の健闘を賛え、これからの格闘技同好会に希望を見い出すのがその際たるものだが、前回からの「二人でゲストをサポートする」ということと二人の結び付きを示すシーンでもあった。

 この回ではなんといっても、葵の格闘技に対する情熱が印象に残ることだろう。出だしから勧誘に励んだりと積極的な姿勢を見せていたが、ただやみくもに格闘について訴えるなど、いかんせんその意気込みのあまり空回りしてしまっていたかもしれない。たまたま通りがかった浩之が、好奇心とおせっかいと面倒見の良さで葵に付き合ってやるわけだが、彼が葵の情熱を認め、葵もそのことで自信を持てたことで頑張れたのだろう。なんとかしようとするあまり、周りが見えなくなって全て自分一人でしようとしていたが、浩之達と関わることによって、何も全部が全部自分一人ですることはないこと、そして誰か理解してくれる人のいることの大切さを知り、自らを顧みることができた。
元々やればできる子を、浩之がほんの少し後押しすることで飛び立てた、そんな話であった。

 

 

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