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中村圭三 吉田朱美 渡辺純子 愛根須風神 ジェック・イー | ||||
99年5月9日放送 (TV埼玉、千葉TV) 脚 本:山口 宏 作画監督:小林勝利 絵コンテ:横田 和 演 出:大町 繁 |
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・アバンタイトル
新聞配達中の理緒が、浩之の家の前で犬にじゃれられている。浩之と目を合わせた理緒は顔を赤らめるが、最初これは直前に尻餅をついたのを見れらたことによるものだと思った。しかし、どうやら理緒の個人的感情に原因があったようである。
・Aパート
その日、2度3度と浩之は理緒と顔を合わせる。その態度から理緒は浩之に好意を持っているようだ。その後、彼女がバスケをする浩之を見るシーンなどでそれがはっきりするし、その時の仕草や表情など実に細かくよくできている。
たまたま浩之と一緒に帰ることのできた理緒。今度弟へのプレゼントの買い物に浩之が付き合ってくれることになる。舞い上がる彼女だが、浩之に声をかけようとしてあかりと親しげに話す姿を目撃するのだった。
・Bパート
日曜日、浩之とともに買い物をする理緒。やはり嬉しそうである。
しかし用はほぼ済んだ後、浩之があかりのためにくまのキーホルダーを買うのを目のあたりにした。直後に二人で喫茶店で一息つくのだが、ここではなんとか浩之に近づきたいという理緒の心理が、そのセリフの端々から感じられる。その会話の末に理緒はキーホルダーのことを質問する。明確にあかりのことを語る浩之に理緒はいたたまれない表情になって、「あの…」と切り出そうとするが、「行こうか」と打ち切られてしまう。これは浩之が理緒の気持ちを理解してさえぎったのではなく、場の雰囲気に耐えられなくなったか、単なる偶然であろう。
その帰りの電車の中、理緒は今までのことに思いふける。彼女の気持ちを盛り上げる曲が流れながら、沈痛な表情と回想シーンが交互に映る演出は彼女の心理を的確に表現しており、この話でもっとも印象に残るシーンとなっているだろう。そしてここから河原のシーンを経て、彼女は自分の気持ちに整理をつけたわけである。
ラストでは「藤田くん」と、なんら未練を感じさせない理緒の様子が描かれ、「それじゃ」という言葉とともに彼女は普通の同級生に戻ったのであった。
・総評
理緒の淡い恋心を描いた回である。はしばしにそれとわかる彼女の仕草や表情が綿密に描かれ、そうした恋愛面を扱った映像としてもレベルが高い。
この理緒というキャラはゲームにおいては隠れキャラであり、貧乏でドジというかなりディフォルメされた設定である。しかしこのアニメ版では新聞配達をしているという点では共通するものの、弟のプレゼントを買ってやったりとさして貧乏という描写はない。ドジに関してもひとまず許容範囲のものである。また、ストーリーにしても弟のプレゼントを一緒に買いに行くというのはあるにしても、最初から理緒が浩之に好意を抱いているわけではない。つまりこの回は、キャラの基本設定とストーリーをゲームから少々流用しながらも、理緒の恋心をテーマにゼロから出来あがったものである。それでいながら、見事に少女漫画ともいえる内容をドキュメントタッチの映像作品に仕上げており、非常に高く評価したい回である。
この回での理緒の浩之への気持ちがある種の恋愛感情だということは、誰の目にも明らかである。それならば、この回のサブタイトルが「恋」や「片思い」でも構わないのではないかと言える。事実、仮のサブタイトルは「思い届かず」だったそうである。ではなぜこの回の正式なサブタイトルが「憧れ」なのか。
この「憧れ」が理緒の感情についてであることは言うまでもない。当然ながら、浩之やあかりが理緒の感情を指して「憧れ」だと思っているはずはないだろう。それについて「憧れだ」と言える、思える人間は、理緒自身しかありえないのである。しかし劇中でこの単語は一切出てこないし、理緒の感情の描き方にしても「憧れ的」な感じではない。
思うに、理緒が思いが届かないと浩之への気持ちをふっきる際、自分の気持ちについて、
「あれは恋愛感情ではなく【憧れ】だった」と言い聞かせたのではないだろうか。恋愛感情ならば失恋だが、単に憧れていただけなら傷つかずにすむ。彼女は今までの自分の感情を「憧れ」と総括し、そうすることで未練を断ち切ったように見える。
この回ではサブタイトルで「憧れ」と提示した上で、理緒という女の子の淡い恋心とそれをふっきるまでを描いた。つまりその間の感情をひっくるめて「憧れでした」と視聴者に伝えているわけであり、そう思うことでふっきれたんだよと彼女の気持ちを代弁するような役割を果たしたといえる。
仮のサブタイである「思い届かず」ではきっと失恋話として印象に残ったことだろうが、「憧れ」というサブタイトルのおかげで彼女のふっきることができたという部分が強調され、前向きな印象を持つことができる。そういった点で、とても気に入っているし高く評価しているサブタイトルである。