雑誌インタビュー2
月刊アニメージュ 8月号
監督:高橋ナオヒト インタビュー
当初は、よくある青春もの、ある種、自分の高校時代に対するノスタルジーにすればいいのかなと考えていました。ところが、物語が完結した今、このアニメーションはラブコメでも美少女ものでもない、極めて珍しい作品になったと思います。従来のラブコメとはパターンが違い、美少女ものというジャンルにも当てはまらない。ドラマらしいドラマもなく、淡々とキャラクターの日常が綴られていくアニメーション。それを最後までやり切れたのは、大変幸せなことだと思います。
ただ、従来のパターンが当てはまらないというのは、アニメーションを作るうえで苦労したことのひとつでした。スタッフに『To Heart』はこういう作品なんだと説明しても、なかなか理解してもらえない。もちろん僕自身も、それがわかるまでに時間が掛かっているんですが、それをさらにほかのスタッフに伝えるというのは、結構しんどかったです。
その代わり、一度その世界観をつかんでしまえば、自然に物語を進めることができました。その象徴といえるのがラストシーンです。イブの夜、降ってくる雪を見上げながら、あかりがマフラーをプレゼントして、浩之の首に巻いてあげる。いいムードになったから、じゃ、キスでもさせようかなあと、最初は本気でそう思ってました。でも話をずうっと作ってきて、13話まで来ると、キスさせられなくなっていた。それは、あそこでキスすることが、あのふたりにとって、別に幸せでも何でもないとわかったからなんです。浩之とあかりは仲がいいとか悪いとかを越えた存在で、一緒にいるのが当たり前。お互いに焦って何をするということではなく、今ある自分たち、今ある相手との関係こそ、一番大切にしなければいけない。
それが一番幸せなんだというキャラクターの主張が聞こえてきたんです。そして、それこそが僕自身の感じた『To Heart』の結末なんです。
月刊アニメージュ 8月号
キャラクターデザイン・総作画監督:千羽由利子 インタビュー
アニメ版『To Heart』のキャラクターデザインをする時、一番最初に気にかけたのは、原作ゲームファンの人たちに違和感を持たせないようにするという点でした。特に性格的なところが変わらないように、原作ゲームでキャラクターが持っていた性格、人間性が変わらないように……と。誇張してもいけないし、足りなくてもいけない。できるだけ誠実に描こうと思いました。
その性格的な部分を絵で表わす時に注意しなければならないのは表情です。例えば、あかりはいつもニコニコしていて、あまり物事に動揺しない人ですよね。言うなれば、お母さん的な性格の人。だから、どんなことでもニコニコと受け止めていられるという笑い方をさせることが大切なんです。
とはいえ、『To Heart』の女の子は、単純に「こういう子」と言えないんですよね。例えば、葵は格闘技をやっているから、すごく強い子なのかというと、そうではない。「自信はないんですけど頑張ります」という感じで、「これぞまさしく格闘技少女」という子ではない。色々な面を持っている。でも、それというのは「普通の人間」にしてみれば、当たり前のことなんですよね。
だからこそ、やはり誠実に、ちゃんと生きている女の子を描こうと努めました。キャラクターとしてではなくて、人間として見た時に、特に女の子の目から見た時に「いい子」だと思って下さったら、うれしいなあと思います。
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