パンフレット 



入場の際に無料でもらえたパンフレット、これが実に良くできている代物であった。

本文30ページのオフセット印刷で、表紙はスミ一色ながらもPP加工であり、中身もDTPを駆使してしっかり作ってある。表紙は講演会のタイトルと主催の名前、裏表紙はマサルさんの最初の「批評は断わる!」の監督の絵とWALTのロゴのみで、こうした殺風景ともいえるシンプルな表紙が逆に飾らない印象を受けて良い。ちなみに私と同じ、印刷所はサンライズパブリケーションなので、馴染みの印刷と紙である。

中身についても、肝心の大地監督が直筆でQ&Aに答えたり、過去の作品にコメントしたりしており、他にゲスト原稿があったりと、学生主催のイベントとは思えない内容である。そのゲスト陣が強烈で、麻生かほ里、石田敦子、小花美穂、高橋良輔、むっちりむうにい、安原麗子、吉松孝博、渡辺はじめ、というどなたも大地さんにゆかりのある豪華な顔ぶれ。(あとは桜井弘明、佐藤竜雄、田中一也といった人達がいれば完璧であろう)おそらくは大地さんが率先してのパンフ作りのため、こうしたことが可能だったのだろう。

それ以外に密かに豪華で不思議なのが、大地作品の挿絵のイラストを描いた方々で、位相同爆(マサルさん)、OGAI(おじゃる丸)、高雄右京(りりか)、ぢたま某(こどちゃ)、へっぽこくん(妖精姫レーン)、ホルモン恋次郎(浦安)、MARCYどっく(今僕)、みら〜すて〜じ(十兵衛ちゃん)、といった同人作家ばかりで、どういった経緯で挿絵を描いたのか気になるところである。この講演会の宣伝ポスターがやたら秋葉原に貼られていたことや、パンフの最後にK-BOOKSとD-カルトと虎の穴の広告が載っていることと何か関係があるのだろうか? ちなみに何故か私が好きで同人誌を買う作家が多いのだが、それぞれ何というサークルかはここではふれないことにする。

初見で一番笑ったのが、Q&Aの「ところでレーンの3巻は?」というもの。これに対して「出ないと思う。文句とお問い合わせはKSSに…」と監督は返答しており、さらに笑う。個人的には残念だが、ま、しょうがないでしょう。それよりもレーンはサントラ出して下さい。いや、マジで。(サントラ希望OVAのNo.1なので)

先程は挿絵について述べたが、各大地作品に対する監督のコメントが実に有意義なものばかり。

・りりりについて
「初監督というハンディが見えていてツラいものも多いが、逆にこの作品を越えるフィルムはもう二度と出来ないと思うくらいの情熱も見える」

・レーンについて
「アイディア、コンテ、それからすみずみの動きまで全て自分でラフを入れたおそらく最後の仕事だろう。(中略)この作品を越えるギャグアニメは他にないと思ってる」

・マサルさんについて
「はまった! 作りながらはまった!(中略)この作品のアニメ化はこの大地以外には考えられん。北野武じゃ無理だ」

・おじゃる丸について
「今一番求められているアニメのような気がする。(中略)こどもに迎合しきらないで作る、こどものためのアニメーションを目指す」

などなど、なかなかアニメ誌では読めないような、強気で本音の発言が貴重である。
実は『今僕』についてのコメントが一番気にいったし嬉しかったのだが、これは別の場所で使わせてもらうことにする。


パンフ内の高橋良輔氏のゲスト文章と、高橋氏と吉松氏への大地監督のコメントから、また大地監督の新作が1月から新たに始まることがわかった。

『風まかせ月影蘭』というのがそのタイトルで、このパンフからは高橋良輔氏が脚本を担当するということがわかる。名前からしてチャンバラ物のようだが、はっきりとはまだ判らない。(ちなみに今月の12月号のアニメに情報が掲載されている)
しかしこれで大地作品は今年三作目。完全オリジナル作品を1年間(4月をスタートとして)で三つもやるとは脅威的な仕事量である。ただ、現在『今僕』を楽しみに見ている身としては、この作品に全力を尽くしてくれると思っていたので、後に別の作品が控えているというのは若干残念なのではあるが。

講演会の中身、意義等にはまったく振れずに堅苦しいものにせず、来てくれた人に大地丙太郎氏とその作品について知ってほしいという姿勢のパンフだと感じた。一人のクリエイターを持ち上げた際に「これの良さがわからなきゃ駄目だ」といった雰囲気で閉じ篭らずに、皆にその良さを伝えようという態度こそが大事なのであり、そういった姿勢であることは多いに評価したい。講演会の中身、意義については講演を見ればわかるはずであり、まずは作品や人物を知ってもらうことからだ。そういう意味では事前に読むだけでなく、終わってから自宅で読むこともできる優秀なパンフであろう。

 


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