プロジェクト X

レオナルドと男達の露天風呂大作戦

♪♪♪風の中のすばる
       砂の中の銀河
    みんな何処へ行った 見送られることもなく
        草原のペガサス
    街角のヴィーナス
        みんな何処へ行った 見守られることもなく
       地上にある星を誰も覚えていない
  人は空ばかり見てる
     つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を
        つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう♪♪
中島みゆき
     

人類の歴史と文明を劇的に変えたのは「プロジェクト」である。
「プロジェクトX」は、熱い情熱を抱き、使命感に燃えて、超低予算の画期的な事業を実現させてきた「レオナルド・ダ・オンチ」を主人公とする「変人と仲間たちの知られざる物語」である。
 バブル崩壊後の不景気の中でスタートした、わが旧友、長尾氏のペンション「長さんの工房」、これを成功に導くには露天風呂しかない、日本人の底力を見せる巨弱プロジェクト…。
戦後、日本人は英知を駆使し、個人の力量 を“チームワーク”という形で開花させてきた。戦後日本のエポックメイキングな出来事の舞台裏には、いったいどのような人々がいたのか。成功の陰にはどのようなドラマがあり、数々の障害はいかなる秘策で乗り越えられたのだろうか。
 このページでは、男たちの「貧困の中での挑戦と友情の物語」を描くことで、今、再び、新たなチャレンジを迫られている21世紀の日本人に向け「挑戦への勇気」を伝えたいと考えている。

(http://www.nhk.or.jp/projectx/projectx/projectx_top.htm)より抜粋編集

ことの始まり

所は伊豆半島、熱川から車で30分ほどかけて登った山の上、南極から流れてきたという伊豆半島はほとんど平地は無く、海からいきなり登りが始まり、まるで崖っぷちにペンションや別荘が点々と散在する。
我が愛車VWバナゴン走行距離150000kmの老体の身には、今年の暑さではとても一気には上れない、途中で一休みしてあえぎあえぎ登ってきた

 来る度に学生時代からの山中間「長さん」のペンション経営の難しさを聞かされる。何とかしなければ・・・んんんん・・・・・ヨシ、ヤッパ露天風呂大作戦!これっきゃない。レオナルドは秘策を練り始める。

 マーフィーは潜在意識の強さを説いているが、決してあきらめぬ熱意があればチャンスはあるもの。
6月某実ついにチャンス到来、わが家の隣の家が解体され新築する事になった。早速、長さんに電話して露天風呂作戦の最終決断を確認。
 こうして総工費30、000円の露天風呂大作戦の火蓋は切って落とされた。

着工までのドラマ


我が家の隣のOさん宅のお風呂は、まだ3年ほど前に取り付けたばかりのピカピカ。もったいない、さてレオナルドの手にかかれば?



無事に取り外し、我が家の庭で年甲斐もなく、ピースなどする55歳のレオナルドであった。そこには55年の歳月は無く、竹とんぼを作って満足していた、あの少年の頃の姿に似たものがあった。


7月7日
風呂桶を「長さんの工房」へ運び、早速、お湯を入れて気分を味あう。
レオナルドはテラスへの設置を勧めるが、長さんは暴風対策と室内からの景観が悪くなることを理由に庭への設置を希望する。もう一個、風呂桶を探すことを約束して帰る。

7月某日
レオナルドは再びテラスへの設置を、図を書いて説くが、よい辺事もらえず、テラス断念

7月某日
この前より町中を車で走るたび、きょろきょろと探していたもう一個の風呂桶が見つかり、電話で話したところ快く貰い受けられる。レオナルドは、ほったらかしにされた風呂桶の中の空き缶やごみを拾い出しながら「何で俺がこんなことを」と嘆くが、おっととそこは挑戦者、がまんがまん。

7月某日
近くのホームセンターで風呂桶の穴をふさぐ器具が見つかる、一個1560円・・・んんん・・・・3個で4680円・・・・・・総予算の6分の1、これはもったいないと、その場はあきらめる。

7月某日
別のホームセンターで風呂桶の穴をふさぐ器具が一個1280円んん安い!、しかし3個で3840円、総予算の8分の1・・・・・これもあきらめる、挑戦者はあくまでも挑戦する、会社でステンレスの板を丸く切りネジでとめる作戦をとる。

7月某日
近くの駐車場で家の解体材を積んだトラック発見、手頃な戸板発見!知り合いだったので早速2枚貰い受ける。

7月某日
工事をやるには人夫が必要、この炎天下で手伝ってくれるのは学生時代からの山仲間しかいない、K氏に電話、快く引き受けてくれる。S氏は態度不明。


いよいよ決行
7月20日 
前日、すべての材料を買い込み、床に入るが、あれやこれやと考えると寝付かれず、おまけにいよいよ工事開始の朝は4時頃から目がさめる、まるで修学旅行の朝のように・・・・、挑戦者の武者震いか、えいっと5時に起きる
どうしても気になっていた、風呂桶の周りの断熱材を確保しようと、近くのごみ捨て場をあさって走り回る。しかしマンションの前で電気製品のクッション材らしきスチロールが一個確保されたのみであった。
家に帰り家内に話すと、「あれはスーパーでまとめているのよ」一笑、英知を駆使する挑戦者にしてはお粗末と、反省する。

K氏と二人でスコップ作業をする覚悟でいたが、途中から長さんの所に電話すると、S氏がトラックにパワーショベルを積んで友達連れて夕べから来て待っていると聞く、あまりのうれしさにレオナルド ウルウル
    

途中で積んだK氏100k、セメント120k、砂利120k、その他横浜市の粗大ゴミ各種100k、合計440kを背負わされた我が愛馬VWバナゴンキャンパーは案の定、「長さんの工房」目前の南極の氷山のの様な上り坂でストライキ。先に着いているS氏に、とぎれとぎれの携帯で救援を依頼
山の上とは言え、真夏の日差しで照り付けられたコンクリートは熱い、日陰を探して二人ひっくり返って入道雲を眺めながら待っているとまもなく、坂の上からカリカリカリとディーゼルの音、来た!何とも頼もしい。カックイイ。
レオナルドは少年の頃に南極第一次越冬隊を迎えに来た宗谷丸が氷に閉ざされ動けなくなり、ソ連のオビ号に助けられた、あの記録映画の劇的シーンを思い出す。なんとドラマチックなことか。


こうして男達の挑戦は始まった、大宮で造園業を営むS氏のパワーショベルの威力には脱帽!
あぜんと見守るK氏であった


電気鋸を使うのは初めて、チエンソー初めて、ノミに喰われたことはあるがノミで穴をあけたことはないと言う K氏も奮闘、意外な才能があることがわかる、やはり挑戦だ、挑戦だ!


小錦とまでは行かないが、体格風貌とも小錦の弟かな、と思いたくなるS氏の友人A氏、体に似合わず優しさとデリカシーの持ち主


日曜大工を通り越し月〜金大工、いや、素人(白)でもなく、玄人(黒)でもなく、グレート(灰)のレオナルドはもちろん総監督


午後2時から始めた工事もパワーショベルの活躍で夜には目隠しは無いものの入浴OKとなる、もちろんこのときのビールは最高、順調に進む工事に男達の気運は最高潮となる。
奇跡的かこの日は宿も満室、お客さんに話したら早速半数の方が作りかけの露天風呂を味会う。


うらばなし
最後まで小屋用の丸太が入手出来なかった。オーナーの長さんに丸太を山から探して来るよう依頼していたが、腐ってボコボコの丸太を2〜3本ころがしてある、「もう〜〜っ、ナンバショットカ  コン バカタレガ〜」と怒鳴りたくなるが、降りかかる傷害を乗り越えねばならない挑戦者!じっとこらえる 一時が万事こうなのが長さんなのである。
しかし頼もしき我が山中間、夕食後しばらく、いないと思いきや立派な檜丸太を車に積んで夜道をコソコソ帰って来るではないか。ドーピングくささもあるが若いころから酒の力を借りないと悪いことが出来ない、愛すべき善人の男達である。

ついに完成


左より長さん、レオナルド、K氏、一大プロジェクトを成し終えた男の顔は自信と満足感に満ちあふれていた。


かくして横浜の大型ゴミは伊豆の山で立派な露天風呂に変身。
K氏が丸太をノミでくりぬき取り付けた、唯一新品の蛇口がにくいほど雰囲気をかもし出している。



                 (左側が川端康成の踊り子で有名な天城峠)

伊豆の山々を眺めながら満天の星を見上げると、とてつもなく大きい大自然の中で人間の小ささに気がつく、しかし、その小さい人間が果敢に困難に挑戦する姿は美しくまた、たくましく、それは大自然にも劣らない大きさがある。

「貧困の中での挑戦と友情の物語」
今、再び、新たなチャレンジを迫られている21世紀の日本人に向け「挑戦への勇気」を与えることだろう 

♪♪語り継ぐ人もなく
吹きすさぶ風の中へ
紛れ散らばる星の名は
忘れられても
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない♪♪



それでは中島みゆきのエンディングテーマに乗せて今回のプロジェクトの総清算をしてみょう

ふりかえって
振り返ってみると長さんがペンションを始めた頃、業者に頼むと300万かかると言われたから100万で出来れば頼むよ、などと豪語していたのを思い出す。総予算3万円を目標に始めたこの巨弱プロジェクト、精算すると27、007円であった。長さんから27、010円もらったので差し引き3円の儲けとなる。


なお、ご興味の方はぜひ一度おとづれて見てください。気のいい長さんが美味しいコーヒーを入れて待っています

   「長さんの工房」へ     レオナルドのスケッチ館へ