今年、直木賞を受賞した宮部みゆき氏の『理由』を読んだ。宮部氏の作品を読むのは『魔術はささやく』
に続き2作目。
『理由』は、1996年〜1997年まで朝日新聞の夕刊に連載され、昨年単行本となった。
私は小説はほとんど文庫で読むので、今ベストセラーの本を読む事は珍しい。
この本は職場の後輩からもらった、持つべき者は良き後輩である。。。(笑)
『理由』は、長編ミステリーとされているが、『魔術はささやく』と同様、単なるミステリー物で終わ
っていないところがすごい。現代社会の影の部分の問題点をあらわにしている。
しっかりとしたテーマを持っており、他によくある多くのミステリー(推理小説)とは、一線を画して
いると言えるだろう。
とかく推理小説は「こんな事あるわけないじゃないかぁ」とか「こんなに列車の中で殺人事件ばっかり
発生するわけないだろう」とか思うものである。
まぁ、それでも読んで面白ければ良く、文学的な物を求めるわけではないので、娯楽と考えれば、それ
はそれで存在価値があり、批判するのはナンセンスというものである。
私だって読むし、読者がたくさんいるから、そういう本は売れているだろうしね。
『理由』においても、緻密で矛盾のないストーリーの組立は素晴らしい。
作品を書くにあたり有識者への取材も相当時間をかけていると、読んでいて思ったが、筆者があとがき
でその事を書いている。
例えば、一般の人の認識では「老人ホーム」と聞けば、それに様々な形態があることを知らないと思わ
れるが、宮部氏においては、『理由』の中で「特別養護老人ホーム」と「有料老人ホーム」をちゃんと
分けて書いているのだ。さらには「特別養護老人ホーム」に入居するために申し込んでから、入居する
までに2年待った(かかった)とまで書かれており、これには、私は驚かされた。宮部氏はものすごい
よく調べていると思った。
色々な物事を作品にするに当たっては、自分の理解している事では納得せず(一般の認識は、間違って
いる、あるいは勘違いしてることが多い)、徹底的に調べて、取材していることが、伺えるものである。
『理由』はそれぞれの家族の子供が、非常に重要な位置を占めているような気がする。
余談だが『理由』は、登場人物がすごい多いので、そのメモを作成して読むと読みやすいかもしれない。