そもそも、口臭とは?


口臭は、「口腔内に住む微生物が作るガスと、肺から出てきた、臭気を含むガスとが混じって、口呼吸によって排出されたもの」が、その本体です。

口腔内には、想像を超えるほどの多くの微生物が住み着いています。これらは、外部から侵入する病原菌をシャットアウトする、という役割を担っていますが、 その活動の結果、むし歯を作ったり、歯周病を発生させたり、あるいは、このように口臭の素となるガスを発生させたりします。

肺から出てくるガスとは、血液中に溶けている、臭気の素となる物質が、肺におけるガス交換によって、呼気に含まれるものです。たとえば、前日食べたニンイクの臭いとか、前日飲んだお酒の臭いです。

従って、歯をみがくことは、このような微生物を減らす(定着している場所から追い出す)という意味で、ある程度は口臭の対策となり得ますが、たとえばむし 歯があれば、その内部の清掃は不可能ですし、すでに歯周病にかかっていれば、それを促進している歯石の除去を始めとした治療が適切に行われない限りは、そ の部分の対策は不完全ですし、歯並びが悪かったり、あるいはかぶせたものが合ってない場合などは、自分で清掃できない部分がどうしても残りますから、歯磨 きの成果も完璧ではありません。

口臭には、内科的原因で起こるものもあるのですが、そのような場合の呼気性口臭や、また、食事性口臭は、歯磨きによって除去することはできません。食事性 口臭は、胃からのガスと思われていますが、決してそうではないのです。なぜなら、胃内は食後1時間くらいで空っぽになりますし、呼吸時は、胃へのルートは 遮断されているためです。(食道と気道の、解剖学的な構造によります)

また、歯の表面だけではなく、舌の表面にも微生物がいます。何らかの原因によって舌に深い溝ができている場合には、その条件を好んで増殖する微生物が、独特の臭気を発生させます。

これらの、口腔内のガスについては、唾液が十分に分泌されている場合は口臭とはなりにくいのですが、しかしまた、唾液分泌が全てではありません。唾液が充 分であり、かつその恒常性の維持や、自浄性の維持が確保されている限り、および、その恒常性の維持機構を上回る、口臭発生要因(中等度以上の歯周病や、炎 症性疾患)がない時に口臭は起こらないのです。

その一方で、精神的な要因などによって一時的に唾液の分泌が抑制されたときには、他の、口臭を発生させない条件が満たされていても、口腔内は自浄性を失 い、唾液中の新鮮な溶存酸素が欠乏し、嫌気的状況ができあがるために嫌気性菌の活発な活動を許し、さらにはそれを助長する呼吸法によって、一定の口腔内の 状況を作り出すことにより、口臭が発生します。

唾液が出にくくなる条件としては
*病気等のために薬剤を服用している
*精神的に緊張している
*寝不足などのために体調が悪い
*水分の摂取量が少ない(相対的に)
・・・などです。

また、食べ物の性状・口腔内の構造的問題(不潔域の存在)・唾液の自浄能力・自己の衛生管理能力の複合的原因によって口臭が起こります。たとえば、パンや ビスケットなどのような、あまり噛まなくても簡単に食べられて、しかも歯にくっつきやすいものは、歯の表面に残って発酵し、すっぱい臭いを発生する原因と なりますが、条件により、このようなものを食べても、口臭が起こらない人では起こりません。

口臭の素となる、もうひとつの原因である肺からのガスは、いくら歯磨きをしたって、関係ありません。これについては、それなりの、別な対策が必要となります。

口臭は、他人がそれを感じることのできる他臭と、他人は感じることができないけれど、自分では確かに臭気を感じている自臭とに分けられます。このうち、他 臭の場合は、比較的容易に解決できますが、自臭の場合、人によって口臭が発生する原因や背景は様々で、したがって、その解決法も人によって異なります。

しかし、いずれにしても、医療者と患者がお互いに信頼し合って、綿密な診査を行い、処方箋を作成し、協力することによって、解決の道が開けます。


<FRESH BREATHの参考ページ>
人はなぜ口臭があるのか?口臭は克服できるのか?
口臭の種類
口臭の原因物質、および臭気発生源による分類
口臭を引き起こす口腔内の要因




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