ケンは茶色の寅縞の猫であった。
ケンもロンと同様にミケの子供である。ロンとは違いあまり出歩かなかった し、喧嘩らしいものもしなかったと思う。 非常に甘えん坊なたちで、良く足元に寄ってきては頭をすりよせていた。頭 の後ろを撫でてやるとすぐにコロンとなって、そのまま撫でていたものである。 いまの猫ではトミーと良く似た性格だったと思う。毛の色も茶系で似ているし、 私は混同してしまうことさえある。 ロンが亡くなった後では私が一番かわいがっていた猫だと思う。
ケンは交通事故で死んだ。家の裏手のほうの田んぼの脇の道路で、車にはね られて死んでいた。まだ暖かい体を撫でてやりながら、目玉が片方だけ飛び出 しかけていたのできれいに整えてやり、泣いたものである。 ……これを書きながら思い出しただけで涙があふれてくる。