『北京かわら版』編集長代行 大江 弘樹
今年は、日系企業の幹部の方々にお会いする機会に恵まれている。通常、ビジネスマン同士で酒を酌み交わすと、必ず中国ビジネスの難しさが話題になる。皆、第一線で活躍されているから、それだけ苦労も多く、酒の肴にはちょうど良いのかもしれない。
しかし、ある合弁総経理は、「中国のシステムがわかれば、日本よりも中国の方が仕事がやりやすい」と断言する。私はこの言葉に、ゾクッとした。自信満々に、こんな話ができる方に会ったことがなかったからだ。
多くの経営者との交流を通してわかったことがある。元気な日系企業には、概して、独自の中国ビジネス理論を持ち、それを着実に実践している経営幹部がいることだ。彼らは、頭だけでなく、体で理解させるとの気迫を持って、従業員と接している。本当に、強烈な個性を持っている方が多い。そうしたお一人に、A総経理がいる。A総経理は、「仕事は現地幹部に任せている」と言いながら、「毛穴からも自分の経営観、仕事観を従業員に伝えよう」という意思を持ち、毎晩従業員と飲み歩き、語りまくっている。しかも、夜の付き合いでは、幹部社員より、現場従業員との関係を重視する。末端の従業員が、経営者の考えを理解している企業には、計り知れない強さがあるだろう。
中国で成功している先輩諸氏に共通しているのは、大変さを嘆くより、大変さを楽しむあくなき挑戦の姿勢だ。そんな方々のパワーを吸収し、ビジネスを成功させる。これが、経験浅い経営者の役目だろう。