瀋陽雑感 |
コマースクリエイト且ミ長 森下雅喜
「アジア号」は、満鉄時代の、日本の技術の結晶と言えるものでしょう。当時世界最速と言われ、大連〜ハルビン間1000キロを約8時間で走ったという機関車で、今は瀋陽市蘇家屯区の機関車陳列館に野ざらしで置かれています。なぜ今まで残ってきたかといえば、中国の鉄道労働者が「捨てるには忍びない歴史的遺物」として、ボランティアで手入れをしてきたからだということです。
この機関車陳列館には、1920〜30年代の米国、チェコ、ソ連、ドイツ、日本などの機関車10数台が展示されています。全て野ざらしのため、錆び鉄が崩れ落ちそうな機関車が大半ですが、アジア号だけは比較的保存状態も良く、その勇姿を残しています。鉄道ファンなら、涎の出そうなシロモノです。
アジア号の保存については、以前からいろいろな議論や動きがありました。「日本の侵略の象徴」として破棄すべきだという意見、「郷愁」として残してほしいという意見、「もったいないから何かに使おう」という意見、などなど。私も参加する関西遼寧協会も、八年ほど前に前の高村外務大臣に「日本政府の予算で、今後の日中友好を進めるためのシンボルとして〔アジア号保存〕」を陳情したこともあります。
結局、第三の解釈と目的で保存・利用されることが決まったようです。すなわち、瀋陽市政府と蘇家屯区政府・蘇家屯旅遊局が共同出資して「鉄道公園」を作る、鉄道博物館的なこの施設では、鉄道や機関車の歴史を陳列し、アジア号は、人類が持ち得たその時代の科学の表現物として構内を走らせようというものです。
しかし、予算が足りません。モノがモノだけに、政府間での議題にはしたくないらしく、民間の寄金を募っています。アジア号の現物を見てしまった私個人としては、「鉄道公園」の構想には大賛成で、「人類の産物を利用して瀋陽が発展する」ことはいいことだと思います。何か、日本側で、寄金集めのいい方法はないものでしょうか。