四国八十八カ所フォトアルバム



1996年6月10日(第7日)

第44番 大宝寺 〜 第59番 国分寺

 

大宝寺本堂 44番 菅生山大宝寺−−−お写経

 本来は、般若心経を写経して納めるのが正式な納経だという。今は、何処の文房具屋さんでも至れり尽くせりの般若心経お写経セットを売っている。八十八ヶ寺全部でなくてもいい、出発までにできるだけ写経してみるのもいいだろうと思う。
 私は、気分が落ち着かないときとか、悲しいことが有ったとき、知り合いが亡くなったとき、逆に嬉しいことが有ったときなどに、ぽつりぽつりと書き貯めて仏壇にしまっておき、お遍路に出たときにそれを納めてくるようにしている。お写経には不思議な効果がある。一心に写経することで、心の中の重たいことなどが少し楽になったり、時には願い事が叶ったりするのだ。
 きちんと全部のお寺に納められるように用意するには180枚から必要だが、私はここでも無理をしないことをおすすめする。できることからこつこつとやりましょう。
 
大宝寺大師堂


浄瑠璃寺本堂 46番 医王山浄瑠璃寺−−−あると便利(その1)

 これは俗説だけれど、ろうそくや線香はもらい火(人が付けて燃えている火から火をもらうこと)はせず、面倒くさくてもいちいち自分のライター、マッチなどで火を付けた方がいいという話を聞いたことがある。火と一緒に他人の業や厄を貰ってしまうというのだ。悪いと言うことはしたくないのが人情なので、私はそれ以来、お参りの荷物には100円ライターを必ず入れている。
 このライター、薄暗いところで明かりの替わりに使ったりもできるし、マッチと違って、しけることもないので便利である。一つ入れておくといい。
 のし袋とか封筒のたぐいもちょっとお金を包んだりするのに便利。
 ひも、安全ピンなどは、笠のひもが切れたときなど、ちょっとした繕いの替わりに。
浄瑠璃寺大師堂


八坂寺本堂 47番 熊野山八坂寺−−−あると便利(その2)

 お参りの間は、お賽銭の小銭を出すため、頻繁と財布を取り出すことになる。お寺によっては厄除け坂や、石段のあるところもあり、そういうところではたくさん小銭が必要だ。そこで、私は、お賽銭専用の小銭入れをウエストポーチに入れている。つまらないことだが、お遍路で1日回って疲れてくると、お杖に、納経帳の入った小リュックに、ずた袋などと、荷物がたくさんあるとどうしても貴重品の管理がおろそかになりやすい。そこで、お賽銭用の小銭入れが意外と便利なのだ。
 腰から下げるような、小さめのタオル。タオルは手水を使うたびに必要だし、その度に取り出すのはめんどくさいもの。
八坂寺大師堂


西林寺本堂 48番 清滝山西林寺−−−車の中で寝た話(その1)

 私が2度目に通し打ち(一回で八十八ヶ所を回ること)をした、2年前の秋は、私は拾ったばかりの子猫を連れていた。そのころは、猫を預ける所も、見てもらえる友人もいなかったからだ。
 子猫を連れているということはイコール宿に泊まれないということだ。なぜなら、まだ500gくらいしかない子猫を車に1匹で残しておくこともできないし、かといって一緒に宿に泊まることもできない。と、いうわけで、お遍路をしていた13日の間、普通の自家用車のシートに猫を抱いて丸くなって寝たのだった。
 車を止める場所は、原則として公衆トイレのあるところにした。具体的には、公園のまわりが多く、トイレのある公園を探すのには地元の警察で聞いた。家出人とか、やばい人間かと思われるので、その際には免許証を持って行くとすんなり手助けをしてくれる。一度は、警察の駐車場の隅っこで寝かせて貰ったこともあった。  
西林寺大師堂


浄土寺本堂 49番 西林山浄土寺−−−車の中で寝た話(その2)

 車の中で寝起きしていると、必然的にお風呂に入れない。そこで、今流行のクアハウスとか、銭湯とかを利用した。これは、電話ボックス備え付けのイエローページに広告も含めて電話番号が載っているし、場所の確認は、やはり警察とか消防署を利用した。コインランドリーも同じようにして探した。
 その場合でも、一泊だけ、善通寺の宿坊には泊めていただいた。門限ぎりぎりまで車の中で猫と過ごし、朝も6時の勤行(朝のおつとめ)前に車に様子を見に行った。幸い車は宿坊のすぐ前に止められるのだ。
 このお遍路は、宿泊費が12泊で5000円しかかからなかったのと、食費を1日1000円に限っていたので、とても安くあがった。この車中泊のお遍路も今となってはいい思い出だ。少々疲れはたまったけれど。
 
浄土寺大師堂


繁多寺本堂 50番 東山繁多寺−−−お接待の思い出

 今回の遍路中に、81番の白峰寺と82番の根香寺の間で、うだるような暑さの中歩いているお遍路さんを見た。ちょうど、自分が飲もうと買ったばかりの缶ジュースがハンドルの脇のホルダーにあった。彼とすれちがってすぐ、車を止めて缶を手に走って戻った。遠くから声をかけたら、振り返って立ち止まってくれた。大きな声で、「もし差し支えなかったら、ジュース飲みませんか」と声をかけた。ほっとしたように大きくうなずく姿が見えた。彼の所まで走っていって、ジュースを渡し、がんばって下さいと声をかけて別れた。戻りながら、振り返ると、彼はジュースを飲みながらこちらを見ていた。もう一度大きく手を振って緩いカーブを曲がると、彼は見えなくなった。
 彼が喜んでくれたかどうかはわからない。しかし、快く私のお接待を受けてくれたことには今でも感謝している。
 
繁多寺大師堂


石手寺本堂 51番 熊野山石手寺−−−お遍路の昔話・衛門三郎(その2)

 道後温泉のすぐ裏手にあるのが、この石手寺。道後湯築城主河野息利(やすとし)の妻が男の子を産んだが、その子の左手が生後三年経っても開かなかった。そこで安養寺の住職が祈祷したところやっと手を開いた。その手の中には石が握られていた。手から落ちた石を拾って見ると「衛門三郎再来」とお大師様が衛門三郎の最後の願いを聞いて書かれた文字が残っていた。そう、この子が衛門三郎の生まれ変わりだったのだ。
 その子は息方(やすかた)と名付けられて、河野家の家督を継いだ。のちに、安養寺は名前を石手寺に改め、石はお寺に納められた。現在でも宝物館でこの石を見ることができる。
 
石手寺大師堂


太山寺本堂 52番 滝雲山太山寺−−−お遍路と犬

 お遍路さんが犬を連れている話を、よくお札所で聞く。また、たまたま縁のあった犬とお遍路をした話を書きまとめた本を読んだこともある。しかし、実際に犬と回っているのを見たことはなかった。今回、本当に見かけるまでは。
 私が見かけたとき、犬は、まるで道案内をするようにお遍路さんの3歩ばかり先を歩いていて、その一人と一匹は一見まるで関係なさそうに見えるのだが、微妙な緊張関係でもって結ばれていた。
 本来、お大師様と犬は色々な話が残されていて、特に有名なのは、真言密教の聖地として根本のお寺を建てる場所を探していらしたお大師様を、高野山にご案内したのが、2匹の犬だったという。今でも奥の院に犬が捨てられていると、お参りに来た人がありがたく頂いて、家に大事に連れ帰り家族の一員に加えるというようなことがあるそうだ。
 一人歩きのお遍路さんには、きっと心強い友なのだろう。山の中で、野犬と喧嘩されてしまうという危険もあるらしいけれど、そういうゆったりした時間を過ごしてみたい心境になった風景だった。
 
太山寺大師堂


円明寺本堂 53番 須賀山円明寺−−−旅費の話(宿泊費)

 今回の旅では
日程にも書いた宿泊先に泊まった。私達は3人旅だったので、ビジネスホテルでは、トリプルの部屋に泊まったし、旅館でも一部屋だった。この宿屋を使い、途中で中抜けせず、しかも休日を取らずに回ったとして10泊で一人当たり約7万7000円だった。宿泊料金はどの宿も部屋にトイレのあるという条件で最低の金額でお願いしたが、料理は十分に足りた。贅沢をさけるという意味でも、年寄りがあまり食べないという意味でも、賢明な選択だった。
 しかし、シーズンである春と秋は宿屋が取りにくいこともあると思うし、なるべく早く予定を決めて宿の手配をする事をおすすめする。また、宿坊ならもっと安く回れると思うが、個人の宿泊を断るところもあるようなのでよく調べるといいだろう。今回の旅で本当に実感したのは、各地の国民宿舎、かんぽの宿などの設備のすばらしさだ。公共の宿舎の全国ガイドも出版されているのでチェックしてみるのもいいだろう。ビジネスホテルも狙い目である。
 
円明寺大師堂


延命寺本堂 54番 近見山延命寺−−−旅費の話(車の費用その他)

 四国内の走行距離はだいたい1500キロくらいだ。これから自家用車の燃費を考えて、ガソリン代を算出していただきたい。また、各お寺の駐車場代、有料道路の通行料などで、10000円位は必要だと思う。
 それから、利用した方が便利な交通機関として、21番太龍寺のロープウェイ2370円、32番から33番の間の浦戸大橋、60番横峰寺の登山バス1550円、国道11号線の渋滞をさけるための64番と65番の間のいよ西条インターからさぬき豊中インターまでの四国縦貫道路、66番雲辺寺のロープウェイ1950円、85番八栗寺のケーブルカー800円(各往復大人一人の料金)がある。
延命寺大師堂


南光坊本堂 55番 別宮山南光坊−−−旅費の話(食費他)

 今回は両親が一緒だったし、彼らにそれほどの我慢を強いるつもりになれなかったので実行しなかったが、前回猫と回ったときは、猫の病院の費用をのぞいて、原則1日の出費を1500円以内に抑えていた。これには、1食400円以内の食費3食分と、ジュースなどの副食の費用を含んでいる。
 これは、ちょっときつめだが、宿で朝夕の2食をいただくと1000円でも足りるのだ。とにかく無理のない範囲で、これもありがたい修行と思って、少し不自由でもがんばってみるのもいい経験だと思う。
 とにかく、ぜいたくをしないことが大切なのだ。だって、願い事を抱えて修行に出るのだから。
  
南光坊大師堂


太山寺本堂 56番 金輪山泰山寺−−−旅費(総予算)

 ◎ 東京から一人で乗用車で行った場合。車の燃費はリッター8キロ。
  所用日数(少しゆっくりのお参りの場合)13泊14日
   ガソリン代(3000キロ)         45、000円
   高速道路代                 25、000円
   宿泊費(13泊)             100、000円
   食費(14日)               14、000円
   お遍路用品                 10、000円
   納経代(納経帳)300円x90ヶ寺     27、000円
   駐車場代など                10、000円
   ロープウェイ代など              7、000円
   予備費2000円x14日          28、000円
   和歌山−小松島のフェリー往復(5m未満)  17、100円
       合  計             283、100円
太山寺大師堂


栄福寺本堂

57番 府頭山栄福寺−−−お遍路と季節・春

 お遍路の季節として一番ポピュラーなのは、やはり春だろう。気候の良くなる3月4月5月が一番お遍路さんも多い。特に3月の終わりから4月の最初は、桜も菜の花も咲くし、3月21日がお大師様のお誕生日だし、4月8日がお釈迦様の誕生日の花祭りだし。文字通り一番いいシーズンなのだ。
 

仙遊寺本堂

58番 作礼山仙遊寺−−−お遍路と季節・夏

 梅雨の頃は、やはり雨が人の気を重くさせるのか、なかなかお遍路には出にくい。しかしそれは他の人も同じということで、お札所も空いているので、お参りもゆっくりできる。また、6月は小夏ミカン、ビワなどの果物もなる時期なのでそれも楽しみ。。
 真夏は、虫が多いし、歩き遍路は雑草との戦いになるとも聞く。それに何よりも暑いことが問題だろう。一番過酷な時期かもしれない。

国分寺本堂 59番 金光山国分寺−−−お遍路と季節・秋

 秋は、田圃の稲が黄金色に実るし、山の上の方から紅葉が降りて来るしで、秋なりの美しさに包まれる時期である。
 気候自体は、春と同様お遍路に適しているので、この時期はこの時期で人出が多い。しのぎやすい時期なので、夏や冬より楽なお遍路になるだろう。
 思い出にあるのは、この時期のお遍路で、ずいぶん取れたてのミカンをお接待いただいたこと。ミカンが朝食という日もあったっけ。その節はお世話になりました。
 
国分寺大師堂
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