食事介護ガイドブック

3 食事介護





3-1 介助の時注意すること


・本人自身でなるべく食事をとってもらうよう勧める

・嚥下障害の機能レベルを確認しておく
(機能レベルによって摂取できる食品、形態や量が異なるため)
流動食→すりつぶし,裏ごし食→粘調軟固形食→軟飯,軟菜食→軟飯,きざみ食→並飯,一口切り

・なるべく座って食べるように(ベットのときは、背の方を30度5分位にあげるとよい、またリクライニングの車椅子のときも同じ)




・食べる人と同じ目の高さで
・食べる人のスピードに合わせる

・まずスープやみそ汁のような汁物から始める


・食物は舌の上にのせる(口の奥に食物を入れると、嘔吐しやすい)
   口の下から、舌の中央より前の窪んだ所に置くが、脳卒中などで片麻痺がある場合は、舌の位置が変わるので事前に確認する
・口に入れる量は、少量にする
(人それぞれにより量は異なるが、小匙1杯程)
・スプーンで舌を圧迫し、口唇を閉じさせる
・順次食品目を変えて食べさせる



・食べる人の意見や希望を聞きながら(コミュニケーションをとりながら)介助する
・最後にお茶やさ湯を飲むことを勧める
(口の中の残りかすを除去し、お茶は殺菌効果があり、口腔内の衛生にもなる)



・食事に際して、いろいろな自助具が市販されているので、医師、理学療法士、作業療法士に相談する
・食事をする際の環境をよくする



3-2 障害と食べ物


“食べる”ことは、人間が生命を維持していくうえにおいて、呼吸や摂食や排泄はなくてはならないものの一つです。特に摂食は人間本来のも欲求の一つであります。
摂食に障害が起きて、スムーズに“食べる”という機能が動かなくなったとき“食べ物”に工夫が必要になってきます。
咀嚼は、食物を摂取してから上下顎の運動により、歯間の食べ物を粉砕する一方、唾液と食物と混和させ、適当な大きさに食塊を形成することで、嚥下は、食べ物を口腔、咽頭、食道をへて胃のなかに送り込む運動のことです。

(1) 障害が 嚥下のどの段階にあるかによって、食物への工夫が変わってきます。
・口腔期障害: 液体,低粘度で半流動のもの

・咽頭期障害: 低粘度で半流動,半固形物,ほどよい硬さ,切れがよく,喉ごしのよいもの

・食道期障害: 液体,低粘度で半流動のもので,喉ごしのよいもの

(2) 嚥下しやすい食物形態
・プ リ ン 状 :プリン,ババロア,ムースなど
・ゼ リ ー 状 :牛乳やジュースのゼリー,ヨーグルトなど
・ポタージュ状 :クリームスープ,シチューなど
・ネ ク タ ー状:バナナ,ピーチ,リンゴをつぶして、ドロッとしたもの
・蒸 し 物 :豆腐,茶わん蒸し(山芋を入れ、粘着性を持たせる。)
・す り 身 :山芋,まぐろ(生)など
・粥 状 :全粥,5分粥,3分粥ミキサー
・乳 化 状 :アイスクリームなど

・凝集性の小さいものは,ゼラチン,寒天,くず粉,片栗粉等で、凝集性を
高める
・味は無味より、酸っぱいか甘いもの
・温度は常温よりも冷たいもの

(3) 摂食しにくくまた注意する食物
・水
・弾力性のあるもの(かまぼこ・たこ等)
・塊の大きいもの
・炒り豆腐などのポロポロしているもの
・繊維質の多いもの(野菜類)
・ひき肉
・ごま,ピーナツ,大豆などの豆類
・のり,わかめなどの口腔内に付着しやすいもの
・酸っぱいもの,辛いもの,硬いもの



3-3 重度障害の介護看護


 脳卒中後の入院や、障害や老化により寝たきりになる場合があります。このような場合には、介護に、なお一層の注意が必要になります。

(1)日常生活での注意
・水分を十分に取らせる
 水を誤嚥しせき込むことをいやがって、あまり飲みたがらない、飲ませないことがあります。水分を十分に補給しないと、脱水になり血液が流動性を失い、脳梗塞などを発症しやすくなります。とろみをつける工夫(トロミアップの使用)をして、十分に水分を取らせなくてはいけません。

・体位交換を行う
 寝たきりで同じ体位を取り続けると、誤嚥したものが肺の下方に溜まったままになり、その部位が無気肺(空気が入らない状態)になり、肺炎をおこしやすくなります。これを防止するために、一定時間ごとに体の向きを変えることが必要です。

・体重の体重の減少に注意
 嚥下障害があると、当然栄養が不足してきます。栄養が不足しますと、体力が低下していき、さらに嚥下する力がなくなっていきます。栄養不足は、体重の減少になって現われてきますので、体重の変化に気をつけ、補食や食事回数を増やすことを考えます。

(2)口の中の清掃
 食前に少し口に水をふくませ、粘膜に湿らせておくと、食べ物がはりつくのを防ぐことができます。
 食後は、まず口の中を見て、大きな食物のかすを取り除き、歯を磨きましょう。口の中の食物は細菌が繁殖し、寝ているうちに唾液などといっしょに誤嚥すると肺炎をおこしやすくなります。

(3)食事の介助
 嚥下障害のある人には、必ず付き添うようにして、一人で食事をさせてはいけません。
・体位
 ふだん横に寝ているだけでも、食事の時にはできれば座位、または上体を起こした半座位にして、首を前に傾かせて食べさせます。
 こうすることによって、少しでも誤嚥を防ぐことができます。

・雰囲気づくり
 食堂などに集まって食べるのと違って、普段寝ている部屋で一人で食べるのは、あまり食欲もでませんし食事に集中することが難しくなります。落ち着いて食事に集中できる環境を整えることが大事です。

・食物の口への入れ方
 舌の中央に、片マヒのある人はマヒのない側に入れる。
 口唇の閉まりが悪い場合には、手で口唇を閉めて、ゆっくり大きく嚥下するように促す。
 嚥下を確かめつつ少量ずつ入れる。
 食事を急がせてはならない。誤嚥の原因になる。

・喉の残留感を訴えた場合
 一口の水やお茶を飲ませ、何度も空嚥下をさせる。
 喉の奥の残留感の場合には、
 首を横に向かせて嚥下をさせることを左右繰り返す(横向き嚥下)か、
 うなずくように上下に反動をつけて首を動かし嚥下させる(うなずき嚥下)。