ACT 4.0
彼女の難題

原画

木下和栄 小野修次 斉藤英子 追崎史敏
末富真治 小川浩司 石本英治 石崎寿夫
日野貴史 高橋拓郎 加瀬政宏 小栗寛子
森下真澄 久保 智 片桐章夫 中山由美

98年10月23日放送

脚  本:庵野秀明 作画監督:中山由美

絵コンテ:鶴巻和哉 演  出:佐藤育郎
     佐伯昭志

四字熟語のコーナー

じじょうじばく
自縄自縛

自分が作った縄で自分を縛ること。自分自身の言行で自分が規制されて自由に動けず、結局は進退極まってしまうこと。

 

今も私を好きとは限らないし…

 前回から直接話がつながるという感じではなく、あれから二人の仲は進展しておらず雪野が困っているという状況からスタートする。

 この回は前回までのような絵の動きはあまりなく、ギャグも控えめである。雪野でギャグをしたくないためか、お遊び的な一枚絵でのギャグが多い。しかしこの回の「告白したくても一歩踏み出せない雪野のせつなさ」を描くには、この落ち着いたテンションは妥当に思う。この作品はガイナックスの若手がコンテを描いているが、それを鶴巻和哉氏がチェックしているとのことで、いわば副監督のような立場だろうか。この回は初めて氏がコンテを切っているが、鶴巻氏といえばエヴァの16、20、22話など淡々とした描写重視の回が多く、この回も一定のテンポが続く氏らしい回といえるだろう。(余談だが、初のガイナックス以外の外部の人間である佐藤育郎氏の参加であるが、氏ともども『センチメンタルジャーニー』でその手腕を発揮した岡本英樹氏もこの作品に参加するそうで楽しみである)

 この回は動きは少ない変わりに、直接告白しようとするところや、有馬を見ていたのを気づかれた時、「私逃げてた」と泣くところなど、表情が豊かであり、そういう面での表現となっている。

 この回で原作にない追加の部分では間接的な告白作戦のシーンがある。これが入ることにより、ギャグに見えてしまう直接作戦よりも「告白したい」という雪野の気持ちがわかりやすいのではないだろうか。(一瞬写るラブレターの字など、奇麗で説得力があったし)

 やっとのことでめぐってきたチャンスに「今も私を好きとは限らないし」と思った後に考えを巡らすシーンでは、画面中に文字情報を敷き詰めたものを見せるという今までと路線の違う演出がなされていた。最初は「ん?」と思ったが、自己の退行した思考へとふけり、回りが意識からなくなっている様が表現できているのではないだろうか。
 この後の再度有馬に気持ちを伝えられ、愕然となって目のアップに実写映像らしきものを重ねているところでも同じような手法が使われ、原作でもこの回のポイントであるこの二箇所は鶴巻氏はこのように処理した。難しいシーンでどうのように表現するのか興味深かったが、ひとまず納得のいく内容である。

 「本当の自分を出すのが怖くなっちゃんてんのよ」の際の裸の雪野のイメージカットは、原作にある少女漫画ならではの表現をそのままやってくれたので嬉しい。これを挿入し不自然でないというはなかなかできるものではないと思うのだが。一面の花びらのカットや花と有馬のカットもそうである。

 2、3話ではタイミング良く流れた「夢の中へ」のアレンジだが、この回では雪野が逃げ帰った直後からおとなしめのアレンジが最後まで延々と流れる。逃げていた自分に気がつき、自己嫌悪におちいり、勇気を必要と感じ、一歩を踏み出すという過程の心理面だけを伝える役に立っているのではないだろうか。

 最後、言葉よりも行動が自己表現となる彼女は勇気を持って手を差し出す。
 つながれた手と手。
 そしてEDはデュエットとなる。

勇気が必要だ

 

戻る     5話へ


(カレカノトップへ)    (26話へ)    (トップページヘ)