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牛来隆行 阿保孝雄 今石洋之 林 明美 | |
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98年12月4日放送 脚 本:庵野秀明 作画監督:伊東伸高 絵コンテ:岡本英樹 演 出:岡本英樹 |
事態・情勢が急に変化して、物事が解決し決着がつくこと。「急転」は急激に変化すること、「直下」はまっすぐに落ちる(ただちに結論が出る)こと。また、解決・決着の方向へ向かう場合にも用いられる。 |
「センチメンタルジャーニー」でその手腕を発揮した岡本英樹氏の的確な絵コンテ。「ウテナ」の林明美氏、「サミー」の河野悦隆氏、そして今年OPの原画で何度も名前を見た伊東伸高氏が作画監督を務めるパワー溢れる原画と、外注の豪華メンバーによる秀作の回。
最初に真秀の雪野への嫉妬による動機が語られた。これはこの回の大事なシリアスの部分でり、過去の有馬や雪野のトラウマと同じように丹念に描かれる。
芝姫の雪野への嫌がらせも前回から引き続いているが、雪野はそれをかわすようになっていた。そしてクラスメイトの無視も続いていた。が、そんなことはおかまいなしに有馬とちょっといざこざがあった後には、写真を見せあっていつも通りの彼女。再び有馬と和解し、仲のよいところを見せる。
今回芝姫の嫌がらせのところなどでも、極端にギャグにはせず、雪野ら人物は等身大のままである。トータルでおふざけの回でないゆえんである。
佐倉椿は雪野のクラスでの事情を知り、仲良くしようと「ゆきのん」と呼ぶ。彼女に生まれて初めてあだ名がついた瞬間だ。そしてりかと亜弥も紹介され仲間に入ることになった。
それを見た真秀はショックを受ける。雪野がこたえないのも手伝ってか、彼女は教室で雪野に嫌味をぶつけてしまう。だが雪野はここが正念場と判断し、屈することなく逆に言い返してのけた。真秀は雪野はひっぱたき教室を後にする。ここはさも真秀が主人公のような描かれ方で、彼女の気持ちの方にウエイトがおかれている。芝姫に忠告され「誰もなにもわかりやしないくせに」と思いつめるところも同様である。
結局クラスの女子は真秀から離れる。「どうせこうなると思っていた」あたりの左右が切られるところや自分の足元の回りしか視点に入ってないところなど、彼女の閉塞的な思考が感じられる演出である。そして彼女は雪野に嫉妬していただけでなく、その彼女が演技によるものだということが、何よりくやしかった事をモノローグで語る。なるほど、それは非常にわかることである。
そんな事は露知らず、言い負けなかった安心感からか雪野は屋外でのんびり。芝姫の登場に戸惑うが、嫌がるでもなく逆に彼女が嫌いじゃないと確認することとなる。のどかな音楽といい、もういさかいは下火になってきたという感じであった。
その芝姫は有馬にかまわれるが、その際に「宮沢と仲良くしてくれよ」と言われてしまう。丁度彼の定期入れを拾い、彼女はしてはならないことをしてしまう。
雪野は焼却炉で破かれた自分の写真を発見し、彼女は暴徒と化して芝姫を追う。ここはこの回の山場とも言え、久々に女性ボイスの曲(不撓不屈)が流れて、原作では四ページほどだったものを強烈にパワーアップさせたものとなっている。ここまでのオーバーアクションは逆にアニメならではで、十二分に楽しませてもらった。投げた靴をそのまま履くあたりはまさにそうだろう。また、この一部をクラスメイト並びに真秀が見ていたことも、解決の早道になったといえる。
芝姫を追い詰めた雪野。彼女は「なぜ告白しないの」と今の出来事でなく芝姫の過去の態度を責めた。途端、「告白しようと思ったわよ」と泣き始める芝姫。芝姫の中学での回想はギャグっぽいが、中学ということでそんなものかなという気もする。なによりその後の「毎日13時間勉強してこの学校に来たのよ!!」のくだりは辛辣なものがあった。見せ方もしっかりしている。
そしてクラスメイトから謝罪され、芝姫にも気にいられたようで急速に事態は解決に向かう。最後の真秀とのやりとりも、好戦的かつ冷静な雪野らしい態度であった。あれならば真秀が笑ってくれるのも違和感なく見れるというものである。
(この作品のアニメ化にあたり、「パンチラ」に関してどうなるのか気になるところであった。もしあったとしても「見えてしまった」の表現であってほしいと願っていたのだが、実はこの回パンチラが一箇所ある。そういえばすぐにわかるところだと思うが、別段問題のないシーンであり、一安心。この先もノリにまかせて描いてしまうようなことがなければよいのだが。視聴者には見えなくても、人物は見てしまったという表現などは面白いかもしれない)