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沢田正人 和田高明 福田紀之 内納健次 松田 寛 羽坂英則 深沢幸司 伊藤岳史 | ||||
99年4月18日放送 (TV埼玉、千葉TV) 脚 本:藤田伸三 作画監督:伊藤岳史 絵コンテ:岩崎良明 演 出:村田和也 |
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・アバンタイトル
どことなく不気味な雰囲気を漂わせる曲が流れながら、オカルトな格好の少女が何やら儀式のようなものを行っている。本当に同じ作品か? と思わせるような出だしであるが、芹香の独特の雰囲気が一番出ているのがここなので、まずは彼女のその部分をオープンにしておきたかったのだろう。実際2話で一瞬顔を見せているので、怪しい人物だと不審がことはないはずである。
・Aパート
校舎の玄関を掃除していた浩之は、庭先で芹香とぶつかってしまう。彼女は黒魔術に使うトカゲを探しているとのことで、浩之はさほど面喰らうわけでもなくそれを手伝い始める。彼のおせっかいというか、お人好しというか、面倒見のいい部分によるものといえよう。
また、芹香がか細い声で喋った内容を、浩之が繰り返して聞き返すという形式がとられている。彼女が無口で声が小さいのを強調し、かつそのキャラ性を失わずに会話させるためのうまい処理である。
・Bパート
部室で浩之を待つ芹香。見学を今日と決めたわけではないが、普段約束事をしない彼女にとっては、約束=即日になってしまうのだろう。それを見たあかりは帰宅途中で浩之に会い、彼にそのことを告げる。(余談だが、あかりがお料理クラブに在籍しているのはアニメ版独自の設定であり、納得のいくもので好感が持てる) それを聞いた浩之は「そういうことかよ…」と全てを理解し、学校へと走り始めた。芹香が本を貸してくれたこと、クラブ見学に誘ってくれたのは、黒魔術に興味を持ってほしいからではなく、浩之が芹香にも普通に接することに対する嬉しさからなのだと。その嬉しさとお嬢様体質ゆえに約束=即日になってしまうし、同時にその嬉しさを裏切らないためにも、浩之はあんなに真剣に走ったのだろう。また、それを見たあかりが何も言わずに、そうすることを判っていたかのように彼の後を追いかけるあたり、二人の間柄がうかがえるというもの。
ようやく学校に着いた浩之であるが、芹香は怒るでもなく「来てくれて嬉しい」と。「すまん」と下げられた浩之の頭をなでてやり、彼女なりの感謝の表現として見ていて心暖まるシーンである。
追いついたあかりも交えて、降霊術を見せてくれることになった。非現実的な現象を、このような作品で扱って世界観がくずれないかと心配したが、ここはあかりのモノローグのみで、「浩之ちゃんは何か光るものが見えたって言ってたけど」と後日談のように語ることで、見事に日常を逸脱せずに儀式のシーンを盛り込んでいる。そしてこのモノローグからあかりがこの話をまとめることになり、最後は浩之が芹香と親しくなれたことを、「よかったね」と見守る表情で終わりを告げる。
・総評
前回までで主要4人の人物紹介が終わり、この回よりゲストキャラが一人づつ登場することになる。女性キャラが個性的で何でもありなのがゲーム版To Heartの特徴であるが、中でも異色の「黒魔術が趣味のオカルト少女」である芹香が、その一番手となった。この作品のような現実世界のお話にこういったキャラが出ることで浮いてしまわないかと心配したが、その個性的な部分を変に強調することもなく、あくまで日常の許容範囲内で見せていてたのでさほど問題はないと思う。こうした特異な人物や設定がある場合、大概詳しく説明や理由付けをしようとするものだが、得てしてそうするほど違和感を感じるものである。この回の場合ほとんど説明はせずに、「とにかくこういう娘もいるんだよ」と全体を通して言い切ってしまうことで、逆に説得力があるというもの。なによりも、劇中で浩之達が芹香という子に対しオーバーなリアクションや奇異なまなざしを向けず、素直に受け入れているからこそ、視聴者も受け入れられるわけである。
この回では「浩之とあかりのかたくなな絆、ツーカーな間柄」が各所で描かれる。浩之は芹香の事を包み隠さずあかりに話し、あかりは浩之が他の女の子の面倒を見てやっても、何ら嫉妬心も見せず一緒に協力してやる。
これは非常に大事なことである。というのはゲストキャラが登場してもその人物が主役になるのではなく、その人物を浩之がサポートしていき、あかりがそのフォローをしていくという構図だからである。浩之がゲストに対しての進行役ならば、あかりはそのお手伝いやその現場を伝える司会とも言えるかもしれない。だからこそ、二人の間にはある種夫婦的な関係の描写が必要であり、この回よりこの描写は毎回続くことになる。