Reading 1999



8月(15冊) 7月(11冊) 6月( 8冊) 5月(12冊)


 1999年 8月 
 寂聴 今昔物語 瀬戸内寂聴 中央公論新社
 8月2日にパレスホテルで行われた、瀬戸内寂聴さんのサイン会に行ったのですが、それに先立ち瀬戸 
 内さんの本を全然読んいないことに気がつき(爆)、先月末からこの本も含めて3冊読みました。
 この作品はセンスが良くて、すごく読みやすいです。装丁も素敵です。
 今昔物語ってこんなに、エロチックな話が多いのかぁ、と思いました。(*^o^*)
 『悪霊となった人妻を除く』が恐かったです。

 二十世紀旗手 太宰 治 新潮文庫
 5年前に1回読んだあと、あまりの難しさに避けていたのですが、船橋市に行く前に読んでおかなけれ
 ばいけないと思い、読みました。
 最初に読んだ時より、太宰治に関しての知識が多くなったので、読みやすかったです。
 理解するためには、また読まなければいけないです。

 もの思う葦 太宰 治 新潮文庫
 小説と随筆の違いは?と疑問に思う。出版社からの依頼のされ方によって区分されるのでしょうか?
 「太宰先生、今回は随筆を10枚くらいお願いします」とか。。。
 『如是我聞』は良いですねぇ、、、何で他の人はこういう事書かないんでしょう。何の不満も無いわけ
 はないですよねぇ。。。

 津 軽 太宰 治 新潮文庫
 私はこの作品を1回目読んで、それほど良いと思わなかったのですが、その後太宰治の事を勉強して、
 実は、傑作として評価が高いことを知りました。
 太宰治の文章の部分は、非常に良いのですが、引用の文章が多くて、読むのが疲れます。
 しかし、ラストシーンは何度読んでも良いですね。リズム感、スピード感あります。

 かきつばた・無心状 井伏鱒二 新潮文庫
 短編集です。『おんなごころ』は、問題作です。でも、井伏氏の立場からだと仕様がないことだと思い
 ます。やっぱり井伏鱒二の庇護なくして、太宰治の中期、後期はなかったでしょう。つまり、これほど
 までに名を残す作家でないまま終わったと思います。
 太宰治が遺書で「井伏さんは悪人です」と書いたからといって、井伏氏が本当に悪い人だと思うのは、
 明らかに間違いです。
 他の作品も良いです。押さえた筆致が冴えているし、妙なものにこだわっている井伏氏が面白い。

 限りなく透明に近いブルー 村上 龍 講談社文庫
 8月1日に横田基地の「日米友好祭」行きましたので、この作品を思いだし、再読しました。
 芥川賞受賞作品中、一番のベストセラーとのことですが、まだそうなのでしょうか?
 「青春小説」なんて言葉では、表すことが出来ないと思います。内容の凄さに、この小説は一体何を
 書いているか、などと思ってしまいます。自伝なのかな?どこまでが真実なのでしょうか?難しい。
 先日、古本屋でこの作品の単行本を見たのですが、村上龍氏の髪が長かった。。。

 錦 繍 宮本 輝 新潮文庫
 離婚した男女の書簡により綴った小説で、宮本輝氏の作品の中でも人気があります。
 「死」についての、洞察がすごい。『幻の光』でもそうだったような、、、
 「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれへん。」
 残念ながら、私はここまで考える境地には至っていないようです。
 過去を見つめ直し、未来と向かって行く。別れながらも、お互いを愛し、、、
 難しいですね。

 熱帯安楽椅子 山田詠美 集英社文庫
 12年前の作品ですから、『ベッドタイムアイズ』でデビューして、少し経った頃でしょうか。
 書かれていることが本当なら、という前提ですが、ずいぶん色々言われたのだなぁと思いました。
 この作品はとてもエロチックです。でも、SEXの描写はとても綺麗です。こんなに綺麗にSEXを書
 ける人っていないと思います。
 SEXに関して、よくこんなに言葉がたくさん出てくるよなぁ。。。

 真昼の悪魔 遠藤周作 新潮文庫
 悪魔は実は眼に見えぬ埃(ほこり)のようなものだ。そしていつの間にか埃が溜まるように悪魔はひそ
 かに、目だたずに人間の心に入るのだ。
 悪魔が心に入った女医が引き起こす事件。その女医を異常ではなく「現代の人間」としたところに戦慄
 を感じました。
 4人いる女医のうち、犯人が誰か最後までわかないのですが、そうしたのは、誰もがその可能性を持っ
 ているからでしょうか。私は、最後まで犯人が誰かわからないのでは?と思い、少し不安になりました。

 異形の地図 阿刀田高 角川文庫
 阿刀田氏が「日本の各地を舞台に日常的ではあるが、ほんの少し不気味さの漂う短編をそろえてみよう
 と考えた。」12の連作短編集。
 私がこれまでに読んだ阿刀田氏の他の作品とは、少し違った感じで、まとまっていてとても良いです。
 特に『檜原湖まで』『ゆらめく湖』は秀作です。

 かまいたち 宮部みゆき 新潮文庫
 宮部みゆきさんの初期の頃の4つの短編集。『迷い鳩』と『騒ぐ刀』は、原型となった初稿を仕上げた
 のが、昭和61、61年頃のことだそうですから、デビュー前になりますね。
 『騒ぐ刀』は非常に面白かったです。映像化したら面白そうです。既にしてるのかな?なかなかこうい
 う作品は読めないと思います。現代物より、時代物の方が良いかなぁ、、、これは難しい問題です。
 現代物も時代物も、素晴らしい作品がありますが、すごい才能ではないでしょうか。

 宴のあと 三島由紀夫 新潮文庫
 感想がまとまりにくいです。政治的な小説というには、少し物足りないような気がします。当時はこれ
 で良かったのでしょうか?実際の政治はもっとドロドロしています。もっとも、あまりドロドロなこと
 書いてしまうと、小説ではないかな。美しくはないでしょうから、三島由紀夫の世界ではないですね。
 政治ものというよりは、結局は平凡な一生(これは、野口家のお墓に入ることで表現されていると思う)
 を終えることの出来ない、かづという女性の物語でしょうか?
 三島のこういう作品は良いですねぇ。

 夢魔の標的 星 新一 新潮文庫
 星新一氏の数少ない長編小説の中でも、きっと一番長い作品ではないでしょうか。
 古くなった部分もありますが、すごく面白かったです。30年前の作品とは思えないです。
 完全なプロット。星新一氏には「SFの神様」という言葉があてはまります。ショートショートだけの
 神様ではないと思いますが、どうでしょうか?

 胸の香り 宮本 輝 文春文庫
 7つの短編集。とても読みやすい作品ばかりです。
 宮本輝氏は、あとがきで「ひとつの短編小説を書く作業は、大袈裟にいえば、私にとっては血の一滴を
 無理矢理絞り出すかのような労苦を強いる。一行書き出したとたんに、絶望的なつらさを感じる。」と
 書いています。簡単に書いているようで、そうではないのですね。
 不倫関係にある男心の描写が何とも言えず良いです。ひょっとして、宮本輝氏は、、、

 天の梯子 三浦綾子 集英社文庫
 祈りとは何か?「祈りとは神との対話である。」祈りについての入門書です。
 たかが「祈り」と思っていましたが、「祈り」の重要性、美しさが少しわかったような気がします。
 私も少し祈ったりしています。


 1999年 7月 
 エッセイを書きたいあなたに 木村治美 文春文庫
 私は最近、何か書いてみようかなぁ、と思ったりしていますので、大変参考になりました。      
 書いたものが世に出なくても、書いて残すだけでも良いなぁと思いました。
 生涯学習の大切さもよくわかりました。人生は一生勉強です。

 花ざかりの森・憂国 三島由紀夫 新潮文庫
 4年ぶりに三島由紀夫を読みました。『禁色』とかも買っているのですが、なかなか読めません。
 三島由紀夫が16歳の時に書いた『花ざかり』は、さっぱり意味がわからず、途中で投げ出しそうにな
 りしました。でも、『遠乗会』『橋づくし』は良かった。
 なんと言っても、『憂国』がすごかったぁ。。。これぞ、三島という感じがしました。映画化して三島
 が出演したそうですが、三島由紀夫が切腹のシーンにすごく凝ったらしい。
 読後、森鴎外の『高瀬舟』で、喉が気になるように、『憂国』では、お腹が気になります。

 マドンナのごとく 藤堂志津子 講談社文庫
 短編2作。藤堂氏は『マドンナのごとく』が、北海道新聞文学賞を受賞して、作家への道を進みました。
 2の作品とも年上の女性と年下の男性の恋愛。ちょっと興味をひく。

 「太宰治の旅」殺人事件 深谷忠記 ケイブンシャ文庫
 タイトルにひかれて衝動買いしてしまいましたが、結構面白かったです。
 深谷氏は、太宰治を相当読んでいると思う。太宰治論もあって良い。
 太宰治の『津軽』を引用し、津軽各地を登場人物が回るので、行かれる方は読むとためになります。

 斜 陽 太宰 治 新潮文庫
 ついに9回目。斜陽を御覧ください。

 蝶々の纏足・風葬の教室 山田詠美 新潮文庫
 3つの短編。山田詠美さんの文章ってすごい綺麗。読みやすい。
 不思議な感じですが、3つの作品とも、家族を暖かく書いて、主人公は家族に支えられています。
 男性の大きな踝などのマニアックなところにひかれる女心の描写が素敵です。

 石の森 三浦綾子 講談社文庫
 ちょっとミステリアスな感じがする作品です。「涙の谷」という言葉が印象的です。太宰治の『桜桃』
 に出てくるからです。他にも太宰治の言葉があって、影響されているんだなぁ、と思います。
 トドワラでの死への傾斜の描写はすごい。
 男と女を越えた結びつき、それが大切な愛。三浦綾子氏はいつも良いこと書きます。

 本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき 新潮文庫
 本所七不思議をそれぞれ短編にしているが、ストーリーに無理がなくて全部面白い。
 宮部みゆきさんの時代物は初めて読みましたが、味があって良いです。
 「男なんてみんな馬鹿囃子なんだ」が、非常に印象的です。
 宮部さん心を痛めたことがあるのかな。

 帰りこぬ風 三浦綾子 新潮文庫
 看護婦である西原千香子の日記という形式の小説。太宰治の『パンドラの匣』の影響ではないかなぁ。
 たくさんの名言を引用しているところがポイント。三浦さんが気に入っている言葉だと思います。
 文庫本の後ろの書いてある説明と、実際の内容がちょっと違います。

 瀬戸内寂聴と男たち 瀬戸内寂聴 中公文庫
 瀬戸内寂聴さんと11人と男性との対談集です。瀬戸内さんの博識とユーモアセンスに驚かされます。
 解説で林真理子さんも書いていますが、ビートたけし氏の殊勝さが何か面白い。これも瀬戸内さんの人
 徳なのでしょうか。

 いのち発見 瀬戸内寂聴 講談社文庫
 五木寛之氏との対談、寂聴住職秘話、自薦作品紹介などあって、瀬戸内さんが色々わかります。
 人生相談は、涙してしまいます。
 瀬戸内寂聴さんを初めて読む方におすすめだと思います。


 1999年 6月 
 深い河 遠藤周作 講談社文庫
 遠藤周作氏の集大成と言われるだけあって良かった、感動しました。良い部分を何度も読み直しました。
 この作品の主人公は美津子では?彼女は最後に神を見たのでないでしょうか。
 解説で、ちょっとストーリーに無理があるでは、みたいに書いてありましたが、私は全然そんなことな
 いと思います。何回も泣きそうになりました。

 長い長い殺人 宮部みゆき 光文社
 刑事、証人、目撃者、犯人の財布が語っている、一風変わった作品です。しかし、変わっているという
 点だけでなく内容も面白いです。
 宮部みゆきさんって読者を騙すのが上手いなぁ、とつくづく思います。
 あまり書いてしまうとネタバレになりますね。結末は全てをくみとった、最高の仕上がり。 

 わたし、風俗嬢になりました 七瀬みく 青弓社
 大手食品会社のOLだった作者が、買物依存症になり、600万もの借金をし、吉原の風俗嬢になるま
 での物語です。ソープ嬢になる人は、みんなお金のため、という言葉が重いです。
 女性には最後の手段ですが、男性はどうすれば良いでしょうか?借金しないのが一番ですね。 

 イエス巡礼 遠藤周作 文春文庫
 新約聖書の受胎告知からイエスの復活までのイエスの生涯を、15枚の名画とともに辿っています。
 遠藤周作氏のキリスト観、初めての人にわかりやすいと思います。復活=蘇生 ではないという説明は
 日本人にとって、特にわかりやすいのではないでしょうか。
 聖書に書かれていない部分を推測しているのも良いです。名画も綺麗です。

 マザーテレサあふれる愛 沖 守弘 講談社文庫
 いやぁ、感動しました。すごすぎます。マザーテレサは愛があったが、アイデアマンでもあった。更に
 は決断力もずば抜けていた。何回も泣きそうになりました。
 マザーこそイエスキリストの再来ではないか、とさえ思いました。「死を待つ人の家」で誰からも見捨
 てられた人が最期に「ありがとう」と、心は満たされて死んでいくのです。イエスが多くの病人を癒し
 たのとだぶりました。
 神はいる。神はマザーの中には間違いなくいたのです。

 旧約聖書を知っていますか 阿刀田高 新潮文庫
 旧約聖書はなかなか読めないものらしい、信者でなかったら尚更でしょう。
 この作品はわかりやすかったです。旧約聖書は読む必要なしと判断し、新約聖書に専念します。

 太宰治のことば 野原一夫 ちくま文庫
 買うつもりなかったのですが、この本に挟んであった栞が、太宰治の写真のだったので、何としても
 欲しくなり買ってしまいました。。。(爆)
 太宰治の作品を全部読むつもりはないが、良い言葉、エッセンスだけ知りたい人におすすめします。

 人間失格 太宰 治 講談社文庫
 今年2回目です。読めば読むほど味が出ます。深い。太宰治は何を考えて書いていたのでしょう。
 奥野健男氏の「自分の為に書いた」というのは、ちょっと違うのではないかと、私は思います。
 太宰治の作品 代表作も御覧ください。


 1999年 5月 
 我等なぜキリスト教徒となりし乎 安岡章太郎 井上洋治 光文社
 遠藤周作を代父として洗礼を受けた安岡章太郎氏と、遠藤周作氏とフランスへ行った神父井上洋治氏と 
 の対話をまとめた作品。遠藤周作氏の追悼のための本かな?
 難しいキリスト論ではなく、平易な文章で書かれているし、たとえを用いるなど、内容もわかりやすい。
 遠藤周作氏の『沈黙』をまた読もうと思ったし、『深い河』を早く読まなくてはと決意する。

 旧約聖書入門 三浦綾子 光文社文庫
 映画の「天地創造」も「十戒」も旧約聖書の中の物語だったことを、この本を読んで知る。(爆)
 でも、不思議に思ったのは、旧約聖書ってどこまで真実なんだろう?三浦氏は全部を真実だと信じてい
 るようだが。。。
 旧約聖書も読まなきゃね。

 白 痴 坂口安吾 新潮文庫
 比較的薄い本だが、読み終わるのに時間がかかってしまった。面白いけど古いかな?
 『戦争と一人の女』『私は海を抱きしめたい』が良かった。

 札幌着23時25分 西村京太郎 角川文庫
 久々の西村京太郎氏は面白かった。テンポ、歯切れが良く、息つかせぬ展開。
 10年以上前だから、ストーリーになる。今は携帯TELが普及しているから、ドラマに出来ないね。

 血い花 室井佑月 集英社
 テレビに作者が出演していたので、買った。ハッキリ言って驚いた。一昔前なら発売禁止ではないかな?
 「おま○こ」などの言葉がポンポン出てくる。
 卑猥な言葉、表現が多いのにもかかわらず、明るく、楽しく読めるのは、リズムが良いからでしょう。 

 十九、二十 原田宗典 新潮文庫
 原田宗典氏の作品を読んだのは初めて。二十の頃は何をしていたのか、考えてしまった。
 主人公に苛立ってしまったが、自分も同じ様なもんだったろうと思う。

 幸福の手紙 内田康夫 新潮文庫
 内田康夫氏の作品を久々に読んだ。避けていたのだが、古本屋で目に付いたので。。。
 そもそも、私はこの作家が嫌いなので、読んでいて、どうしてもアラばっかり気になってしまう。
 この人は自分の作品に酔い過ぎ。自信過剰。
 この作品は、読まない方がいいです。あまりにも出来過ぎてる。

 光あるうちに 三浦綾子 新潮文庫
 『道ありき』『この土の器をも』に続く自叙伝3部作の1作。信仰編。
 信仰入門として最高かもしれない。色々しがらみがなけらば、私もクリスチャンになるところ。
 教会に行ってみたい。「神なんか」って言ってた昔の自分が嘘のようだと思う。

 <超>読書法 小林信彦 文春文庫
 タイトルから想像した内容と違ったものであった。読書のノウハウものかと思ったが。。。
 紹介されている本を読んでみようとは、思った。早速『シンプル・プラン』買いました。

 レベル7 宮部みゆき 新潮文庫
 3月に買ったのだが、分厚いので読むのをためってしまって、、、
 しかし、600ページを何と!1日で読破!ゲームのような感覚で、一気に読める作品。
 でも、1日で読んでしまうと勿体ないかな?(笑)
 二重、三重の構造になっていて、面白い。読書は何度も騙されるのではないだろうか。
 宮部氏は、やっぱりよく調べている。

 夢判断 阿刀田高 新潮文庫
 阿刀田氏が直木賞、日本推理作家協会賞を受賞した、昭和52年〜昭和54年までの作品から選ばれた
 短編集。一番脂ののった時期だったのではないだろうか。
 今まで読んだ阿刀田氏の短編集と比較して、この短編集は一番面白かった。全部の作品が良いと言って
 も、過言ではないと思う。
 あえて取り上げれば、『あの人をころして』『ベター・ハーフ』『夢判断』『干魚と漏電』かな。

 黒い箱 阿刀田高 新潮文庫
 阿刀田氏の数少ない長編小説。何かもっとすごいオチがあるのかと思ったが、、、
 作品の中にちりばめられた、ジョークやちょっとした知識は面白い。
 あと、阿刀田氏の性に関する考察はすごい、納得するし、いつも考えさせられる。



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