1999年12月 |
チューイングガム 山田詠美 角川文庫 |
山田詠美さんの小説の中で人気のあるものです。その理由は読めばわかります。 「私自身を書き写したのではない」としつつも、私小説的だと思います。山田詠美さんはココのような 素敵な女性でしょう。 「小説は作家の心のフィクションである」としています、名言ですねぇ。 |
三島由紀夫 剣と寒紅 三島由紀夫 文芸春秋社 |
裁判で負けて、出版差し止めになった本です。古本屋で買いました。定価より高かった。。。(苦笑) 三島由紀夫の手紙を引用しているので、手紙にも著作権があるという裁判所の判断でした。しかし、三 島由紀夫の手紙の内容はさほど問題はないと思います。 三島由紀夫との関係が、あからさまに書かれていますので驚きです。信じる、信じないは読む人の判断 にゆだねられますが、内容全部を否定することはできないと思います。他にも証人がいるでしょう。 |
侏儒の言葉・西方の人 芥川龍之介 新潮文庫 |
『侏儒の言葉』のアフォリズムは、芥川龍之介の天才を実感できます。 『西方の人』は、芥川龍之介流の『聖書』の解釈か?今でも議論のある部分があるようですが、なかな か面白いです。 |
箱 男 安部公房 新潮文庫 |
読後、何とも不思議な感じの残る小説です。 箱の製法が妙に具体的で面白いです。安部公房氏は実際に作成してみたのだと思います。 そして、実際に箱をかぶって外を歩いたのかなぁ。。。(笑) |
催 眠 松岡圭祐 小学館文庫 |
平成11年に稲垣吾郎、菅野美穂主演の同タイトルの映画の原作本です。 新しいミステリーという感じですね、面白かったです。一気に読めます。 |
淋しい狩人 宮部みゆき 新潮文庫 |
田辺書店のイワさんと稔を中心に物語を繰り広げる連作短編集。 どの作品も良いですが『詫びない年月』『うそつき喇叭』が特に良かったです。 |
五千回の生死 宮本 輝 新潮文庫 |
9つの作品からなる短編集です。宮本輝氏は長編作品の数も多く良い作品が多いですが、短編もすごく 良いです。『復讐』と『バケツの底』が印象に残りました。 |
影法師 遠藤周作 新潮文庫 |
11つの作品からなる短編集です。人間と信仰に対する深い洞察力に感心します。 『ユリアとよぶ女』は、傑作です。非常に良い作品です。 |
1999年11月 |
最後の将軍−徳川慶喜− 司馬遼太郎 文春文庫 |
司馬遼太郎さんの小説を初めて読みました。1998年NHK大河ドラマの原作となった小説です。 わかりやすくて面白かったです。こんなことなら大河ドラマ見れば良かった。後悔先に立たず。 |
細川ガラシャ夫人 三浦綾子 新潮文庫 |
明智光秀の娘で細川忠興に嫁ぎ、クリスチャンとなった細川玉子の物語です。三浦綾子さんにとっては 初めての歴史小説でした。上巻の方を読んでいる時は、時代考証が足りないのではないかと思いました が、三浦さんちゃんと色々な本読んでいますね、、、下巻の後ろに参考文献がありました。 歴史は色々な説がありますからねぇ、、、 でも、明智光秀が織田信長の配下になった理由と、荒木村重の謀反の理由は違うような気がするなぁ。 そもそも、この部分ってこの作品に必要なかったとも思いました。 上巻は読むのが辛かったのですが、下巻になるとぐっと引き込まれるようになりました。明智光秀の謀 反の場面はさすがですね。もちろんラストが泣けます。 |
裁きの家 三浦綾子 新潮文庫 |
読み終わって、めちゃ暗くなりました。この作品で、三浦綾子さんは何を伝えたかったのでしょう。 でも『氷点』『塩狩峠』などの有名な作品より、『裁きの家』『残像』『帰りこぬ風』など、どちらか といえばマイナーな作品にこそ、三浦綾子さんの伝えたいことがあるのではないでしょうか。 |
初ものがたり 宮部みゆき 新潮文庫 |
『本所深川ふしぎ草紙』で初登場した岡っ引き、回向院の茂七が主人公の連作形式の捕物帖です。 江戸の「初もの」がからんだ6つの短編、それぞれが面白く、さらには2つの謎が続いています。 早く続きを読みたいです。 |
Amy Shows 山田詠美 新潮社 |
山田詠美さんの「旅と読書の記録」です。「エッセーは小説よりむしろ気を使う分野」だそうです。 言葉がよく出てくるなぁ、と思います。「偏見だらけの新人賞選び」が面白かったです。 |
電脳文章作法 菅谷 充 小学館文庫 |
パソコン文章の先駆者である菅谷充さんが、文章執筆の全工程において、いかにパソコンを活用してい くかを紹介する作品です。 ネタの探し方から、原稿の書き方、作品の発表の仕方まで、非常にわかりやすいです。 |
日本官僚白書 佐高 信 講談社文庫 |
具体的事例で迫る「お役所」の実態を書いた作品です。ちょっと前の作品なのですが、私にとっては色 々な意味で興味深かったです。 |
智恵子抄 高村光太郎 新潮文庫 |
感動しました。私は中学生の頃国語の授業の時間に聞いた、高村光太郎氏自身が朗読したテープの声が 今でも忘れられません。狂った智恵子は口を聞かない。 |
千羽鶴 川端康成 新潮文庫 |
吉村昭氏が『わが心の小説家たち』の中で、この小説をほめていましたので読んでみました。 たんたんと物語が進んでいくと行った感じで、特に大きな事件はないのですが、綺麗で心に残る作品で す。『雪国』が難しくて、川端康成はあまり読みたくなかったのですが、読まず嫌いはいけませんね。 |
風に吹かれて 五木寛之 集英社文庫 |
五木寛之氏の超有名なエッセー集。単行本、文庫本合わせて400万部以上売れたそうです。 直木賞を受賞した頃に書かれたもので、売れた理由がよくわかります。とても面白いです。 最近の『大河の一滴』より、ずっと良かったです。五木寛之氏のすごく率直な気持ちが書かれているか らではないでしょうか。 |
1999年10月 |
斜 陽 太宰 治 集英社文庫 |
1999年100冊目に選んだ本は、当然これ。そしてこの小説を読んだのは10回目です。 今年発刊された集英社のを読みました。もちろん内容は同じです。(笑) でも、東郷先生の解説が良いですし、俳優の風間杜夫の鑑賞がグッときます。 斜陽を御覧ください。 |
沈 黙 遠藤周作 新潮文庫 |
遠藤周作氏のページを作りたくて、作るなら『沈黙』でしょうということで、再読しました。 前回読んだ時に比べると私の聖書に関する知識が多くなったので、印象がずいぶん違いました。 傑作ですね、ほんと。遠藤周作『沈黙』を御覧ください。 |
「深い河」をさぐる 遠藤周作 文春文庫 |
遠藤周作氏と俳優の本木雅弘さんなど9人の方との対談集です。遠藤周作氏の本音が見えて面白いです。 宗教や人間の生死に限らず、文壇を批判しているような発言などもあります。 『深い河』と『沈黙』を読んでから読みましょう。 |
龍は眠る 宮部みゆき 新潮文庫 |
宮部みゆきさんは、この作品で平成4年に日本推理作家協会賞を受賞しました。この作品は宮部作品の 中では人気があるようなのですが、私としては今一でした。何か唐突な展開があるんですよね。 超能力を持った二人の少年の物語なのですが、その能力を持ったことによる苦悩を書くなど、今までの 作家が全く考えなかったことを追求しているのは良いです。 |
日本国の研究 猪瀬直樹 文春文庫 |
猪瀬直樹さんの講演に行くにあたり、読みました。私のこれまでの経験と関係があることが書いてある ので、非常に興味深かったです。 わかりやすく書いているのですが、やっぱり専門的なことなので、難しいと思います。 この作品をきっかけに、是正されたこともあるようです。 |
中央線の呪い 三善理沙子 扶桑社文庫 |
中央線の魔力を痛快に解き明かす作品だそうです。呪いはともかく、中央線各駅のガイドとして役立ち ますので、中央線人、中央線に興味のある人、必見です! しかし、、、ここまで書くとはすごいよ。(笑) |
パーフェクト・ブルー 宮部みゆき 創元推理文庫 |
宮部みゆきさん初の長編です。最初の方の展開は何かつまらなく読んでいたのですが、ラストに向かっ ての意外な展開は素晴らしい!!こういう作品を書ける宮部さんの頭の構造は、一体どうなっているの でしょうか? |
フルハウス 柳 美里 文春文庫 |
『フルハウス』と『もやし』が収載されています。柳美里さんの感性って独特な感じがします。 情景が浮かんでくるような描写がとても良いです。 「フルハウス」って、どういう意味なのでしょうか? |
おみそれ社会 星 新一 新潮文庫 |
ショートショートの作品集です。前にも読んだことがあるのですが、実はこの中の『手紙』という作品 は、太宰治の『猿面冠者』に影響を受けていると思うのです。 きっとそうだよなぁ。 |
ハイパワー速読速解法 速読速解センター メディア・ルウ |
5、6年前に読んだのですが、その時は訓練を途中で挫折。たった10分間なのですが、毎日毎日する のって難しいものです。今回もダメだなぁ、きっと。。。(爆) 根性ないな、私。本を早く読みたい気持ちは強いのですがね。。。 |
豊臣秀長 堺屋太一 文春文庫 |
天下人となった豊臣秀吉の弟である豊臣秀長の物語です。秀長なくして、秀吉が天下をとることはあり えなかったでしょう。また、織田信長の革命的な考え、荒木村重、明智光秀の謀反など、戦国時代にお ける色々な誤解されがちな事柄について、すごくわかりやすく書いています。 余談ですが、歴史小説は登場人物が多い上に、名前が途中で変わるので混乱しますね。(笑) |
1999年 9月 |
ぼくは勉強ができない 山田詠美 新潮文庫 |
買ったものの、中学生や高校生向きの小説かなと思い、今まで読むのをためらっていました。 しかし、面白い本を読んだ時って、いつも思うのですが、もっと早く読めば良かったぁ。。。(笑) もし、私が高校生の頃この作品を読んでいれば(年次的に無理な話だが)、私の青春も、もっと違った ものかもしれなかったと思いました。しかし、山田詠美さんはあとがきで、「この本を大人の方に読ん でいただきたいと思う」としており、更に「同時代性という言葉を信じていないからだ」と続けていて、 なるほどと思います。 振り返ってみるから青春なんでしょうかね。楽しいことも悲しいことも、青春の思い出になりました。 |
幻色江戸ごよみ 宮部みゆき 新潮文庫 |
12の時代物作品からなる短編集です。全般的に良いのですが、『鬼子母火』が、ちょっと読みにくく、 『だるま猫』の描写がわかりにくくて、どうしたのだろうと思いました。宮部さん疲れていたのかな? 『紅の玉』の何とも言えないラスト、『器量のぞみ』は良かったです。 特に、解説で縄田さんが誉めている『神無月』が傑作です。感情を表さない押さえた筆致であることに より、読む者に感動を余計に与えるのではないでしょうか。 |
わが青春に出会った本 三浦綾子 新潮文庫 |
「本の虫」とまで言われた三浦綾子さんが、青春時代に読んで感動した本を紹介しています。 『デミアン』『眠られぬ夜のために』『放浪記』を読みたくなりました。太宰治の『人間失格』につい ても書かれています。三浦綾子さんは、太宰治が死ぬ時まで、太宰治を知らなかったそうです。 「太宰治の文学には、確かに人の魂を深淵に引きずりこむような魅力があり、デモーニッシュな力があ る」と書いてます。『人間失格』の「ただ、一さいは過ぎて行きます。」という言葉をキリストの言葉 と比較しているところが、非常に興味深い。太宰治をもっと理解するためには、やはり聖書を読まなく てはダメですね。 |
死海のほとり 遠藤周作 新潮文庫 |
遠藤周作氏の作品を読むと、驚くことが多いのですが、この作品にも私にとっては、たくさんの新しい 事実があって、非常に驚くとともに、感動しました。 作家である主人公の「私」が、イスラエルに住む学生時代の友人の戸田と一緒に、イエスの足跡を辿る 「巡礼」と、イエスと出逢った人達がイエスを語る「群像の一人」が交互に書かれて、一つの作品とな っています。 熊本牧師の「今の聖書学者は自分の足を食う章魚(たこ)ですな。自分で聖書を食って聖書の本質的な ものを見失っている。信仰とはね、あんた、素直に謙虚に神の言葉を受け入れることですよ」という言 葉が非常に印象的です。真実のイエス像を追った遠藤氏が、信仰とはそのようなものではない、と自分 に言い聞かせたのではないでしょうか。 |
地下街の雨 宮部みゆき 集英社文庫 |
7つの現代物ミステリーからなる短編集です。『決して見えない』は、阿刀田高氏の作品に感じが似て いると思いました。『混線』『ムクロバラ』が恐かったです。『さよなら、キリハラさん』は、権力へ の反抗みたいな気持ちを表しているのかなぁ。 解説を女優の室井滋さんが書いていて、宮部みゆきさんとの対談の話とか面白いです。 |
わが心の小説家たち 吉村 昭 平凡新書 |
吉村昭氏初めての作家論で、森鴎外、志賀直哉、川端康成、梶井基次郎、太宰治などのことを書いてい ます。この作品を読んで、川端康成の『千羽鶴』『掌の小説』、林芙美子の『骨』などを読みたくなり ました。良い小説、文章を書こうと思うと、良い小説、文章を読まなくてはいけないのですね。 吉村氏は、森鴎外の小説の文章などをよく写したそうです。 太宰治の作品では『満願』を誉めています。また、吉村氏は太宰治が入水した玉川上水のほとりに住ん でいるそうです。 |
アメリカひじき・火垂るの墓 野坂昭如 新潮文庫 |
6つの作品からなる短編集です。9月17日に野坂昭如さんの講演があって、それに行くにあたり、読 んでみました。『火垂るの墓』は映画化されましたよね。 まず、驚いたのは、変わった文体です。助詞、句読点が少ないので、慣れるまですごく読みづらいです。 でも、カットバックの手法を多用した作品は、どれも面白いです。感情を押し殺し、淡々とした文章で 書かれた『火垂るの墓』は、胸に来るものがあります。 『ラ・クンパルシータ』と『プアボーイ』のつながりも面白いです。 |
たけしくん、ハイ! ビートたけし 新潮文庫 |
ビートたけし氏の少年時代を書いた作品です。私とずいぶん年齢が離れていますが、少年時代の感性み たいなものには、共通する部分があるような気がしました。 読者に語っている文章が印象的なのですが、それよりも、ビートたけし氏が描いている挿し絵が、すご く上手くて、彼の才能に改めて驚きました。 |
花 芯 瀬戸内晴美 文春文庫 |
瀬戸内寂聴さんが、まだ出家する前、晴美さん時代に書いた5つの作品からなる短編集です。 瀬戸内さんの対談集や今昔物語は読んだのですが、小説を読んだのは初めてです。上手いと思います。 文庫のタイトルにもなっている『花芯』は、発表当時、悪評の総攻撃を受け、瀬戸内さんは、5年間も の間文芸雑誌に作品を発表できなかったそうです。文壇とは恐ろしいところですねぇ。。。 その『花芯』ですが、文芸評論家の平野謙氏が「子宮という言葉の乱用」と批評したそうです。この人 の罪は大きいでしょう。じゃあ、自分でこれ以上の作品を書いてみなさい!という感じです。 「子宮」という言葉の乱用(私は乱用とは全く思いませんが)にしか目がいかない、平野氏って情けな いと思います。この人って、全然作品を読む能力がないのに、文芸評論家だったのですねぇ。。。 |
日本語練習帳 大野 晋 岩波新書 |
ベストセラーになっており、何だか面白そうなので読んでみました。最初の練習問題でつまづいたので、 挫折しそうになったのですが、何とか読み終わりました。思ったより難しかったです。。。(笑) でも、わかりやすく書いており、とても勉強になりました。小説とか物を書こうとする方におすすめの 1冊です。「小説の神様」志賀直哉を否定しているところが、私にとってはうれしかったです。太宰治 の『斜陽』の敬語についても指摘しています。 |
海と毒薬 遠藤周作 角川文庫 |
3年くらい前に一度読んだのですが、角川文庫のキャラクターガールになっている、女優の深田恭子さ んが、この作品について「ものすごい衝撃を受けた作品です」と書いてありましたので、再び読みたく なりました。 この3年の間に、遠藤周作氏の作品をいくつか読みましたので、再び読むと受ける感じが変わります。 自分の犯した行為に無感動な戸田は、同じく遠藤周作氏の『真昼の悪魔』で、より鮮明に描かれている のではないのでしょうか? |
残 像 三浦綾子 集英社文庫 |
5月に買ったものの、546ページと分厚いので、積ん読になっていました。しかし、三浦綾子さんの 作品は、読み始めるとやめられなくなります。この作品は暗いなぁ。『帰りこぬ風』と同様、救いの無 い作品で、やり切れない思いが残ります。三浦綾子さんは、何を読者に伝えたいのだろう? 私の実家のある地名が出てきたのがうれしかった。 |