Reading 1999



12月( 8冊) 11月(10冊) 10月(11冊) 9月(12冊)


 1999年12月 
 チューイングガム 山田詠美 角川文庫
 山田詠美さんの小説の中で人気のあるものです。その理由は読めばわかります。
 「私自身を書き写したのではない」としつつも、私小説的だと思います。山田詠美さんはココのような 
 素敵な女性でしょう。
 「小説は作家の心のフィクションである」としています、名言ですねぇ。

 三島由紀夫 剣と寒紅 三島由紀夫 文芸春秋社
 裁判で負けて、出版差し止めになった本です。古本屋で買いました。定価より高かった。。。(苦笑)
 三島由紀夫の手紙を引用しているので、手紙にも著作権があるという裁判所の判断でした。しかし、三
 島由紀夫の手紙の内容はさほど問題はないと思います。
 三島由紀夫との関係が、あからさまに書かれていますので驚きです。信じる、信じないは読む人の判断
 にゆだねられますが、内容全部を否定することはできないと思います。他にも証人がいるでしょう。

 侏儒の言葉・西方の人 芥川龍之介 新潮文庫
 『侏儒の言葉』のアフォリズムは、芥川龍之介の天才を実感できます。
 『西方の人』は、芥川龍之介流の『聖書』の解釈か?今でも議論のある部分があるようですが、なかな
 か面白いです。

 箱 男 安部公房 新潮文庫
 読後、何とも不思議な感じの残る小説です。
 箱の製法が妙に具体的で面白いです。安部公房氏は実際に作成してみたのだと思います。
 そして、実際に箱をかぶって外を歩いたのかなぁ。。。(笑)

 催 眠 松岡圭祐 小学館文庫
 平成11年に稲垣吾郎、菅野美穂主演の同タイトルの映画の原作本です。
 新しいミステリーという感じですね、面白かったです。一気に読めます。

 淋しい狩人 宮部みゆき 新潮文庫
 田辺書店のイワさんと稔を中心に物語を繰り広げる連作短編集。
 どの作品も良いですが『詫びない年月』『うそつき喇叭』が特に良かったです。

 五千回の生死 宮本 輝 新潮文庫
 9つの作品からなる短編集です。宮本輝氏は長編作品の数も多く良い作品が多いですが、短編もすごく
 良いです。『復讐』と『バケツの底』が印象に残りました。

 影法師 遠藤周作 新潮文庫
 11つの作品からなる短編集です。人間と信仰に対する深い洞察力に感心します。
 『ユリアとよぶ女』は、傑作です。非常に良い作品です。


 1999年11月 
 最後の将軍−徳川慶喜− 司馬遼太郎 文春文庫
 司馬遼太郎さんの小説を初めて読みました。1998年NHK大河ドラマの原作となった小説です。
 わかりやすくて面白かったです。こんなことなら大河ドラマ見れば良かった。後悔先に立たず。

 細川ガラシャ夫人 三浦綾子 新潮文庫
 明智光秀の娘で細川忠興に嫁ぎ、クリスチャンとなった細川玉子の物語です。三浦綾子さんにとっては 
 初めての歴史小説でした。上巻の方を読んでいる時は、時代考証が足りないのではないかと思いました
 が、三浦さんちゃんと色々な本読んでいますね、、、下巻の後ろに参考文献がありました。
  歴史は色々な説がありますからねぇ、、、
  でも、明智光秀が織田信長の配下になった理由と、荒木村重の謀反の理由は違うような気がするなぁ。
 そもそも、この部分ってこの作品に必要なかったとも思いました。
  上巻は読むのが辛かったのですが、下巻になるとぐっと引き込まれるようになりました。明智光秀の謀
 反の場面はさすがですね。もちろんラストが泣けます。

 裁きの家 三浦綾子 新潮文庫
 読み終わって、めちゃ暗くなりました。この作品で、三浦綾子さんは何を伝えたかったのでしょう。
 でも『氷点』『塩狩峠』などの有名な作品より、『裁きの家』『残像』『帰りこぬ風』など、どちらか
 といえばマイナーな作品にこそ、三浦綾子さんの伝えたいことがあるのではないでしょうか。

 初ものがたり 宮部みゆき 新潮文庫
 『本所深川ふしぎ草紙』で初登場した岡っ引き、回向院の茂七が主人公の連作形式の捕物帖です。
 江戸の「初もの」がからんだ6つの短編、それぞれが面白く、さらには2つの謎が続いています。
 早く続きを読みたいです。

 Amy Shows 山田詠美 新潮社
 山田詠美さんの「旅と読書の記録」です。「エッセーは小説よりむしろ気を使う分野」だそうです。
 言葉がよく出てくるなぁ、と思います。「偏見だらけの新人賞選び」が面白かったです。

 電脳文章作法 菅谷 充 小学館文庫
 パソコン文章の先駆者である菅谷充さんが、文章執筆の全工程において、いかにパソコンを活用してい
 くかを紹介する作品です。
 ネタの探し方から、原稿の書き方、作品の発表の仕方まで、非常にわかりやすいです。

 日本官僚白書 佐高 信 講談社文庫
 具体的事例で迫る「お役所」の実態を書いた作品です。ちょっと前の作品なのですが、私にとっては色
 々な意味で興味深かったです。

 智恵子抄 高村光太郎 新潮文庫
 感動しました。私は中学生の頃国語の授業の時間に聞いた、高村光太郎氏自身が朗読したテープの声が
 今でも忘れられません。狂った智恵子は口を聞かない。

 千羽鶴 川端康成 新潮文庫
 吉村昭氏が『わが心の小説家たち』の中で、この小説をほめていましたので読んでみました。
 たんたんと物語が進んでいくと行った感じで、特に大きな事件はないのですが、綺麗で心に残る作品で
 す。『雪国』が難しくて、川端康成はあまり読みたくなかったのですが、読まず嫌いはいけませんね。

 風に吹かれて 五木寛之 集英社文庫
 五木寛之氏の超有名なエッセー集。単行本、文庫本合わせて400万部以上売れたそうです。
 直木賞を受賞した頃に書かれたもので、売れた理由がよくわかります。とても面白いです。
 最近の『大河の一滴』より、ずっと良かったです。五木寛之氏のすごく率直な気持ちが書かれているか
 らではないでしょうか。


 1999年10月 
 斜 陽 太宰 治 集英社文庫
 1999年100冊目に選んだ本は、当然これ。そしてこの小説を読んだのは10回目です。     
 今年発刊された集英社のを読みました。もちろん内容は同じです。(笑)
 でも、東郷先生の解説が良いですし、俳優の風間杜夫の鑑賞がグッときます。
 斜陽を御覧ください。

 沈 黙 遠藤周作 新潮文庫
 遠藤周作氏のページを作りたくて、作るなら『沈黙』でしょうということで、再読しました。     
 前回読んだ時に比べると私の聖書に関する知識が多くなったので、印象がずいぶん違いました。
 傑作ですね、ほんと。遠藤周作『沈黙』を御覧ください。

 「深い河」をさぐる 遠藤周作 文春文庫
 遠藤周作氏と俳優の本木雅弘さんなど9人の方との対談集です。遠藤周作氏の本音が見えて面白いです。
 宗教や人間の生死に限らず、文壇を批判しているような発言などもあります。
 『深い河』と『沈黙』を読んでから読みましょう。

 龍は眠る 宮部みゆき 新潮文庫
 宮部みゆきさんは、この作品で平成4年に日本推理作家協会賞を受賞しました。この作品は宮部作品の 
 中では人気があるようなのですが、私としては今一でした。何か唐突な展開があるんですよね。
 超能力を持った二人の少年の物語なのですが、その能力を持ったことによる苦悩を書くなど、今までの
 作家が全く考えなかったことを追求しているのは良いです。

 日本国の研究 猪瀬直樹 文春文庫
 猪瀬直樹さんの講演に行くにあたり、読みました。私のこれまでの経験と関係があることが書いてある
 ので、非常に興味深かったです。
 わかりやすく書いているのですが、やっぱり専門的なことなので、難しいと思います。
 この作品をきっかけに、是正されたこともあるようです。

 中央線の呪い 三善理沙子 扶桑社文庫
 中央線の魔力を痛快に解き明かす作品だそうです。呪いはともかく、中央線各駅のガイドとして役立ち 
 ますので、中央線人、中央線に興味のある人、必見です!
 しかし、、、ここまで書くとはすごいよ。(笑) 

 パーフェクト・ブルー 宮部みゆき 創元推理文庫
 宮部みゆきさん初の長編です。最初の方の展開は何かつまらなく読んでいたのですが、ラストに向かっ
 ての意外な展開は素晴らしい!!こういう作品を書ける宮部さんの頭の構造は、一体どうなっているの
 でしょうか?

 フルハウス 柳 美里 文春文庫
 『フルハウス』と『もやし』が収載されています。柳美里さんの感性って独特な感じがします。
 情景が浮かんでくるような描写がとても良いです。
 「フルハウス」って、どういう意味なのでしょうか?

 おみそれ社会 星 新一 新潮文庫
 ショートショートの作品集です。前にも読んだことがあるのですが、実はこの中の『手紙』という作品
 は、太宰治の『猿面冠者』に影響を受けていると思うのです。
 きっとそうだよなぁ。

 ハイパワー速読速解法 速読速解センター メディア・ルウ
 5、6年前に読んだのですが、その時は訓練を途中で挫折。たった10分間なのですが、毎日毎日する
 のって難しいものです。今回もダメだなぁ、きっと。。。(爆)
 根性ないな、私。本を早く読みたい気持ちは強いのですがね。。。

 豊臣秀長 堺屋太一 文春文庫
 天下人となった豊臣秀吉の弟である豊臣秀長の物語です。秀長なくして、秀吉が天下をとることはあり
 えなかったでしょう。また、織田信長の革命的な考え、荒木村重、明智光秀の謀反など、戦国時代にお
 ける色々な誤解されがちな事柄について、すごくわかりやすく書いています。
 余談ですが、歴史小説は登場人物が多い上に、名前が途中で変わるので混乱しますね。(笑)


 1999年 9月 
 ぼくは勉強ができない 山田詠美 新潮文庫
 買ったものの、中学生や高校生向きの小説かなと思い、今まで読むのをためらっていました。     
 しかし、面白い本を読んだ時って、いつも思うのですが、もっと早く読めば良かったぁ。。。(笑)
 もし、私が高校生の頃この作品を読んでいれば(年次的に無理な話だが)、私の青春も、もっと違った
 ものかもしれなかったと思いました。しかし、山田詠美さんはあとがきで、「この本を大人の方に読ん
 でいただきたいと思う」としており、更に「同時代性という言葉を信じていないからだ」と続けていて、
 なるほどと思います。
 振り返ってみるから青春なんでしょうかね。楽しいことも悲しいことも、青春の思い出になりました。

 幻色江戸ごよみ 宮部みゆき 新潮文庫
 12の時代物作品からなる短編集です。全般的に良いのですが、『鬼子母火』が、ちょっと読みにくく、
 『だるま猫』の描写がわかりにくくて、どうしたのだろうと思いました。宮部さん疲れていたのかな?
 『紅の玉』の何とも言えないラスト、『器量のぞみ』は良かったです。
 特に、解説で縄田さんが誉めている『神無月』が傑作です。感情を表さない押さえた筆致であることに
 より、読む者に感動を余計に与えるのではないでしょうか。

 わが青春に出会った本 三浦綾子 新潮文庫
 「本の虫」とまで言われた三浦綾子さんが、青春時代に読んで感動した本を紹介しています。
 『デミアン』『眠られぬ夜のために』『放浪記』を読みたくなりました。太宰治の『人間失格』につい
 ても書かれています。三浦綾子さんは、太宰治が死ぬ時まで、太宰治を知らなかったそうです。
 「太宰治の文学には、確かに人の魂を深淵に引きずりこむような魅力があり、デモーニッシュな力があ
 る」と書いてます。『人間失格』の「ただ、一さいは過ぎて行きます。」という言葉をキリストの言葉
 と比較しているところが、非常に興味深い。太宰治をもっと理解するためには、やはり聖書を読まなく
 てはダメですね。

 死海のほとり 遠藤周作 新潮文庫
 遠藤周作氏の作品を読むと、驚くことが多いのですが、この作品にも私にとっては、たくさんの新しい
 事実があって、非常に驚くとともに、感動しました。
 作家である主人公の「私」が、イスラエルに住む学生時代の友人の戸田と一緒に、イエスの足跡を辿る
 「巡礼」と、イエスと出逢った人達がイエスを語る「群像の一人」が交互に書かれて、一つの作品とな
 っています。
 熊本牧師の「今の聖書学者は自分の足を食う章魚(たこ)ですな。自分で聖書を食って聖書の本質的な
 ものを見失っている。信仰とはね、あんた、素直に謙虚に神の言葉を受け入れることですよ」という言
 葉が非常に印象的です。真実のイエス像を追った遠藤氏が、信仰とはそのようなものではない、と自分
 に言い聞かせたのではないでしょうか。

 地下街の雨 宮部みゆき 集英社文庫
 7つの現代物ミステリーからなる短編集です。『決して見えない』は、阿刀田高氏の作品に感じが似て
 いると思いました。『混線』『ムクロバラ』が恐かったです。『さよなら、キリハラさん』は、権力へ
 の反抗みたいな気持ちを表しているのかなぁ。
 解説を女優の室井滋さんが書いていて、宮部みゆきさんとの対談の話とか面白いです。

 わが心の小説家たち 吉村 昭 平凡新書
 吉村昭氏初めての作家論で、森鴎外、志賀直哉、川端康成、梶井基次郎、太宰治などのことを書いてい
 ます。この作品を読んで、川端康成の『千羽鶴』『掌の小説』、林芙美子の『骨』などを読みたくなり
 ました。良い小説、文章を書こうと思うと、良い小説、文章を読まなくてはいけないのですね。
 吉村氏は、森鴎外の小説の文章などをよく写したそうです。
 太宰治の作品では『満願』を誉めています。また、吉村氏は太宰治が入水した玉川上水のほとりに住ん
 でいるそうです。

 アメリカひじき・火垂るの墓 野坂昭如 新潮文庫
 6つの作品からなる短編集です。9月17日に野坂昭如さんの講演があって、それに行くにあたり、読
 んでみました。『火垂るの墓』は映画化されましたよね。
 まず、驚いたのは、変わった文体です。助詞、句読点が少ないので、慣れるまですごく読みづらいです。
 でも、カットバックの手法を多用した作品は、どれも面白いです。感情を押し殺し、淡々とした文章で
 書かれた『火垂るの墓』は、胸に来るものがあります。
 『ラ・クンパルシータ』と『プアボーイ』のつながりも面白いです。

 たけしくん、ハイ! ビートたけし 新潮文庫
 ビートたけし氏の少年時代を書いた作品です。私とずいぶん年齢が離れていますが、少年時代の感性み
 たいなものには、共通する部分があるような気がしました。
 読者に語っている文章が印象的なのですが、それよりも、ビートたけし氏が描いている挿し絵が、すご
 く上手くて、彼の才能に改めて驚きました。

 花 芯 瀬戸内晴美 文春文庫
 瀬戸内寂聴さんが、まだ出家する前、晴美さん時代に書いた5つの作品からなる短編集です。
 瀬戸内さんの対談集や今昔物語は読んだのですが、小説を読んだのは初めてです。上手いと思います。
 文庫のタイトルにもなっている『花芯』は、発表当時、悪評の総攻撃を受け、瀬戸内さんは、5年間も
 の間文芸雑誌に作品を発表できなかったそうです。文壇とは恐ろしいところですねぇ。。。
 その『花芯』ですが、文芸評論家の平野謙氏が「子宮という言葉の乱用」と批評したそうです。この人
 の罪は大きいでしょう。じゃあ、自分でこれ以上の作品を書いてみなさい!という感じです。
 「子宮」という言葉の乱用(私は乱用とは全く思いませんが)にしか目がいかない、平野氏って情けな
 いと思います。この人って、全然作品を読む能力がないのに、文芸評論家だったのですねぇ。。。

 日本語練習帳 大野 晋 岩波新書
 ベストセラーになっており、何だか面白そうなので読んでみました。最初の練習問題でつまづいたので、
 挫折しそうになったのですが、何とか読み終わりました。思ったより難しかったです。。。(笑)
 でも、わかりやすく書いており、とても勉強になりました。小説とか物を書こうとする方におすすめの
 1冊です。「小説の神様」志賀直哉を否定しているところが、私にとってはうれしかったです。太宰治
 の『斜陽』の敬語についても指摘しています。

 海と毒薬 遠藤周作 角川文庫
 3年くらい前に一度読んだのですが、角川文庫のキャラクターガールになっている、女優の深田恭子さ
 んが、この作品について「ものすごい衝撃を受けた作品です」と書いてありましたので、再び読みたく
 なりました。
 この3年の間に、遠藤周作氏の作品をいくつか読みましたので、再び読むと受ける感じが変わります。
 自分の犯した行為に無感動な戸田は、同じく遠藤周作氏の『真昼の悪魔』で、より鮮明に描かれている
 のではないのでしょうか?

 残 像 三浦綾子 集英社文庫
 5月に買ったものの、546ページと分厚いので、積ん読になっていました。しかし、三浦綾子さんの
 作品は、読み始めるとやめられなくなります。この作品は暗いなぁ。『帰りこぬ風』と同様、救いの無
 い作品で、やり切れない思いが残ります。三浦綾子さんは、何を読者に伝えたいのだろう?
 私の実家のある地名が出てきたのがうれしかった。



目 次 斜 陽 読書な日々 何でも伝言板 チャット リンク エトセトラ プロフィール