太宰治ゆかりの場所 吉祥寺




 帰途、吉祥寺駅から、どしゃ降りの中を人力車に乗って
 帰った。車夫は、よぼよぼの老爺である。老爺は、びしょ
 濡れになって、よたよた走り、ううむ、ううむと苦しげ
 に呻くのである。私は、ただ叱った。
                   『善蔵を思う』

 鶴はその日、森ちゃんを吉祥寺駅まで送って、森ちゃん  には高円寺行きの切符を、自分は三鷹行きの切符を買い、  プラットフォムの混雑にまぎれて、そっと森ちゃんの手  を握ってから、別れた。                       『犯人』
 そうして、スルメを二枚お土産にもらって、吉祥寺駅に  着いた時には、もう暗くなっていて、雪は一尺以上も積  り、なおその上やまずひそひそと降っていました。
                   『雪の夜の話』
 吉祥寺駅


 吉祥寺で降りて、本当にもう何年振りかで井の頭公園に 
 歩いて行って見ました。池のはたの杉の木が、すっかり
 伐り払われて、何かこれから工事でもはじめられる土地
 みたいに、へんにむき出しの寒々した感じで、昔とすっ
 かり変わっていました。
                  『ヴィヨンの妻』


 かれ、秋の一夜、学生たちと井の頭公園に出てゆき、途
 にて学生たちに問いて言いたまう「人々は我を誰と言う
 か。」答えて言う「にせもの。或人は、嘘つき。また或
 人は、おっちょこちょい。或人は、酒乱者の一人」

                       『誰』
 晩秋の或る日曜日、ふたりは東京郊外の井の頭公園であ   いびきをした。午前十時。  時刻も悪ければ、場所も悪かった。けれども二人には、  金が無かった。いばらの奥深く掻きわけて行っても、す  ぐ傍を分別顔の、子供づれの家族がとおる。ふたり切り  になれない。                       『犯人』
井の頭公園 

 昼すこし過ぎにやっと書き終えて、ほっとしていたとこ
 ろへ、実に久しぶりの友人が、ひょっこり訪ねて来た。
 ちょうどいいところであった。私は、その友人と一緒に、
 ごはんを食べ、よもやまの話をして、それから散歩に出
 たである。家の近くの、井の頭公園の森に入った時、私
 は、やっと自分の大変な姿に気が附いた。

                  『服装について』
 その酒の店からの帰り道、井の頭公園の林の中で、私は  二、三人の産業戦士に逢った。その中の1人が、すっと  私の前に立ちふさがり、火を貸して下さい、と叮嚀な物  腰で言った。                    『作家の手帖』
 井の頭公園


 井の頭公園の池のほとりに、老夫婦二人きりで営んでい 
 る小さい茶店が一軒ある。私は、私の三鷹の家に、ほん
 のたまに訪れる来る友人たちを、その茶店に案内する事
 にしているのである。
                    『乞食学生』

 井の頭。もう日が暮れかけていた。公園にはいると、カ  ナカナ蝉の声が、降るようだった。御殿山。宝亭は、す  ぐにわかった。                     『日の出前』
 それから、家のすぐ近くの井の頭公園に一緒に出かけて、  私はこんな時、いつも残念に思うのだが、先生は少しも  風流ではないのである。                  『黄村先生言行録』
井の頭公園 野口雨情の碑 


斜 陽 太宰 治 山崎富栄 太宰治の年譜 太宰治の作品 太宰治のエピソード 太宰治を知るために

太宰治のレポート 太宰治ゆかりの場所 太宰治リンク 太宰治クロスワード

目 次 読書な日々 何でも伝言板 チャット リンク エトセトラ プロフィール