帰途、吉祥寺駅から、どしゃ降りの中を人力車に乗って 帰った。車夫は、よぼよぼの老爺である。老爺は、びしょ 濡れになって、よたよた走り、ううむ、ううむと苦しげ に呻くのである。私は、ただ叱った。 『善蔵を思う』 |
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吉祥寺駅 |
吉祥寺で降りて、本当にもう何年振りかで井の頭公園に 歩いて行って見ました。池のはたの杉の木が、すっかり 伐り払われて、何かこれから工事でもはじめられる土地 みたいに、へんにむき出しの寒々した感じで、昔とすっ かり変わっていました。 『ヴィヨンの妻』 |
かれ、秋の一夜、学生たちと井の頭公園に出てゆき、途 にて学生たちに問いて言いたまう「人々は我を誰と言う か。」答えて言う「にせもの。或人は、嘘つき。また或 人は、おっちょこちょい。或人は、酒乱者の一人」 |
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井の頭公園 |
昼すこし過ぎにやっと書き終えて、ほっとしていたとこ ろへ、実に久しぶりの友人が、ひょっこり訪ねて来た。 ちょうどいいところであった。私は、その友人と一緒に、 ごはんを食べ、よもやまの話をして、それから散歩に出 たである。家の近くの、井の頭公園の森に入った時、私 は、やっと自分の大変な姿に気が附いた。 |
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井の頭公園 |
井の頭公園の池のほとりに、老夫婦二人きりで営んでい る小さい茶店が一軒ある。私は、私の三鷹の家に、ほん のたまに訪れる来る友人たちを、その茶店に案内する事 にしているのである。 『乞食学生』 |
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井の頭公園 野口雨情の碑 |