そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ちどまったり、 乾物屋の乾蝦や棒鱈や湯葉をながめたり、とうとう私は二条の方へ寺町を下り、其処の果物 屋で足を留めた。此処でちょっとその果物屋を紹介したいのだが、その果物屋は私の知って いた範囲で最も好きな店であった。 梶井基次郎『檸檬』 |
その果物屋 「八百卯」 京都市中京区寺町二条 |
一体私はあの檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあ の単純な色も、それからあの丈の詰った紡錘形の恰好も。――結局私はそれを一つだけ買う ことにした。 梶井基次郎『檸檬』 |
今も店頭には「檸檬」が並ぶ。 |