日比谷公園 | 有名な西洋料理屋 日比谷公園 松本楼 |
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その夜、二人は、帝国ホテルの部屋で、薬をのんだ。二 人、きちんとソファに並んで坐ったまま、冷くなってい た。深夜、中年の給仕人が、それを見つけた。察してい たのである。落ちついて、その部屋から忍び出て、そっ と支配人をゆり起こした。すべて、静粛に行われた。ホ テル全体は朝までひっそり眠っていた。須々木乙彦は、 完全に、こと切れていた。 女は生きた。 太宰治『火の鳥』 |
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帝国ホテル |
晩秋の夜、音楽会もすみ、日比谷公会堂から、おびただ しい数の烏が、さまざまの形をして、押し合い、もみ合 いしながらぞろぞろ出て来て、やがておのおのの家路に 向かって、むらむらぱっと飛び立つ。 太宰治『渡り鳥』 |
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日比谷公会堂 |
「近代音楽の堕落は、僕は、ベートーヴェンあたりから はじまっていると思うのです。音楽が人間の生活に向き 合って対決を迫るとは、邪道だと思うんです。音楽の本 質は、あくまでも生活の伴奏であるべきだと思うんです。 僕は今夜、久し振りにモオツァルトを聞き、音楽とは、 こんなものだとつくづく、‥‥‥」 「僕は、ここから乗るがね。」 有楽町駅である。 太宰治『渡り鳥』 |
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有楽町駅 |
私は立って食堂へ行き、叔父さまのお好きなキツネうど んをこしらえて、先生と直治と叔母さまと四人分、支那 間へ持って行き、それから叔父さまのお土産の丸の内ホ テルのサンドウィッチを、お母さまにお見せして、お母 さまの枕元に置くと、 「忙しいでしょう。」 とお母さまは、小声でおっしゃった。 太宰治『斜陽』 |
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丸の内ホテル |